そういえば、ニジェールで勤務していた私の友人が、日本帰国前にアビジャンへ来てくれた。
彼女はニジェール滞在中、現地語で生活していたため、すっかりフランス語を忘れてしまったという。
コートジボアールは部族語が多すぎ、共通言語はフランス語だ。
特にアビジャンはフランス語しか通用しないので、大丈夫かなあ~と来る前から不安そうだった。
彼女は、私の家で数日間滞在した。
ある日、彼女が近所の市場へ買い物に行く、というので、先に行ってもらった。
10分後くらいに彼女を追いかけて市場へ行くと、何やらわいわいと大勢の人が集まっていた。
人だかりがしていたら、とりあえず覗いてみるのが正しい海外生活のやり方だ。
私は友人を探す前に、いったんその人だかりで足を止めた。
何があるのか分からないが、おじさんたちが群れをなして誰かを取り囲んでいた。
私はおじさんたちをかきわけながら、
「なに、どうしたの?」とそのあたりの人たちに声をかけた。
するとイスラム教の白い衣をまとったおじさんたちが、私をつつきながら教えてくれた。
「ほら見なよ、すげえ日本人がいるんだぜ!」
すげえ日本人?
おじさんたちの間から顔を出してみると、彼らの真ん中にいたのは、なんと私の友人だった。
彼女はすっかりフランス語を忘れてしまったので、ニジェールの現地語を駆使し、何とか野菜を買おうとしたようだった。
アビジャンでニジェールの現地語が通じたらラッキー、と思い、ダメもとでしゃべってみたらしい。
(彼女が話せる言葉が何語なのか、私には分かりません)
アビジャンの市場には、出稼ぎに来ているニジェール人がたくさんいる。
「俺たちの言葉を話す、すげえ日本人がいる!」
ということになり、市場中のニジェール人商人たちが彼女を見に集まってきた、ということだったらしかった。
輪の中心にいる彼女は、流ちょうな現地語を操りながら野菜を値切っている。
取り巻くおじさんたちも、
「いやあ、日本人が俺たちの言葉が出来るなんてな!」
「お前はニジェールに住んでたのか!いい国だろう?」
などと口々に笑顔で言いながら、彼女をちやほやしている。
彼女も、まさかこれだけ多くのニジェール人がコートジボアールの市場で働いているとは想定していなかったようだ。
うわさがうわさを呼び、彼女が買い物をしている間、ひっきりなしにニジェール人やナイジェリア人たちが彼女を見に集まってきた。
帰宅した彼女は、上機嫌だった。
「アビジャンにもニジェール人がたくさんいるんだね!うれしい!」
「やっぱりニジェール人、いい人たちだよ!みんな親切だったよ!」
ニジェール人たちも、突然市場に現れた日本人女性が現地語ペラペラで、さぞかし度肝を抜かれただろう。
ふだん、アビジャンでニジェール人は二級市民扱いされていて、肩身が狭い思いをしている人が多い。
異郷で自分の言葉をしゃべる外国人を見て、うれしく思った人もいただろうな。
やはり現地語の効果はすさまじく、彼女はうまく野菜をおまけしてもらっていた。
あれを見て私は発奮し、海外へ行ったら出来るだけ現地語を覚えるように頑張っている。
おまけが欲しいからではない。(おまけも欲しいが)
カタコトでもいいから単語が分かると楽しいと思うし、人気者になれる。
そういうわけで、私としてはかなり頑張ってインドネシア語を勉強したが、現在はスペイン語検定に向け、勉強中だ。
何かをスペイン語で言おうとすると、ついついインドネシア語になってしまう。
頭がすっかりインドネシアになってしまったのだ。
頑張って勉強するのもよし悪しという感じでもある。
早くコロナが落ち着いて、アフリカに行きたいものだ。