昨日はアフリカの賄賂事情?について記事を書きました。
アフリカ以外の国で生活している時、どうだったかと言いますと。
アメリカやヨーロッパはさすがに先進国。
大っぴらに賄賂を要求したり渡したりする場面には、遭遇しませんでした。
私が見る機会がなかっただけかもしれないですが。
ポーランド人の友人の話では、ポーランドが社会主義国だった時は、賄賂なしには生活が成り立たなかったという。
成り立たない?って、そんな大げさな。
と思いそうですが、例を挙げてもらうとこんな感じ。
「自宅の郵便受けにお金を入れておかないと、自分あての郵便物を配達してもらえなかった」
社会サービスを受ける場合はすべて、賄賂が必要だったそうです。
今はいい時代になりましたね。
――
さて、今日の本題のインドネシア。
汚職撲滅委員会という大統領直属の国家組織さえある。
そんな委員会が必要なくらい、汚職が一般的なのか…。
公的な取り締まり機関があるにも関わらず、政財界を巻き込んだ大規模な汚職がちょいちょい発生する。
それを追っている汚職撲滅委員(公務員だ)が襲撃されたこともあった。
汚職を暴露されたくない誰か(大物)が、事件を闇に葬ろうとするわけです。
怖いですね~。
一説によると、
「汚職や賄賂があるからこそ、多民族国家インドネシアは内戦に陥らなかった」
んだそうです。
公明正大な?戦争がいいのか、汚職にまみれた民主主義がいいのか。
このあたり、他人と正面衝突を避けたいインドネシアの国民性が表れていますね。
多文化、多民族同士で円滑にやっていくために賄賂が一般的になっているとしても、現在のインドネシアでは「汚職追放」は重要な政策の一つ。
チップですら、「腐敗」「よくないこと」とみなされています。
インドネシアの空港スタッフは、ユニフォームの背中に「No Tips」(チップは要りません)と書いてある。
じゃあ清廉かというと、空港内には悪質タクシー業者もわんさかいるし、期待はできません。
しかし賄賂が悪いかというと、やはり「賄賂=悪」とも決めつけられないように思える。
なかなか思うようにことが進まない途上国だけど、小銭を払えば何とかしてもらえることもあるしね。
なので、一般のインドネシア人は
「多少の小銭で、融通を利かせてくれるなら払いますよ」
くらいの感覚なのだろうと思う。
ある日、私はスカルノハッタ国際空港へ行くために、ジャカルタ市内からブルーバードタクシーに乗った。
空港の少し手前で、珍しく検問があった。
(コートジと違い、インドネシアでは検問をあまり見なかったですね。どうしてだろ?)
警察官が、私の乗ったタクシーを止めた。
タクシーも慣れたもので、警察官の指示するところにすっと止まった。
タクシーの窓から警察官が中を覗き込む。
警察官は、私には身分証の提示を求めなかった。
しかし、タクシー運転手は「運転免許証を見せろ」と言われていた。
さすがにインドネシアでは、タクシー運転手は免許証を持っていた!
いや~良かった。これで一件落着。
それで終わるかと思いきや、ここで私の観察心を刺激する出来事があった。
タクシーの運ちゃんは卑屈にへらへら笑いながら、運転席の窓を開けて免許証を警察官に渡した。
コートジボアールでさんざん嫌な目に遭ったので、警察官の検問にはろくな思い出がない。
なので、私はさっさとこの場所から去りたかった。
「免許証あるんだから、早くタクシーを行かせてよ」
と私は内心、腹立たしく思いながら、運転免許証を警察官へ手渡す運ちゃんを見た。
ん?
私は二度見した。
運ちゃんが右手に持った運転免許証の下に、小さく折りたたまれた青い紙が見えた。
私にはそれが何か、すぐに分かった。
50,000ルピア紙幣だ。
紙幣はちょうど免許証に隠れるくらいのサイズに折りたたまれ、免許証の下に添えられていた。
運ちゃんは何食わぬ顔で、免許証と一緒に紙幣を警察官へ渡した。
警察官は顔色も変えずにそれを受け取った。
私は運ちゃんの顔を思わず見た。
しばらくタクシーの中で待っていると、先ほどの警察官が運ちゃんの免許証を返してきた。
運ちゃんが免許証と共に渡した50,000ルピア紙幣は戻ってこなかった。
なるほど。
悪いことはしていないが、この場を平穏に去らせてもらうための心付け、ってわけか。
50,000ルピアは、今の為替相場では約377.36円だ。
しかし、現地の感覚的には500円くらいって感じでした。
警察官に見逃してもらうための賄賂の相場は、アフリカでもインドネシアでも500円なのだ、ということが分かった。
500円がインドネシアで妥当な金額かどうか、ということですが、参考までに。
ジャカルタの路上で売ってるMie ayam(ミーは麺、アヤムは鶏。鶏肉と青菜の入ったスープ麺のことです。)は一杯250円くらい。肉団子を入れると300円くらいかな。
なので、賄賂500円という金額は平均的昼食よりやや高いが、夕食代金ほどではない。
つまり少なすぎず、多すぎず。
(アビジャンでも、賄賂は平均的ランチより少し高いくらいの金額でしたよね)
ここでもまた絶妙な金額なわけだ。
日本だったら、1,000円札を警察官に握らせるくらいの感覚ですね。
――
「賄賂」ではないが、「心付け」をインドネシア人が渡すのを見たことがある。(脱線してすみません)
あるショッピングモールで、私がタクシーを待っていた時のこと。
私の隣で小金持ちそう?なおじさんが、自家用車が来るのを待っていた。
すると、おじさんの自家用車(四輪駆動)がモール前のタクシー乗り場に入ってきた。
どうやらおじさんは運転手を雇って、自家用車を運転させているらしい。
運転手が雇えるくらいの収入があるわけだ。
モールのスタッフがそれを目ざとく見つけた。
他の人が呼んだタクシーや自家用車でその場がごった返すのを差し置き、スタッフはそのおじさんの四駆を誘導し始めた。
おかげで四駆はおじさんの前にスムーズに移動してきた。
おじさんは車に乗り込む前に、自分の車を誘導してくれたスタッフに一言二言、話しかけた。
「ありがとね。助かったよ」
なんて言いながら、手に持ったクラッチバッグの陰に隠し持っていた緑の紙幣を、素早くスタッフの手に握らせた。
(私の目の前で堂々と?渡すので、一部始終をガン見させていただきました。)
緑の紙幣は20,000ルピア(約150.95円)。
現地感覚的には200円といったところか。
モールのスタッフはお札を受け取り、表情を変えずに右手を自然に自分のポケットにしまった。
あまりに自然なので、誰も彼がチップをもらったとは気づかなかっただろう。
「そうか、このくらいのサービスを受けたら、これくらいのチップが相場なのか」と私は思った。
勉強になります。
――
しかし、荷物が重くて運べず困っている時など、多少の小銭を払えば運んでもらえる途上国は、ある意味では暮らしやすいとも言えるんじゃないだろうか。
(なんて言っていると、同僚たちに、
「小銭で肩を付けようなんて、途上国に染まり過ぎですよ」
と叱られるので、気を付けている)。
日本は国民の倫理意識が高いので、多少のチップや賄賂で便宜を図ってもらえるような国ではない。
しかし、日本の最大の良さはやはり治安の良さと民度の高さ。
お年寄りが困っていたりすると
「大丈夫ですか?」
と手伝ってくれる人がいる。
チップをもらわなくても、だ。
チップや賄賂が無くても困っている人を助ける、これこそ先進国の証なんだろうなあ。