オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

グローバル化

またまたインドネシアのタクシー運ちゃんの話で本当に恐縮です。

 

ある週末、買い物へ行くためにGrabタクシーを呼んだ。

ほどなくタクシーが到着した。

 

運転手は眼鏡をかけた若いお兄さん。

私がまだ何も言っていないのに、英語を話し始めた。(気が利くねえ)。

普通は「Selamat pagi(おはよう!)」と、運転手はインドネシア語で話すものなんだが。

まあ、タクシーを予約した私の名前と私の顔を見たら、インドネシア人じゃないって分かるよね。

 

このお兄さんは英語が上手だった。

マレーシアと違ってインドネシアは英語が通じない。

インドネシア公用語インドネシア語だ。

英語が分かる人はたまにいるが、インドネシアでは英語が通じないと思って間違いない。

なのにどうしたんだ、このお兄さん。

 

「お兄さん、英語が上手ですねえ」

とほめたら、オーストラリアの大学を卒業したのだという。

そりゃ英語が上手なわけだ。

 

こんなに英語が上手なのにタクシーの運転手をやっているのか。もったいない。

すると、お兄さんは私の心を読んだように言った。

「僕はおととい、会社を辞めたんだ。」

おととい?

そりゃまた最近だね。

 

話を聞くと、オーストラリアの大学を卒業後インドネシアに帰国し、外資系企業に就職したのだという。

そこでスイス人上司のもとで働くこと6年。

「その上司は、もう長いことインドネシアにいるのに、『Selamat pagi』一つ覚えないんだ。」

あ~いるいる。

たまにそういう人が。

 

「『どうしてインドネシアでは英語が通じないんだ?Oh My God!インドネシアグローバル化に乗り遅れてるんじゃない?ホント、貧しい国は困るね~』って言うんだ。

いつもインドネシア人を馬鹿にしてるんだ。」

 

お兄さんの話を聞いて、私は少し後ろめたい気がした。

私も職場での仕事は英語で用事が足りるので、なかなかインドネシア語が上達しない。

毎日話せばもっと上達するはずだが、英語の分かるインドネシア人スタッフのおかげで甘やかされている。

 

運転手のお兄さんの話は続いた。

英語が出来ないインドネシア人を馬鹿にするスイス人上司に、我慢に我慢を重ねてきたのだという。

しかし、おととい、職場である事件が発生し、ついにお兄さんの堪忍袋の緒が切れた。

お兄さんは上司に辞表を出し、その日の朝のうちに退職したのだという。

外資系企業を辞めるなんてもったいないが、やっちゃったわけだね。

 

とはいえ、仕事をやめたら生活できない。

すぐにGrabに登録し、研修を受けてタクシー運転手として再スタートを切った、というわけだ。

どうして英語が堪能なのにタクシー運転手をやっているのかが、やっとわかった。

 

しかし、お兄さんも思い切ったもんだね。

英語が出来ないインドネシア人はグローバル化に乗り遅れている、とはさすがに言い過ぎだけど。

スイス人上司の言いたいことも何となくは分かるんだよ。

だって、英語は大体どこの国でも通じるだろうと思ってインドネシアに来て、全然英語が通じなかったらもどかしいもん。

 

それでも首都ジャカルタはまだいい。

地方出張の多い私なぞ、「くそ~どうして英語が全く通じないんだ!」と思うこともたびたびある。

 

ロンボクとか田舎に出張して、その町に安宿しかなかったとする。

受付は英語が分からんし、トイレにトイレットペーパーはないし、朝食なんかインドネシア人の団体客に食いつくされて食べるものがないトホホな場合もある。

そうなると、やっぱりホテルに「〇〇してくれ」と(インドネシア語で)頼まなくてはならない。

だから地方に行くたびにインドネシア語が上達するんだけどね。

 

 

お兄さんの、スイス人上司への怒りが爆発した理由を推測する。

上司がインドネシア語を理解しないということよりも、そもそも勉強する意欲がないこと、インドネシアを知ろうとする気持ちがないこと、ひいては「英語の話せない」インドネシア人を馬鹿にしていること、だったんだろうなあ。

 

英語が公用語でない日本から来た私は、英語がこれだけ通じないインドネシアに親近感を覚えなくもない。

だって、インドネシア語で毎日の生活が回れば、英語なんて話す必要ないじゃない?

 

残念ながら、海外で働く人の多くは、このスイス人上司のように、どこの国へ行っても英語で生活をし、その国の言語を知ろうとしない。

私がジャカルタで知り合った外国人(日本人含む)の中にも、

「どうせインドネシア語を覚えても、インドネシア以外では通用しないから、勉強する必要ないよ。」

という考えの人がいる。

それはそれで事実だし、したくなければ勉強しなくてもいいと思う。

英語が分かるインドネシア人とだけ、付き合えばいいわけだから。

 

しかし、インドネシア人は『インドネシア語は簡単』と思い込んでいるので、いつまで経ってもインドネシア語を学ばない外国人に、怒りが募るのだろうなあ。

私が「インドネシアに来て1か月」などと自己紹介しようものなら、

「そうか!じゃあもうインドネシア語はしゃべれるな?」

と聞いてくる。

語学の天才じゃあるまいし、しゃべれるわけがない。

 

 

英語が通じないインドネシア

グローバル化に乗り遅れているという。

そのスイス人上司が日本に来たら、同じことを言うんだろうなあ。

「なんで日本は英語が通じないのか?」

そんなら、日本も『グローバル化に乗り遅れている』ってことなんでしょうかね?

 

私は英語を使って仕事をしているが、いまだに何をすればグローバル化になるのか、よく分からない。

でも、そのスイス人上司に会うことがあったら言いたい。

少しでもインドネシア語が分かると、友達も増えるし美味しい物も食べられるようになる。

ここでの生活は一気に楽しくなりますよ、と。