オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

イタリアの小さなお弁当

 

先日、お弁当の記事を書きましたが、もう一つ思い出に残るお弁当の記事を。

 

旅で食べるお弁当はいつも楽しみなものだ。

移動中、そして移動先で普段と違うものを食べられるのは、旅のだいご味ですよね。

 

イタリアへ行った時のこと。

イタリアと言えば、おいしいものがたくさんある。

誰でもいくつか思いつくと思いますが、私も食べたいものがあった。

それはピザ。

 

パスタはさすがにレストランへ入らないと食べられないだろうな。

でも一人でレストランへ入る勇気がない。

ピザなら、その辺のテイクアウトとか、立ち食い?とか、少しハードルが低いかもしれない。

そう思って、フィレンツェ市内をぐるぐる歩き回り、ついに安いピザスタンドを発見!

 

その店にあった種類はあまり多くなかったが、その中からおいしそうに見えたピザを選び、一切れだけ注文。

出てきたピザは、たぶん普通の味なんだろうけど、現地で食べるとまた格別。

「おお~これが本場のピザか!」

と感動して食べました。

もちろん、とってもおいしかったです。

 

で、楽しいイタリア観光を終え、イタリアを列車で出発。

地中海沿いにフランスを抜け、スペインへ移動する予定だった。

 

フィレンツェの駅で切符を買ったものの、どの列車に乗るのかよく分からない。

仕方ないので、イタリア人駅員に聞く。

 

私はスペイン語を勉強する前に、独学で少々イタリア語を勉強した。

それに、スペイン語とイタリア語はかなり似ている。

だから、駅員とコミュニケーション出来ると思っていた。

 

しかーし!

イタリア人がいい加減なのか、駅員が私の言うことを理解できなかったのか。

イタリア人駅員は、「あの列車はスペインへ行くよ」と間違った情報を私に教えた。

私は事前に列車の出発時刻を調べてあったので、おかしいな?と思った。

こんなに早く出発するんだっけ?

 

切符を見せて、

「スペインへ行くんだけど、あの列車じゃないよね?」

と何度も念を押したが、イタリア人駅員は

「大丈夫大丈夫。あの列車に乗れ。問題ない」という。

駅員がそういうなら、私が間違っているんだろう。

私は慌てて、そこにあった列車に飛び乗った。

 

よく分からないまま出発。列車は一路、フランスへ向かう。

しばらくすると、私は気づいた。

「しまった、慌てていたから食べ物を買う暇がなかった!」

本当にこれはまずかった。

だってこのままイタリアを出て、フランスを通り、スペインへ到着するまで食事抜きですよ?

 

後悔したが、もう出発してしまったから仕方ない。

う~お腹空いた…。

せめて水だけでも買っておけばよかった!

 

私の乗ったコンパートメントに、フランス人の若い兄ちゃんが一人乗ってきた。

一言も私としゃべらぬまま、彼は目的地で降りた。

私はまた、一人になった。

情けないが、お腹がぐうぐう鳴る。

 

しばらく行くと、今度はかなりの年配のおじいちゃんと、彼よりさらに小さいおばあちゃんが乗ってきた。

彼らはイタリア人らしかった。

老夫婦はニコニコしながら私のコンパートメントへ入り、ちょこんと座った。

 

列車は緑多い農村部を走っていた。

老夫婦は笑みを絶やさず、私に話しかけてきた。

イタリア語だ。

 

どうやら彼らが話せるのはイタリア語だけで、私の分かる言語(スペイン語とか英語とか)は話せないらしい。

私のイタリア語はほとんどスペイン語化していたが、老夫婦が辛抱強く?聞いてくれたおかげで、なんとか会話が成立した。

 

老夫婦は今から子どもの住む町へ行くのだと話した。

彼らはイタリアに住んでいるが、子どもは結婚してフランスの地中海沿岸の町に住んでいるという。

「近くていいですね。」

と私が言うと、

「うん、おかげさまで、電車で子どもや孫に会いに行けるんだよね」

と嬉しそうに話す。

イタリアに住んでて列車でフランスへ行く、か。

いいなあ。

 

しばらく、この穏やかなイタリア人老夫婦と話がはずんだ。

私は、イタリア人はおしゃべりでうるさくて独りよがりだというイメージを勝手に持っていた。

(イタリアファンの方、すみません)

お年寄りのせいか?彼らはゆったりしていて、彼らの周りには穏やかな時間が流れているようだった。

 

私は、フィレンツェを出発した時からコンパートメントに一人寂しく座っていて、退屈していた。

なので、この老夫婦と片言のイタリア語とスペイン語で会話できることが楽しかった。

なんだかホッと人心地ついたような気持になった。

 

老夫婦はしばらくするとお互いの顔を見て、笑顔で言った。

「お腹空いたから、お弁当を食べようか?」

おじいさんがそういうと、おばあさんもニコニコしながら、自分が提げている小さな布ポシェットから、ハンカチで包んだ小さな包みを取り出した。

 

私は、自分が空腹であることを急に思い出した。

お腹が鳴らないように細心の注意を払いながら(ここでぐうぐうお腹が鳴ったら、さすがに失礼ですよね)、おばあさんが包みを開けるのをさりげなく見た。

 

おばあさんが取り出したのは、パンにハムとチーズをはさんだサンドイッチだった。

素朴なものだが、ハムもチーズも少し厚めに切ってある。

おまけに、パンもとてもおいしそうだ。

日本の豪華なサンドイッチとは比較にならないが、さっきから空腹に耐えかねている私にはおいしそうに見えた。

 

「もしよかったら、一緒に食べないかね?」

おじいさんが、サンドイッチを私に勧めてくれた。

きゃ~!

地獄に仏、ならぬ、列車で弁当!

「お二人が食べる分はあるんですか?」

と尋ねると、サンドイッチはまだあるから大丈夫、と言ってくれた。

 

私は礼を言って、おばあさんからありがたくサンドイッチを受け取った。

おばあさんは、そのチーズ、うちの自家製なのよとか、パンもおいしいでしょ?とか、ニコニコしながら話す。

おばあさんが自慢するのも納得の、おいしいサンドイッチだった。

 

たぶん、そのシンプルなサンドイッチは、空腹じゃないときに食べても美味しかったのだと思う。

実は、私はさほどパン好きではない。

どちらかというとご飯党なのだが、ヨーロッパはパンのレベルが高いのか、どこへ行ってもパンがおいしかった。

 

おじいさんは私がサンドイッチを食べると満足げに微笑み、自分の持っている布製の小さなカバンを開けた。

水でも取り出すのだろう…と見ていた私はびっくりした。

おじいさんのカバンから出てきたのは、小さなガラス瓶だった。

そして、その中に入っていたのは赤ワイン。

(ガラス瓶ですよ!ペットボトルじゃなくて驚きました)

 

持参した紙コップを取り出すと、おじいさんはそのガラス瓶から赤ワインをコップに注いだ。

どうするのかと見ていると、ワインを注いだコップを私にくれる。

「このワインもうちで作ったんだよ!飲んでみて!おいしいから!」

 

ハムとチーズとパンと赤ワイン。

これ以上ないくらいの、おいしいお弁当です。

 

私はおじいさんから自家製赤ワインをうやうやしくちょうだいし、いただいた。

おじいさんとおばあさんもサンドイッチを食べ、赤ワインを飲んで、私たち3人はまた笑い合って楽しい時間を過ごした。

 

子どもの住んでいる町に到着したので、そのイタリア人老夫婦は手をつないで列車を降りて行った。

私はおなかも満たされ、温かい気持ちになって彼らを見送った。

小さいお弁当だったが、とても豊かな気持ちになった。

チーズもワインも自家製か。うらやましいなあ。

 

その後、私の乗った列車はスペインへ行かず、フランス南部のナルボンヌから北上した。

車内を回ってきたフランス人車掌に切符を見せて確認すると、この列車はパリ行きだという。

「ええっ?スペインへ行かないんですか?」

と尋ねると、フランス人車掌はヤギのように悲しい目をして首を振った。

「誰がそんなことを言ったのか分からないが、これはパリ行き列車だよ。スペインへは行かないよ。」

 

くっそおおお~~~!!

カルカッソンヌで列車を飛び降り、下り?電車に乗り換えるはめになった。

スペイン行きの切符を握りしめ、

「スペインへ行きたいんですけど、下り電車はいつ来るの?!」

と窓口で怒る?私を、フランス人駅員が憐みの目で見る。

「あーあ、やっちゃったね!君、方向違いの電車に乗っちゃったんだよ。」

 

くやしい~!!

いい加減なイタリア人駅員のおっちゃんのせいで、間違った列車に乗っちゃったじゃないか!!

腹立たしいが、仏西国境方面へ行く列車を一人ぽつんとホームで待つ。むなしい。

 

しかし、あの列車に乗らなければあの老夫婦に会うこともなく、彼らのお弁当を食べるチャンスもなかったかもしれない。

と思うと、粗忽なイタリア人駅員も許せる?気がしてきた。

ま、なんでも100%悪いってことはないものです。

 

しかし、あのおじいさんとおばあさん、毎日あんなおいしいパンやチーズを食べているなんて…イタリア、うらやましい。