オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

ユダヤ教

 コートジボアールにいたとき、イスラエルの方と知り合った。イスラエル人とはつまりユダヤ人だ。彼と奥様によれば、ユダヤ教は古い宗教なので色々な決まりがあるとかいう話だった(すみません、ちゃんと聞いてなくて…)。

ユダヤ人といっても特別な衣装を着ているわけではなく、ポロシャツにズボンといった私たちと変わりない普通の?服装だった。(さすがに正統派の人が海外で生活するのは難しいだろうなあ)。

 

コートジボアールイスラエル人よりも中東出身住民が多かった。特にレバノン人は一大勢力だった。

なぜレバノン人がコートジボアールに住んでいるかと言うと、レバノンはコートジと同じくフランスの植民地だったため、共通語もフランス語。だから生活しやすいのだという。町を歩いている白人はフランス人やベルギー人である場合もあるが、レバノン人である場合も多かった。

コートジボアールレバノン人たちは、中東情勢が悪化するとコートジボアールに移ってきて、中東情勢が安定するとまたレバノンに戻る。「最近レバノン人が増えたな」と感じるときは、たいてい中東情勢が不安定になっているときだ。自分の国家を長らく持てなかったユダヤ人も可哀そうだが、戦争で自分の国にゆっくり住んでいられないアラブ人も気の毒だ。

 

で、そのユダヤ人について。

アメリカには多くのユダヤ人がいる。特に第二次大戦中は、欧州から逃げる多くのユダヤ人をアメリカは受け入れた。

ニューヨークにも多くのユダヤ人が住む。アメリカがユダヤ人移民を積極的に受け入れた結果なのだが、これほどまでに多いとは思っていなかった。ニューヨークに集中的に住んでいるんじゃないか?と思うくらいだ。さすがジューヨーク(Jewはユダヤ人のこと)と呼ばれるだけのことはある。聞くところによると、NYの人口約900万人のうち、110万人くらいがユダヤ人だという。9人に1人くらいはユダヤ人だ。

 

見かけだけで言うと、ニューヨークのユダヤ人には3タイプいる。黒い衣装に黒い帽子、長いひげを伸ばした正統派の方、小さい帽子(キッパという)を頭頂部に留めた男性、そして私たちと同じような普通の?服装をしている人。正統派ユダヤ人は目立つのですぐに分かるが、私たちと同じような服装をしているユダヤ人は、言われなければ普通のアメリカ人と思ってしまう。

ものの本によればユダヤ人は実際には4タイプいて、①正統派、②保守派、③改革派、そして④世俗派、だそうだ。正統派は全ユダヤ教徒の1割ほどいるらしい。④の世俗派は戒律を気にしない人たち、という。

 

ユダヤ教は日本人にあまりなじみがない。私もアメリカへ行くまではよく知らなかった。彼らはコーシャーという食事制限がある。カトリックが金曜日に魚を食べるとか、イスラム教徒が豚肉を食べないとか、あんな感じの食事制限だ。

ユダヤ人がコーシャーを説明するときに例として挙げるのが「私たちはエビやカニなど、甲殻類を食べないんだよね。」ということなんだが、実際はエビとカニ以外にも禁忌の食品はある。

 

「ウロコとヒレを持つ魚は食べられるが、持っていない魚はダメ」もその一つ。ウロコとヒレの無い魚?と一瞬考えてしまうが、例えばウナギ、タコ、イカ、クジラ(哺乳類だが)、貝類なんかがそうだ。(タコやイカが魚の範疇に入るのかはよく分かりません)。ウロコとヒレのあるマグロ、鮭、イワシ、タイなどはOKなわけで。日本のお寿司屋さんメニューは、ユダヤ人が食べられるものと食べられないものが混在している感じですかね。

 

肉についてもルールはある。「ひづめが2つに割れていて、反芻する生き物」は食べてもいい、んだそうで。ひづめが2つに割れている動物?って、例えば何だろう…と一瞬考えてしまう。牛や羊、ヤギは該当するらしいが、豚やウサギは違うらしい…。

さらに、肉と乳製品を同時に摂取することもアウト。チーズバーガーなんかはユダヤ人が食べられない食品代表だそうで。

 

ここまで複雑だと大変そうだが、慣れてしまえば大したことないんだろうなあ。

 

ユダヤ人が多いニューヨークには、ユダヤのパン「ベーグル」を扱っている店がたくさんある。あのもっちりとした食感は、パンだねをゆでてから焼くことから生み出されるらしい。日本のふわふわパンに慣れてしまった身には、ニューヨークのベーグルは最初は固く感じた。慣れると美味しくて、よく買うようになった。スモークサーモンとクリームチーズをはさんだベーグルが私は一番好きなのだが、もしかするとその組み合わせって邪道?

 

ユダヤ教といえば、休むはずの安息日に「やってはいけないこと」が決まっている。

安息日(shabat)と呼ばれる週末(金曜日夕方~土曜日夕方)は、ユダヤ教徒は労働してはいけないことになっている。一週間のうち6日は労働、7日目は休みなさいと神様が決めたらしい。

 

そんなの他の宗教の人と同じじゃん、私たちも週末は休んでるよ、と思いたいところだが、この日は本当に「労働」をしてはいけない日なのだ。土曜日にやってはいけない「労働」。ここに含まれるのは会社へ行って働くことはもちろん、車の運転、金銭を扱う、旅行(これは仕事なんだろうか?)、ペンを持つ、壊す、種をまく、畑を耕す、料理(火を扱うこと)などなど。

「火にふれてはいけない」とは?

料理が禁じられているだけなのかというと、それだけじゃない。「火」は電気も含まれる(らしい)。

なので、エレベーターのボタンを押すのもダメ、電子レンジで食べ物を温めるのもダメ。冷蔵庫も電気を使っているので、安息日には冷蔵庫の中の明かりがつかないようになっているとか。徹底してるなあ。

 

ユダヤ教安息日はパソコンやスマホも使ってはダメ、という事実を知った出来事があった。

大学院の授業の一環で、学生同士で数人のグループを作り、テーマに沿ってそれぞれのグループが発表をすることになった。発表準備にあたり、グループメンバー各自に作業を割り当てた。週末に自宅で作業をし、進捗をメールで連絡、共有し合うという段取りにした。

 

グループの全員でカフェに集まった。お互いにメールアドレスを交換し合って、

「じゃあ、あなたの作業はいつ頃終わる?私はそれまでにここをやればいいの?」

といった作業の段取りを確認していたところ、一人の女性が手を挙げた。

彼女はユダヤ教徒だった。自分は、安息日の間は作業が出来ないという。

ユダヤ教の教えで、その日は火を使ってはいけないことになっているのよ」

とその女性は言う。

「じゃあ金曜日の夜から料理をしてはいけないんだね。食べ物は買ってこないといけないわけだ?大変だね」

とほかの学生が言った。(私も含め、ユダヤ教安息日についてよく知らない学生が大半だったので、こんなトンチンカンな話になったんだろうな)。

「それだけじゃなくて、メールも見られないしパソコンも開けられないの。」

彼女がそう言うと、そこにいた学生たちは「えっ?どうして?」という表情になった。

彼女曰く、『火を使ってはいけない』という決まりは料理に限ったことではないという。「火」は電気も含むので、メールも見てはいけない、パソコンも開けられないらしい。

「メールも見てはいけないの?」

と、思わず何人かの学生が聞いた。

「ごめんね、安息日が終わったらメール確認するから。」

彼女は謝るが、宗教行事?だから仕方ない。ユダヤ教の決まりだからね。

しかし…どうやって週末に作業をするんだ私たち?

 

結局、ユダヤ教徒の彼女は自分が作業できる時間に作業をして、それを最後にプレゼンにはめ込んだ。なんとかなるもんです。

しかし、学校の発表程度ならいい。土曜日に仕事をやってはいけないとなると、イスラエルの経済や社会は回るんだろうか。もちろん、戒律を守らず?土曜日も働く世俗派の人がいるだろうから、結局社会は回るんだろうなあ。ほかの人がやらないことをやる人がいるから、社会や経済は支えられているわけだ。

最近ネット社会に疲れて、ネット断食とかスマホ断ちをする人がいるが、ユダヤ教徒は毎週やっているわけで。休みの日に仕事メールで煩わされることもない。宗教で決まっているなら、会社の上司もNOとは言えまい。案外いいシステムかもしれない。

 

のちにインドネシアで似たような宗教的行事を知った。それは毎年3月~4月に行われるバリ島のヒンドゥー教徒のお祭りで、ニュピと言う。ニュピはバリのお正月だ。その間は労働禁止であるだけでなく、外出禁止、火気禁止、電気禁止、殺生禁止。

外出禁止なので、町が死んだように静まり返る。火を使うのも許可されない。電気を使わないので星空もきれい。ニュピを知った時、あれ~ユダヤ教みたいだなと思って不思議だった。

ユダヤ教ヒンドゥー教が成立したのは何千年も前の話だが、人間はいつもあわただしく過ごしているので、メールやネットを見ない日があってもいいのかも。