オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

乗客いろいろ

 

今日は、あまり意味のない?記事を書いてみる。

コートジボアールの乗り合いタクシーにまつわる思い出です。

アビジャンでこんな毎日を過ごしていたんだ、程度に読み捨てて下されば結構です。

 

バスまたは乗り合いタクシーは、現地人の乗客と同乗しなければならない。

それが嫌な日本人は、高いお金を出して普通のタクシー(乗客は自分だけ)に乗る。

お金の無い、そして現地人と同乗することが苦にならない私は、公共交通手段をよく利用していた。

 

ある日、乗り合いタクシーに乗った。

ほぼ起点から終点までの長い距離だ。

 

私が乗った時には後部座席に一人、先客がいた。

そのおじさんの隣にお邪魔する。

 

しばらくしてその先客が降りた。

するとすぐに、道端で次のお客が乗り合いタクシーを待っているのが見えた。

その新しい乗客は、白い衣装を来て白い帽子をかぶっていた。

明らかにイスラム教の導師だ。

 

導師のおじいさんは止まったタクシーのドアを開け、後部座席に乗った。

運転手が後ろを振り向いて客へ言った。

「靴、忘れてますよ。」

 

そのおじいさんはタクシーに乗るときに靴を脱いで乗ったらしく、路上に靴が残されていた。

指摘されても慌てず、悠然とタクシーから降りて靴を拾う。

 

コートジボアールには、3つの大きな宗教がある。

キリスト教イスラム教、そして現地宗教だ。

 

欧米と異なり、コートジボアール人は2つの宗教を信じている人が多い。

現地宗教とイスラム教、現地宗教とキリスト教、といった具合だ。

 

なので「宗教を信じている人の割合」を統計にすると、キリスト教40%、イスラム教40%、現地宗教40%、合計120%とおかしなことになる。

でも、現地人からするとおかしくはない。

日本人が神道と仏教を信仰しているようなものだ。

 

イスラム教徒は大変清潔だ。

一日5回のお祈りの前には、必ず足を洗い体を清める。

 

コートジは高温多湿の国だが、イスラム教徒は上位者とアポがある前には体を洗い、服を着替えてくる。

しかし、キリスト教徒は汗まみれでべたべたの服のまま、私のオフィスに来ることが多々ある。

 

イスラム教的ルール(体を清潔に、とか、年長者を敬う、とか)については、私は好意的に思っている。

キリスト教徒は家の中で靴を脱がないが、イスラム教徒は脱ぐ。

しかし、タクシーに乗るときも、靴を脱ぐんですかい。

路上に置いた靴、どうするねん。

 

その上。

乗り合いタクシーで私の隣に座ったイスラム教徒のおじいちゃん。

なんと、後部座席であぐらをかき始めた。

裸足だからなせるわざだ。

くつろげる座り方なのは分かるが、おじいちゃんがあぐらをかくと幅取るんだよ…。

 

イスラム教の導師らしきおじいちゃんは、しばらくして降りた。やれやれ。

 

しばらく行くと、一人のおじさんが路肩で手を挙げているのが見えた。

見ると、ヤギを連れている。

嫌な予感。

 

乗り合いタクシーの運転手は、ヤギはどうするんだ、と聞いている。

ヤギも連れて行きたい(つまりタクシーに乗せたい)と、おじさんは説明している。

(乗らなくていいよ…乗らないでくれ、と内心願う私)。

 

どうするのかと見ていると、我々の乗った乗り合いタクシーはハッチバックだったので、ラゲッジにヤギを乗せることになったようだ。

運転手が車から降り、おじさんと二人でヤギを乗せ、ふた(トランクリッド、ただの板です)を乗せる。

おじさんは後部座席に乗る。

運転手は運転席に戻る。

出発。

ヤギの乗車料金はどうなるんだろうと思うが、どうやら荷物扱いのようだ。

 

またすぐに別の乗客がタクシーを止め、助手席に乗り込んできた。

これで我々乗客は3人になった。

後部座席に私とヤギの飼い主。助手席に若いお兄さん。

しばらくはスムーズにタクシーは進む。

 

ガタッ。

何か後ろで音がした。

 

ガタタ。

また、何か音がした。

 

ガタッガタタ。

この時までに、何の音か私はもうわかっていた。

荷物入れに乗せたヤギが、もぞもぞ動いているのだ。

 

ガタッ。

私は後ろを振り向いた。

隣のおじさんも、同じことを考えていたようだ。

 

ガタガタッ。

荷物入れ部分のふたが持ち上がり、ヤギが顔を出した。

飼い主のおじさんは後ろを振り向いて、ヤギが顔を出さないようにふたを直した。

 

またしばらく、タクシーはスムーズに進行する。

ガタッ。

ヤギがまた、動き始めた。

 

ガタガタ、ガタッ。

ヤギがふたをはねのけて、顔を出した。

私の隣に座ったヤギの飼い主は、先ほどと同じようにヤギの上にふたを乗せなおす。

 

ガタガタガタ、ガタン。

大きな音がしたので振り向くと、ヤギが再度ふたをはねのけ、ググっと前に(つまり後部座席に)顔と前足を出していた。

飼い主はヤギを叱りながら、もう一度ふたをヤギの上に置く。

ヤギも負けていない。

こんな狭いところにいられるもんか!とばかりに、さらにググっと前に体を乗り出した。

 

飼い主はヤギをののしりながら、ヤギを荷物入れに戻そうとヤギの顔をつかんだ。

ヤギは狭いところが嫌なのか、顔を振って飼い主の手を振り切り、さらにグググと力強く後部座席に乗り出した。

もう私もゆっくり座っているどころではない。

 

ヤギは前足でおじさんと私の間に割って入ろうと、伸びあがってきた。

私は、ヤギがはねのけたふたでヤギを押さえこもうとするが、ヤギも必死だ。

「こらっ!」

 

おじさんはヤギを押さえきれず、ヤギが力いっぱい座席にせり出してきた。

「荷物入れに入っとれ!」

飼い主はヤギを叱りつけるが、聞くようなヤギではない。

おじさんと私が二人がかりでヤギを押さえつけようとすると、ヤギも力いっぱい暴れ、何とかして後部座席に出ようとする。

 

ガタタッ。

もはやふたではヤギを押さえつけることができない。

すでにヤギの半身は、タクシーの中に出てきている。

 

「お前!おとなしくしてろ!」

「こいつめ!」

飼い主のおじさんはヤギを叱りながらぽかぽか叩くが、ヤギは力いっぱい後ろ足を蹴って、荷物入れから飛び出そうとする。

おじさんも私もヤギを取り押さえるのに必死だ。

 

「うわっ!前に行くんじゃない!」

おじさんが大声を出したが、ヤギはグググと運転席の方まで出てきた。

もはや、体全体が座席に出てきてしまっている。

 

荷物入れから体を乗り出したヤギは、助手席と運転席のあたりに顔を突き出した。

驚いた運転手は右手でハンドルを持ちながら、左手でヤギの頭を押さえつける。

助手席の乗客も、ヤギがそれ以上運転席に割り込まないようヤギを後ろへ戻そうとする。

 

「戻りなさい!戻れ!」

飼い主はヤギの体を叩きながら叱るが、ヤギは乗客と運ちゃんに顔を押さえつけられ、ますます暴れるばかりだ。

慌てた運転手は思わずハンドルから両手を放し、後ろを振り向いてヤギを取り押さえようとした。

それを見た私、思わず言ってしまう。

「前、前!ヤギはいいから、あなたは前を見て運転しなさいよ!」

かくいう私も、ヤギを押さえこむ自信はない。

大の男が3人(と女性1人)もいて、ヤギ一匹押さえられないのか…。

 

結局、荷物入れから飛び出したヤギがうわ~っとタクシーの中で大暴れし、飼い主とヤギは降ろされることになった。

(最初からそうしていれば良かったんだが)。

 

目的地に到着して乗り合いタクシーを降りたときは、ヤギとの格闘で私はすっかり疲れてしまっていた。

アフリカに住んでいた時は、こんな日々が多かった。

 

今思い出すと、あのヤギは全く鳴かなかった。

パニックになるとメエメエ言わないのかしら。

私ら乗客も、ヤギを取り押さえるのに必死で無言だったけどね。