国境の町は、いつも何かしら魅力的に私には感じられる。
国境の向こうはどんな感じなんだろうか?とわくわくするからだろうな。
日本は島なので、どこまでが国同士の境目なのかよく分からない。
地続きで、この線からあっち側が他国、というのが、やはり緊張感があっていい。
というと、アメリカ人の友人などは
「他国って言っても、カナダは外国って感じじゃないけどなあ。すぐ行って帰ってこられるし」
なんて、私が幻滅するようなことを言う。
ドイツ南部に住んでいるドイツ人の同級生がいる。
買い物や遊びなど、ちょいちょい国境を越えてオーストリアへ行くという。
言葉もドイツ語だし(多少の違いはあるかもしれないが)、今や通貨も同じ。買い物も問題ない。
ヨーロッパは小さい国がたくさんある。つまり国境線が細かく引いてある。
そういう国境周辺に住んでいる人は、あっちが「外国」というわくわく感はあまり感じないんだろうなあ。
で、その友人は最近くさくさしている。
なぜかというと、コロナに対するドイツとオーストリアの対応が違うからだそう。
「あっち(オーストリア)は外出していいのに、こっち(ドイツ)はダメなんだよ~おかしいでしょ。」
と、いつも愚痴っている。
同じ通勤圏内(もしくは買い物圏)で、かたやロックダウン、かたや何もなし。そりゃ不満が募るだろうな。
人間が勝手に線を引いた国境なのにねえ。
セネガル北部のサンルイ(St.Louis)へ行ったとき。
モーリタニアとの国境線になっているセネガル川が流れていて、大西洋に注いでいる。
町は川の三角州にある。
その町に住む友人たちが、「ここはビーチがきれいなんだよね」と言って、海の方へ連れて行ってくれた。
町から船に乗って浜辺へ向かう。
どうでもいいが、この時のセネガル人の船頭さん。
布で深く頭部を覆い隠していたので最初は気づかなかったが、ふと顔を見ると、ものすごい真っ黒な方で驚いた。
彼はフランス語を全く理解せず。(私もウォロフ語は分かりません)。
言語的コミュニケーションが取れないなあ…と思っていたら、この船頭さん、外国人に興味津々なのか、果敢に私とコミュニケーションを取ろうとする。(身振り手振りで)。
あそこに鳥がいるぞ~とか、ちょんちょんと私をつついて教えてくれたり。
気の良いおっちゃんでした。
で、大西洋を望む砂浜に到着。
砂と言っても日本のような灰色がかった砂ではなく、見渡す限りまばゆい真っ白!
大西洋の青い海と青い空、そして延々と続く白い砂浜。
しかも自分たち以外、人は誰もいない。
天に青、地に白の世界がずっと広がっている。
後ほど調べると、このエリアは鳥類が有名で1976年に国立公園になったとか。
しかし浜辺に行くのにわざわざ船を出さないと行けないので、アクセスが悪い。
アクセスが悪いところじゃないと、こういう風景は楽しめないのかもですね。
浜辺が広いので、波打ち際を少し遠くに感じる。
だだっ広い静かな空間に自分を置く。海と空しかない。
開放感満点なので、友人たちと写真を撮りまくりました!
気づくと、なぜか船頭さんも私たちと一緒に写真に納まっている…。
たっぷりオゾンに身を浸し、船でサンルイの町へ戻った。
ああ~いい気分。
船を降りて、友人たちとサンルイの町を歩く。
友人が北の方を指さして「あっちがモーリタニアだよ」という。
なるほど。川の向こう側はモーリタニアか~。
いいですね、国境の町。
歩いていると、少し高台?に差し掛かった。
すると突然、そのあたりにいたセネガル人たちが、
「これから砂嵐が来るぞ!建物の陰へ隠れろ!」
と口々に言いながら、あわただしく散っていった。
私は砂嵐なんてものを体験したことがなかったので、彼らが冗談を言っているのかと思い、
「砂嵐って?どういうこと?」
と笑いながらのんびりしていた。
(コートジボアールにはハルマッタンという季節風がサハラ砂漠から吹くのですが、そんなものかと思ってました)。
おまけに、今から砂嵐が来るですって?
天気予報もないのにどうやって分かるの?
友人たちは、私がのほほんとしているので慌てた様子だった。
「砂嵐が来ると大変なんだよ!どこか物陰へ隠れようよ!」
「砂嵐が来たら目と耳をふさいだ方がいいんだよ!」
などと言いながら、早く早くと私を急き立てる。
「そんなに砂嵐ってすごいの?」
「逃げるったって、どこへ行けばいいの?」
焦る友人たちを見てふざけていたら、セネガル川の向こう側に大きな砂嵐が巻き起こっているのが見えた。
え…?
も、もしかして、あれですか?
なんと、モーリタニア側から大きな砂嵐がぐんぐんセネガル側へ向かってきていた。
茶色い砂を巻き上げ、だんだん大きく高く成長しながら、こっち側へ迫ってくる。
進んでくるスピードが半端なく早い!
巨大砂嵐を見た私の頭の中には、ちょっと古いがアニメ「バビル二世」のオープニング映像と主題歌が流れていた。
「チャチャラララ~ララララ~ラーラーラー♪すーなのあらしに、かくさーれたー」
衝撃で頭がおかしくなっていたのかもしれないが、ようやく私も危険を理解した。
ヤバい、逃げなくちゃ!と頭が思うのだが、とっさに足がもつれて、あわわ…。
もう遠くまで逃げる時間もなければ、手近に逃げ込める適当な建物もない(早く反応しておけばよかった)。
慌ててその辺の誰かのお宅の陰へドタバタともつれ込む。
その瞬間、ぐおおおおお~~~と猛烈な砂嵐が町を通り過ぎた。
物陰で縮こまり、友人に言われた通りに息を止め、目をつぶって耳をふさぐ。
「もう大丈夫なんじゃない?」と友人たちが口々に言う声を聞き、私も息をついて身を起こした。
砂嵐が頭上を通り過ぎ、服も髪も砂でざらざらになっていた。
友人たちは間一髪、私よりわずかに早く反応して適当な物陰に身を隠していた。
さすがサンルイ市民だ。
さっき、あれほど素晴らしいエネルギーチャージを海辺でやったのに、わずか30分後には、よれよれになってしまった。
現地人が「危険だ」と言うときは、素直に従いましょう。
危険なときはいち早く逃げましょう。
へらへらしてないで、セネガル人について行ってどこかへ隠れればよかった。
国境の向こうから勝手にやってくる自然現象もあるので、皆さん気を付けましょう。
ロデムもポセイドンも、超能力のある高校生以外は助けてくれません。