オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

シャンタルのウサギビジネス

 

最近、男女差別が日本社会でよく話題になっている。

医学部の女性受験生の試験の点数を男性より低くして合格させないようにするとか、話を聞いていると本当にやり切れない。

男性を有利にするために男性がそういう制度を作っているのだから、本当に気が滅入る。

 

コートジボアールでも、女性の社会的立場は不利だった。

ある現地人から私宛に、こんな相談があった。

 

彼の叔母さんは、夫と死別したという。

生活のために仕事をしなければならないので、彼の叔母さんは小規模ビジネスを立ち上げた。

就職先がなかなか無い国では、それが一番一般的だろう。

そのやり方について、いろいろ相談に乗ってもらいたいのだが、ということだった。

 

私に何が出来るのか分からないが、とりあえずその叔母さんに会ってみることにした。

彼に連れられて、彼女の自宅を訪ねてみた。

すると、落ち着いた上品な女性が私を出迎えてくれた。

 

彼女はまだ30代後半か、40代くらいだったろうか。

シャンタルという名前の、まだ若さの残る女性だった。

 

シャンタルは、自宅に併設したウサギ小屋を見せてくれた。

食用のウサギを繁殖させ、ホテルに卸しているのだという。

コートジボアールはフランスの植民地だったので、ホテルで提供される食事もフランス風が多く、ウサギ肉は需要があるようだった。

 

彼女の立ち上げたウサギ肉ビジネスはうまく行っていた。

女性だからなのか、ウサギ小屋は大変清潔に管理されており、納期も守るし肉質も良いらしい。

フランス人シェフたちから支持を受け、シャンタルのウサギ肉ビジネスはあっという間に販路を拡大していった。

 

この、利発そうな目をした上品な女性のビジネスに、何の問題があるのだろうか?

と話を聞きながら、私は不思議に思った。

 

理由はすぐに分かった。

彼女のビジネスは大変うまく行っているのだが、うまく行っているからこそ、高まるニーズに応えてウサギ小屋を拡張したり、ウサギを増やしたりといった投資が必要になっていた。

しかし、コートジボアールの銀行は「女性に融資をしない」ということになっていた。

 

「それじゃ困るじゃないの?」

彼女の説明を聞き、私は驚いた。

シャンタル宅には、彼女の甥っ子(コナン君)も同行してくれていた。

私は二人から話を聞くことができた。

 

シャンタルとコナン君の話を総合すると、銀行が融資してくれるのは男性に対してだけである。

女性が商売のためにお金を銀行から借りる際は、夫、息子、父など、男性を代表として立てなければいけない決まりになっていた。

今はどうなっているか分からないが、当時はこんな堂々たる男女差別が一般的な社会的慣行となっていた。

 

話はビジネス立ち上げ前にさかのぼる。

シャンタルは、ウサギビジネスを立ち上げる前にウサギ小屋を作ったり、ウサギを買ったりなど、先行投資が必要だった。

 

銀行は「女性に融資しない」と決まっているので、シャンタルは仕方がなく遠い親戚の男性を頼り、自分の代わりに彼にお金を借りてもらったという。

彼の名前でお金を借り、ビジネスが軌道に乗ったら少しずつお金を返していく予定だった。

 

この親戚の男性がクズだった。(ありがちですね~)

シャンタルが銀行から借りたお金を持って逃げた。

シャンタルは彼の所在を突き止め、お金を返すよう要求したが、彼はシャンタルのお金をギャンブルにつぎ込み、一円も残っていなかった。

 

シャンタルは、この親戚男性がギャンブルに使ってしまったお金を働いて全額返した。

そうして、また少しずつ貯金を始め、誰にも頼らず一人でウサギ肉ビジネスを始めた。

こういう経緯があったからこそ、シャンタルは「親戚男性は頼れない」と思ったようだった。

そりゃ、誰でもそう思うだろうねえ…。

 

シャンタルは大変真面目で、地道な努力家だった。

話を聞いていて、こういう人なら確かにフランス人シェフたちから信頼されるだろうな、と私も思った。

自分のことしか考えていないどうしようもない男性が多い中で、シャンタルは子どもと自分の生活を守るため、こつこつと働いていた。

 

しかし。問題は未解決だ。

銀行が「女性に融資しない。男性のみ」としているのであれば、ビジネス拡張のためにお金を借りることはできない。

私に相談されても、申し訳ないが何も出来ないのだ。

外国人なら、何か面白いアイデアを思いつくだろう…と思ってくれたんだろうけど、ごめんなさい。

 

シャンタルは、解決策がないことは残念な様子だったが、

「まあ、仕方がない、ほかの方法を探してみます」ということだった。

歯がゆいと思ったが、彼女の仕事ぶりがこれだけ信頼されていれば、何か出来るのではないか?とも思わせられる状況だった。

 

その人の属性(男女とか、年齢とか、外見とか、国籍とか肌の色とか…)ではなく、その人の能力ややる気で物事が動くようになってほしいものですね。

最初から男性と同じ土俵に立てないというシステムそのものが、問題なのだから。

 

他の国もそうなのかもしれないが、コートジボアールの女性たちは働き者で努力家。

こういう人が評価される社会になっていってほしい、と切に願う。

 

一つ気になる点は、シャンタルが地道に努力して成功した話を聞きつけ、例の親戚男性が「俺が社長になってやる」とか言っているとかいうこと。

自分の人生を邪魔されないよう、たとえ親戚でも信用せず、手堅く商売をやっていってほしい。

コナン君も、右往左往していないで叔母さんを助けてほしいよ。

誰かの成功には、優秀なサポート役が必要ですよ。