オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

雨男、雨女

 

国連の記事が続いたので少しお休みし、別の機会にもう少し国連について書きたい。

今回は違うテーマで記事を書こうと思う。

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日本は雨がよく降る。私も含め、多くの日本人は雨が好きじゃないと思う。しかし、世界には雨がなかなか降らない国もある。

 

南アフリカは本当に晴天が多い国だ。ナミビアも同様だが、一年365日のうち330日が晴天だという。私は晴れの日が好きだが、南アフリカに住んでいると晴れ過ぎで、肌の乾燥がひどくなる。

南アは全体的に一年中雨が少ない。年数回しか雨が降らないナマクワランドという荒野があるが、雨が降った後に地中の植物の種が芽を出して、雨上がりに一面のお花畑になる。雨の力は偉大なのだ。

 

南アフリカ人の運ちゃんと雑談をしていたら、Rain Queenの話になった。雨の女王とは、文字通り雨を降らせる女性のことだ。日本でいえば巫女さんだろうか。南アフリカにも巫女さんがいるんですねえ。

運ちゃんによれば、南アには超有名な巫女さん一家がいて、先祖代々、巫女さんなのだという。多分、雨を降らせる特殊能力を持った家系なんだろう。これだけ乾燥している国で雨を降らせる能力があったら、神様と同列に扱われるだろうなあ。いや、神でしょ神。

 

南アの巫女さんは、その特殊能力を守るためなのか、必ず親せきの中から結婚相手を見つけなければならない決まりがあるという。そこでゴシップ誌をにぎわせた一件があった。

当時、その一家の代表である巫女さんは、血縁関係のない彼氏がいた(それが普通ですよね)。親戚一同は、彼との結婚に大反対。彼は雨を降らせる能力のない、ただの(?)凡人なわけですから。

しかし、巫女さんとて、現代の若い女性。親戚の反対を押し切って彼と結婚。ところが、掟を破ったせいなのか、彼女は不審死を遂げた、というもの。

「やっぱり、こういう特殊な家系の人は掟を破っちゃいけないんだよ。先祖代々の決まりを守らなかったから、祟りがあったんだよ」と南ア人の運ちゃんは言う。

 

ほーら、来た。私はこういう話は信じないぞ。亡くなったのは事実だろうが、多分、「祟り」を真実に見せるために、誰かが何かをしたに違いない。しかし、恐ろしいですね。

 

日本には、その人がどこかへ行くとそこで必ず雨が降るという「雨男」「雨女」がいる。南アフリカのレイン・クイーンの彼氏が「雨男」だったら、こんな悲劇は生まれなかったに違いない。

 

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サハラ砂漠の南西部に位置するニジェールは、暑くて乾燥した砂漠気候だ。私はセネガルからブルキナファソで飛行機を乗り継ぎ、ニジェールの首都ニアメに到着した。暑い…が、乾燥している。汗をかいても気化熱ですぐに蒸発する。生きたまま干物になりそうだ。

 

ニジェールは砂漠気候なので朝晩の気温差が大きい。昼間は暑いが、夕方から夜は涼しい。一年中暑いといっても、やはり変化はある。「暑い」→「より暑い」→「最も暑い」と言う感じだ。

「最も暑い」とはどれくらいか?ニジェールの最高気温は60度くらいになる。(ちなみに、アフリカ大陸で最高気温を記録した国はジブチで、71.5度になったという。公式記録ではなく、民家の家の軒先につるした温度計で記録されたらしい。)

 

でも71.5度までは行かなくても、60度でも十分暑いんですよ!

午前中、日が昇る前に仕事を片付ける。お昼に家に帰るころには太陽が高く昇り、すでに暑い。

家に入ろうとしても、玄関のドアノブが熱くなっていてさわれない。鍋つかみのようなものでドアノブを開けて家に入る。太陽が家を蒸し焼きにしているような状態と言えば、分かりやすいだろうか。家の中のテーブルやソファも、熱くなっている。家の中の空気も煮え立って?いる(言い過ぎ?)。

エアコン…といっても、電気代がかなり高額だし、エアコンがない家もある。熱いソファに座れないので、立って食事を済ませる。

午後は最も暑いので仕事にならない。(でも、砂漠地帯は夜になるとぐっと気温が下がる。家の中は昼間の熱がこもるので暑い。夜は蚊帳をつって外のベランダで寝ると気持ちいいのだ)。

 

砂漠の国だから仕方ないんだろうけど、こんな暑い地でどうやって人類は生き延びているのだろう?アフリカ人は怠け者だ、という論調をよく聞くが、この暑さで(しかもエアコンなしで)どうやってバリバリ働くのか、むしろ教えてほしいくらいだ。日本と同じように仕事したら死んじゃうよ。

私は暑いのは好きな方だが、さすがにこの暑さ、私でも無理だ。普通の状態でも暑いんだから、地球がますます温暖化したらニジェール人は生活できなくなるだろう。

 

滞在終了後、ニジェールからコートジボアールに戻った。コートジは湿気は高いが、暑くても気温は40度くらいだ。アビジャンを出る前は「40度は暑いよな!」と思っていたが、60度のニジェールから帰るとあら不思議。コートジボアールは寒いじゃないの。もはや何が暑いのか、分からなくなった。

 

ニジェールではただでさえ雨が降らないので、収穫できる食料は少なく、何年かに一回、干ばつが発生する。バッタの大群が発生して農作物を食い荒らし、大損害を被ることもある。

私がニジェールへ行ったときは、大干ばつが発生した年だった。農村部では食料が収穫できなくなった。子どもたちは学校が終わると空き地へ行き、食べられそうな木の根っこがあるか探し、あれば掘ってそれを食べるという状態だった。

 

コートジボアールもそうだったが、国際機関が食料や給食を提供している学校もある。しかし、「無料で食事を提供すると、貧しい人を甘やかすことになる」という理由で、一食5円(日本円で)の給食費を徴収している学校もあった。当然ながらどの家庭も現金収入がないので、5円なんて高額な給食費は払えない。「コートジのネズミ料理」にも書いたが、どの家庭もその日その日、畑でとれたものを食べているだけなので、現金を持っていない。

 

ようやく親が5円を工面して、給食費を持たせてもらった子どももいる。給食の時間は、お金を持ってきた人だけが教室に残り、お金を持ってこなかった子どもは教室から追い払われる。給食を食べない子は、お昼休憩はヤシの木の下でぼんやりしたりして時間を過ごす。家が遠すぎて、お昼のために家に帰ることができないからだ。

 

教室に残った子どもに、給食が配られる。給食と言っても、スープの中に米粒が数粒入ってるだけとか、そんな感じだ。

教室に残った子どもが給食を食べようとすると、教室の窓から、給食が食べられない子どもたちの手が一斉に伸びてくる。「ちょうだい!ちょうだい!」と言うわけだ。教室に残っている子どもは、お椀の中からスプーンで米粒を拾い、伸びてきた手に乗せる。次々に「僕もちょうだい!」とほかの子も手を伸ばす。給食を食べられるラッキーな子どもは、他の子どもに自分の給食を一生懸命分け与える。自分の食べる分がなくなるんじゃないかと心配になる。

学校の先生方は「まるでコートジボアールが貧しいみたいに思われるから、先進国の人は見ないでほしい」という。さすがに写真撮影は断られた。雨が多くコメが取れるコートジでも、こんな風に食べ物が不足する地域があった。

 

ニジェールに戻る。

ニアメ在勤の友人が、ニアメを案内してくれた。ニュースで干ばつの話を聞いて知っていたが、ニアメはさすがに首都。市場にはレタスやイチゴなど野菜が並んでいたので、私はこの国が貧しいのだということをすっかり忘れていた。

 

ニアメ市内を友人と歩いていたら、友人が立ち止まった。道端で、おばちゃんが何かお菓子を焼いて売っていた。

「これ、美味しいから買おうよ。」

と友人が言う。コートジボアールで見たことのないお菓子だったので、食べることにした。鈴カステラくらいの大きさの焼き菓子を10個くらい、小さな紙袋に入れて手渡された。作り立てなので温かい。友人も一袋買った。私はニアメに来るのが初めてだったので、お菓子を食べ食べ、友人とあれこれ話しながら歩いた。

 

友人がまた立ち止まって、お菓子をほおばる私をちょいちょいとつつく。私も立ち止まった。彼が「後ろを見ろ」と指さすので振り返ると、私たちの後ろに7、8人くらいの子どもたちがずらりと並んでついてきていた。子どもと言っても、下は幼稚園くらい、上は中学生くらいだろうか。彼らは私たちが立ち止まって振り返ると、お菓子を指さして食べるジェスチャーをした。

今はどうなっているか分からないが、当時、ニジェールはあまりフランス語が通用しなかった。4大主要現地語があるので、それが話せればフランス語はあまり必要ないのだろう。我々の後ろについてきている子どもたちも、どうやらフランス語はほとんどできないようだった。ストリートチルドレンらしかった。

 

先頭の子どもが、再度私の顔を見て、お菓子を指さした。ようやく私たちも気づいた。

「どうやら、お腹が空いているからこのお菓子が食べたい、と言ってるみたいだね。」

食べかけなんだが、いいんだろうか?と私が思っているうちに、友人は持っているすべてのお菓子を、子どもたちに分け与えた。すぐに行動した彼を見て、私も慌ててお菓子を袋ごと彼らに与えた。子どもたちは笑顔になり、何やら「ありがとう」みたいなことを私たちに伝え、輪になって二袋のお菓子を分け始めた。お菓子をめぐって喧嘩にならず、私は少々ホッとした。

それにしても、ハーメルンの笛吹きみたいに、後ろにぞろぞろ子どもたちがついてきているのに全く気付かず、かわいそうなことをした。早く気づけば食べずにあげられたんだが。

 

ニジェールはその後も、ちょくちょく大干ばつに襲われている。西アフリカで一番ともいえるくらい、私は好きな国なのだが、雨が降らないことは本当に気の毒だ。

 

雨男、雨女が雨を呼ぶメカニズムは理解できないのだが、雨を降らせる能力のある方、必ず雨を降らせる自信のある方、ぜひとも干ばつに苦しむ国に雨を降らせてほしい。科学的根拠がないとか言われるかもしれないが、世の中には、科学で説明ができないことは沢山ある。

誰か酔狂なお金持ちがいたら、雨男雨女を集めて大干ばつに苦しむ国へ連れていくプロジェクトとか、やってほしいものです。