オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

マンハッタンで暮らす 

前回の記事に書いたが、色々あってようやくマンハッタンで落ち着ける住居を見つけた。大学院から歩いて10分程度の近場だ。バス通学しなくて済むのは良かった。夜間の授業を履修しても、ブロードウェイ等の大通りは歩いている人が結構いる。なので、安心して歩いて帰ることができた。やはり職住近接…じゃなかった、学住近接がいいですね。

 

話は脱線するが、大学院で知り合った韓国人留学生の友人がいた。エリカ(仮)としておく。彼女はニュージャージーに住んでいて、そこからマンハッタンまで通っていた。ニュージャージーに住む理由は、もちろんマンハッタンの家賃が高いからだ(私は家が狭くても大学の近くに住む方が楽でいいが…)。

どうやって通学しているのかと聞くと、車を買ったのだという。韓国はアメリカ同様に左ハンドルなので、アメリカで運転するのは大変ではないらしい。とはいえ、やはり外国で運転することに変わりはない。

アメリカに来たばかりの時は土地鑑が無くて、車の運転も大変だったのよ。何度も何度も道を間違えてマンハッタンの道を覚えたわよ!そんじょそこらのタクシードライバーよりも、私の方が道を知ってると思うわ!」

と彼女は豪語していた。エリカは博士課程後期の学生だった。院を卒業したら、アメリカで就職しようと思っているという。

「最悪、アメリカで大学教授になれなかったらタクシーの運ちゃんでもやるわ。私、運転が上手だもん」

エリカの車に何度か乗せてもらったが、「タクシードライバーになれる」と豪語するだけあって、めちゃくちゃ運転が上手だった。おまけに人間カーナビか?と思うくらいマンハッタンの道をよく知っていて、本当に驚いた。

 

エリカ曰く、韓国では、ひょろひょろ走っているおっさんの車を追い抜いたら、相手が猛スピードで追ってきて、追い越しにかかるという。

「韓国人は瞬間湯沸かし器だからね。日本人が30秒で激怒するなら、韓国人は3秒よ!」

とエリカは楽しそうに言う。(んなもん、自慢にならんがな…)

ある時、エリカが高速道路で追い抜いたおっさんが追い越してきたので、もう一度追い越してやったら、おっさんが激怒してエリカを追ってきたという。(やめなよ、そんなアホらしい競争…と私なんかは思っちゃうが)。

腹が立ったので路肩に車を止めたら、相手も車を止めて車から降りてきたそうだ。

「お、殴り合い?」と内心わくわくしながら私が聞いたら、

「そこまでは行かないけど、罵倒し合いの口喧嘩になった。」

「…」

なんで韓国人ってそんなに沸騰しやすいんですかね。この話をお母さんにしたら、「エリカ、女の子なんだから中高年男性と喧嘩するのはやめて」と懇願されたという。

日本では最近「あおり運転」で逮捕される人がいるが、韓国人が日本で運転したら、日本の運転マナーが良すぎてびっくりするだろうな。

 

こんなけんかっ早い一面もある彼女だが、私はエリカと仲良くしていたので、よく一緒にご飯を食べたりおしゃべりをしたり楽しい時間を過ごした。

ある日、エリカとご飯を食べていると、「アメリカで日本人と知り合うようになって、色々考えたことがある」というので、何を考えたの?と聞くと、「韓国の学校では、日本人は悪い奴だと教えられていたけど、アメリカで日本人留学生と知り合ってみると、日本人はいい人が多い。だから自分が学んだことについて疑問を持つようになった。」という。

確かに、彼女の言いたいことは分かる。学校や本で勉強するだけでなく、自分の目で見て、自分で考えることも必要だ。

エリカは頭の回転が速く、いつも熱心に本を読んでいた。卒業後はタクシードライバーではなく、首尾よくニューヨークの大学に教員として就職した。アメリカでは安全運転してくれていることを祈る。

――

日本が大型連休に入る時期、友人が日本からニューヨークに遊びに来ることになった。宿泊はどうするのかと聞いたら、私が住んでいるアパートに泊まるという。

こんなむさくるしい?アパートでいいのか?と思ったが、友人は構わないという。ホテルに滞在すると観光客でしかないが、アパートに滞在すれば生活者のような体験ができるから、と言うような理由らしかった。私としても友人が自分のアパートに泊まってくれれば、いちいち待ち合わせをしなくて済むので楽だ。

 

友人が日本から来る、と言ったら、エリカが出迎えの車を出してやるという。そこまでしてもらうのも申し訳ないので、一人でジョン・F・ケネディ国際空港へ友人を迎えに行った。そこから電車に乗って、マンハッタンへ向かう。アパートで同居人エイミーに紹介した。たまたま、エイミーの夫のカイルにもアパートの入り口で会ったので、日本の友人を紹介しておいた。カイルが私たちのアパートに遊びに来ることもあるので、「この人、誰?」とお互いに驚かないようにしておくためだ。

 

日本はGWだが、アメリカの大学は普通に学期中だ。私が大学院へ行っている間、友人は一人でニューヨーク観光をすることになった。友人は英語が話せるので一人で街歩きをしても問題ないが、うちの親がアメリカに来たら、さすがに私も大学を休んでアテンドせざるを得なかっただろうな。

 

夕方、私が大学院からアパートに戻ると、うちのアパートの前あたりにたくさんの人がいた。路上駐車している車がたくさんあるのだが、その車の間や路上に20人くらいだろうか、若い男たちが大勢いた。火事でもあったのだろうか?

男たちをかき分け、自分のアパートへ向かいながらあたりを見回すが、アパートから煙が出ている様子はない。良かった、うちが火事になったわけじゃないのか。少しホッとする。とはいえ、セントラルパークのアパート前でジョン・レノンが撃たれたこともあるしねえ(って、何十年も前の話だが…)。

 

お兄さんたちをかき分けてアパートに入ろうとすると、アパート前にのび太、いやカイルがいた。カイルは私を見るとほっとしたような顔になった。

「やあ、お帰り!待ってたんだよ!」

ん?私の帰りを待ってた、とは?もしや、やっぱりアパートが火事だったのか?

カイルはへらへらと笑った。

「違うよ!君の友達はどこへ行ったんだい?」

「私の友達?多分、市内観光へ行った…」はず、と思うが?(彼女に何かあったんだろうか?ちょっと不安になる)。

話が呑み込めない私は、友人に何かあったのか?アパートに何か問題があったのか?と心配になった。しかしカイルはのんびりしている。

 

カイル曰く、私に友人を紹介されたとき、「わお!日本から可愛い子が来た!」と思ったという。

「それで、男友達に、『可愛い子がいるよ!』と話したら、彼がまた別の男にその話をしちゃってさ。こいつらぞろぞろと集まってきちゃったんだよ、君の友達を見たくてさ」

と、アパート前にいる若い男連中を指さした。

はっ?

こいつらが集まってるのは、そんな理由で?火事じゃないのか?

私は目の前がくらくらした、というか、カイルがこれほどアホだったのかと初めて分かった。

しかも、30人とまでは行かないだろうが、結構な数の若い男が(ヒマなのか)アパート前に集まってきてるよ。

アホ…こいつら絶対アホ…。

足元からくずおれそうな気がするが、頑張って気を取り直してアパートに入った。信じがたい。これは夢だと思いたい。

しかし、「可愛い子が日本から来た」という一言でこれだけ人が集まるんかい。そういやあ、私が入居したときは誰も集まらなかったが、どうしてだろう?

 

あまりにも恥ずかしいので、その夜、アパートに帰宅した友人にはこの事件を内緒にしておいた。アメリカ人のアホさがよ~く分かった。