オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

他人を注意する 1

 

「あれ?あの人ルール違反じゃない?」

と気づいても、注意するのは勇気がいる。

不快に思っても、「ま、仕方ない」と見過ごしてしまうことも多いんじゃないだろうか。

これは、私がジャカルタで知り合った韓国人の方から聞いたお話。

 

その友人は、韓国からインドネシアの首都、ジャカルタスカルノハッタ国際空港へ到着した。

これから何年間か、インドネシアで働くのだ。

空港のイミグレーションはインドネシア人、外国人窓口ともに長蛇の列ができていた。

「こんなに待たされるのか…。」

うんざりしながら、列の最後尾についたという。ま、仕方がない。

 

空調が効いていると言えど、さすがに韓国から来るとうっすら暑い。

学生時代、インドネシアに語学留学してインドネシアのスローさは知っていた。

しかし、早く市内へ行きたいのに空港でこんなに待たされるとは…。

 

のんびりしたインドネシアの空港職員の仕事ぶりに、イライラしたりため息をついたり、「足が痛くなったなあ」と思ったり、「いや、しかし多くのインドネシア人も気長に待っているのだから、仕方ない」と気を取り直したりしながら、列が遅々と進むのを辛抱強く待っていた。

 

しばらくして、また別の便が到着したらしい。

どたどたと足音がして、何十人かの乗客がイミグレスペースにやってきて、それぞれ列の後尾に加わった。

 

すると、一人の大柄な欧米人ビジネスマンが、さっそうと後方からやってきた。

彼もイミグレの長蛇の列を見て、大変驚いたようだった。

しかし、その欧米人はさっさと前の方へ歩いていき、列の前方部に何食わぬ顔で割り込んだ。

 

多分、その欧米人ビジネスマンも「こんなところで待たされたくない」と思ったのだろう。

欧米人が列の前に割り込んだのを見たインドネシア人たち、誰も何も言わない。

 

韓国人の友人も、欧米人ビジネスマンが長時間待ちたくないために列に割り込んだということが分かった。

しかし、誰も何も言わないし、割り込んだのは一人だから仕方ない。

そう思ってあきらめかけたその時。

 

その欧米人ビジネスマンが、列の前方で誰かと話している声が聞こえた。

どうやら、誰かがその割り込みに対して、欧米人に注意しているらしかった。

後方で待っていた韓国人の友人も周囲のインドネシア人も、伸び上がってその言い争い?らしき場面を見て、誰が何を言っているのか耳をそばだてた。

 

列に割り込んだ欧米人を注意したのは、なんと若い日本人ビジネスマンたちだった。

彼らは欧米人が知らん顔で列に割り込んだのを見とがめて、彼にこう聞いていた。

「ちょっとすみません。あなたは今到着したばかりですよね?私たちはずっと列に並んで待ってるんです。みんなルールを守っているんですよ。」

「待たなくても優先的に入国させてもらえる特別な理由がおありですか?身体障害を抱えているとか、妊娠しているとか、高齢で歩けないとか、小さい子どもを連れているとか?」

 

明らかに、その欧米人ビジネスマンは妊娠もしておらず、高齢でもなく、小さい幼児連れでもなく、体が不自由そうでもなかった。

日本人たちは言った。

「では、最後尾についてください。みんなそうしてます。」

欧米人はすごすごと列を離れ、最後尾についた。

 

その一部始終を多くのインドネシア人乗客が目撃していた。

誰一人として、自分より体の大きい、しかもインドネシア語が分からなさそうな欧米人男性に、勇気をもって注意できる者はいなかった。

しかし、(韓国人の友人が受けた印象だが)みんなが言えなかったことを日本人が言ってくれたおかげで、欧米人が最後尾についたことに、インドネシア人たちは留飲を下げていたようだった、という。

 

私はその話を聞いて、韓国人の友人に聞いた。

「あなたはそれを見てどう思ったの?」

その友人は言った。

「誰にでもルール厳守を要求するのって、とても日本的だと思った。相手が自分より強そうな欧米人であっても、ちゃんと注意して、規律を守らせる。インドネシアや韓国とは違うと思った。」

 

確かに、ルール違反の他人を注意するのは勇気が必要だ。

もしかすると、その日本人ビジネスマンたちも、自分一人だったら注意したかどうか分からない。

しかし、もしその欧米人が私の前に割り込んだら、私はどうするか?

 

長時間待たされているところに割り込まれたら、寛容な?私でもさすがに腹が立つ。

(腹が立ちますよね?こっちだって相当待ってるわけですし)

ちょんちょんと彼をつついて「最後尾、あっちですよ」って笑顔で言うかもしれん。

一応、笑顔というオブラートに包んでですね。(←とりあえずこれが精いっぱいの気遣い。)

 

他人を注意するのって、相手が悪いことは分かっているけれど、なんだか注意するこちらが気が引ける感じですよね。

 

この話を聞いた時、日本と似たような国である(と私が勝手に思っている)韓国も、実はルール違反を注意しない国なんじゃないの?と、私の心の中に疑念が持ち上がった。

インドネシアは良くも悪くも忖度の国なので、欧米人を誰も注意しないのはやっぱりなあ、と言う感じがする。

 

韓国人の友人曰く。

本や報道などで「日本人はルール厳守」と聞いていたが、こういうところで日本人のきっちりさを目の当たりにすると、「本当に日本人はルール違反を許さないんだなあ」と感心した、そうです。

欧米人を注意したのが日本人だったので、見ていたインドネシア人も「やっぱりルール厳守の日本人だなあ」と思ったことだろうなあ。

 

私としては正直者がバカを見ない社会が当たり前であってほしいが、やはり黙認する人の方が世界には多いのかもですね。

ま、でも、ルール違反の欧米人を成敗できたのは良かったですね。