オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

ライデン

オランダ人は英語が上手だ、という記事の続編になる。

 

オランダ滞在中、美術館へ行ったりして街歩きを楽しんだ。

どこへ行っても皆さん英語が堪能。何事もなく観光できる。

 

魚の鮮度が見るからに悪そうな寿司弁当を買い、公園へ持参。

スモークサーモンをただ酢締めにした感じ。

魚の調理に関してはデリケートさがないオランダ。

公園のベンチに座り寿司弁当を食べていると、オランダ人のおじさんが声をかけてきた。

 

「あれ、持ってる?あれ?」

あれって何だい。

 

賞味期限がヤバそうな寿司弁当をむしゃむしゃ食べながら、私はじろりとおじさんを見た。

こっちはまずい寿司弁当食べてるんだよ。(←なぜか強気)

英語で話しかけてくるところを見ると、こっちが外国人とわかっているんだろう。

 

「あの紙だよ。あれ。持ってない?」

そう言って、おじさんは紙を丸めるしぐさを見せた。

ああ。

マリファナ吸うやつか。

 

さすがマリファナが合法なオランダ。

公園でのんびりマリファナを吸うわけか。

 

当然、マリファナを包む紙なんて持っているわけない。

持っていないよ、と言っておじさんを追っ払った。

弁当がまずいので、ますます腹立たしい。

しかし、ホント、あんなおっさんでも英語が流ちょうに話せるわけか…。

 

別の日に、ライデンへ電車で行った。

ライデンは、日本語学科を設立した世界最初の大学。

長崎の出島で働いていたオランダ人商館員が持ち帰った日本コレクションも有名だ。

ライデン訪問の目的は、当然これだ。

日本にない物品が収蔵されているので、大変楽しみにしていた。

オランダに旅行した目的は、このライデン大学訪問と言っても過言ではない。

 

しかし。

なんとタイミング良いことか!

私がライデンへ行ったときは、たまたま日本コレクション展示スペースの改修中。

しかも、改修工事が終わるまであと何か月かを要するらしい。

 

ライデンくんだりまで来て、何も見ないで帰るなんて。

 

私は改修中の大学の建物周辺をうろうろと不審者のごとく歩き回った。

窓のガラス越しに、仏像が床に置いてあるのが見えた。

あれだ!あれが日本コレクションだろう。

 

私は柵の上に伸び上がったり、ガラスに張り付いたり、違う方面から覗き込んだりして執念深く日本コレクションを見ようとした。

誰か、大学関係者でも出てきてくれないかな…。

そうしたら、「わざわざ日本から来たんですう」と泣きついて、入らせてもらうんだが。

 

その願いもむなしく、改修中の建物からは誰も出てこなかった。

仏像や掛け軸らしき美術品たちは、ガラスの向こうに静かに置かれているだけだ。

ああ…。

日本から勝手に?持って行ったのに、はるか日本からやってきた日本人には見せてくれないのか!

 

結局、それ以上見ることはできなかった。

ガラスの向こうに置かれている数点の美術品を見ただけ。

あきらめてアムステルダムに帰るしかない。

 

朝から張り切って電車に乗り、ライデンに来たというのに、尻尾を巻いて帰るわけだ。

美しい日本の美術品たち、さようなら。

少しでも長くこの町にいるために、昼食をライデンで食べて帰ることにした。

 

ライデン大学の近くには、風車を模した外装のレストランがあった。

いかにも観光客向けだな…。

 

私はウロウロしたあげく、少し離れた場所に小さな定食屋を見つけ、そこへ入った。

まだ昼食時間には早いのか、客は私しかいなかった。

 

ウェイトレスのお姉さんが来て、メニューを置いてそそくさと立ち去った。

どうやら私がオランダ人じゃないので、話しかけられないで済むよう私を避けた様子。

ちょっと傷つくなあ。

ま、そういうことはどこ行ってもある。

 

メニューを開いてみてびっくり。

全部オランダ語で書いてある!(当たり前だが)

ラテン語系の言葉なら推察できるが、さすがにオランダ語は分からない。

 

メニューを裏返してみたが、英語なぞ一語も書かれていない。

なるほど…さっきのウェイトレスのお姉さんの態度といい、観光客が来ない店というわけだ。

どうしよう?今からこの店を出て、さっきの風車の付いたレストランへ入りなおそうか?

困った。書いてあることが全然分からない。

 

遠くで私の様子をうかがっていたお姉さんを呼ぶ。

お姉さんはおっかなびっくりといった表情で、私のテーブルにやってきた。

オランダ語が通じない東洋人が店に来て、困ったという体だ。

私もお姉さんとコミュニケーション出来るか不安になってきた。

 

「すみません。英語、分かりますか?」

と私が尋ねると、お姉さんは不安そうな顔をした。

「英語は、本当に少ししか分からないわ。あまり上手じゃなくて申し訳ないんだけど」

と、かなり流ちょうな英語で答える。

私はとてもホッとした。

それだけ上手なら十分でしょう。

 

私は「オランダ語が分からないので、おすすめ料理を教えてほしい」と頼む。

お姉さんは、少し悩みながらメニューをめくる。

それを待ちながら、私は運を天に任せる気持ちになっていた。

もう、食べられれば何でもいいです。

 

「これなんかどうかしら。〇〇××」

お姉さんはメニュー名を指さし、オランダ語で読み上げる。

メニュー名をオランダ語で言われても、こっちは全く分からんのだ。

値段を確認すると、そんなに高くない。よっしゃ。

 

「それは、お腹いっぱいになる食べ物ですか?」

安いので不安になり、一応聞いておく。

以前ドイツへ旅行したとき、メニューのドイツ語が分からず「何でもいい」といったら、スープだけしか出てこなかったことがあったからだ。

 

「これは、定食っていうか。お腹いっぱいになると思うわよ。」

お姉さんが考えながら言う。

「おかずは何ですか?何がついてくるの?」

重ねて私が尋ねると、お姉さんは説明し始めた。

 

「パンがついてくるんだけど、××っていうパンで結構大きめ。ふかふかして私は好き。おかずは、マッシュルームをバターで炒めたものと、小さいサラダと、それから…。メインは肉料理だけどそんな高級なものじゃないわ。肉の料理法はねえ…。スープもついてくるからお得なのよ」

 

値段も安いし(その店の定番メニューらしきことを言っていた)、お姉さんが5分くらいかけて細かくそのメニューの説明をしてくれたので、もうそれを頼もうと思った。

万が一それがおいしくなかったとしても、お姉さんがここまで必死に英語で説明してくれたのだ。

それだけでいい。

 

「じゃ、それを頼みます」

と私が言うと、お姉さんは最大級の笑顔になった。

外国人に自分の英語が通じたぞ!という達成感があったらしい。

いや、メニューの内容は十分伝わりましたよ。

 

しばらくしてその定食が運ばれてきて、驚いた。

この値段でこのボリューム?と思うくらい、パンも大きく、肉も大きい。

付け合わせのおかずも盛りだくさん。

以前の記事に書いたが、私はパンが好きではない。

しかし、この店のパンはものすごくおいしかった!!!

(今までの人生で、ここのパン以上においしいパンに未だに出会っていない)。

マッシュルームの炒め物も、お姉さんの説明以上のおいしさだった。

 

私はたらふく食べ、ものすごく満足した。

オランダに来て最もおいしい食事をとったと言える。

おかずをサービスしてくれたのか?と思ったが、すべてお姉さんの説明通りの内容だった。

 

食事を終え、レジでお姉さんに代金を支払った。

「あなたのお勧め料理、とってもおいしかったよ!こんなおいしい料理、オランダに来て初めて食べた!」

と言うと、お姉さんは満面の笑みになった。

本当にうれしそうだった。

 

厨房のコックさんも、注文前はひっそりとこちらの様子を伺っていたが、私が去り際に厨房へ会釈をすると、笑顔を返してきた。

「やれやれ、オランダ語の通じない客が満足してくれた!」って感じ?

 

ランチ後、再び列車に乗ってアムステルダムへ戻った。

ライデン大学の日本コレクションが見られなかったのは残念だったが、オランダ一?おいしい昼食を食べられて満足した。

 

観光客向けのレストランへ行かなくてよかったのかもしれない。

それにしても、あれだけ英語が上手なのに「英語に自信がない」なんて言う謙虚なオランダ人もいるんですね。

ちょっと日本人っぽいですね。