オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

スペインの強盗

 

不穏なタイトルで申し訳ない。

世界でワクチン接種が進み、これから少しずつ海外へ行く人が増えていくと思います。

そういう人への助けになればと思い、恥を忍んで私の体験談を書きます。

 

スペイン留学時の話。

スペイン人の先生が授業中に、市内の治安情報について時折教えてくれていた。

これも、外国人への重要な情報提供の一環なんだと思う。

こういうの、よく聞いて覚えておいた方が良いですよ。

 

ピラール(仮名)先生は、『〇〇という大通りに面した公園で、夜遅くに強盗が出るらしいよ』という話をしてくれた。

「公園にも街灯がほとんどついていないし、公園周辺も夜になると真っ暗。強盗が頻繁に出没するらしいから、暗くなったらあの公園は通っちゃダメよ。どんなに急いでいてもね。」

 

その話を聞きながら、私は頭の中で、ああ、あのあたりのことかな?と想像をめぐらしたが、多分そこへ夜に行くことはないだろうと漠然と思っていた。

公園の中を夜中に歩くこともないだろうしね。

 

ある晩のこと。

他の同級生たちと私は、中間試験の打ち上げで食事に出かけた。

試験がやっと終わった解放感もあり、みんな良くしゃべり、よく食べ、よく飲んだ。

いつの間にか夜は更け、三々五々とみんな少しずつ帰宅していった。

 

気づくと、私以外に残っていたのは女子2人。

時計を見るとなんと朝の3時だか4時だかだった!

い、いつの間に…。(相当盛り上がったんでしょうね)

 

女子3人で、「さすがにもう帰ろう」という話になった。

しかし、男子学生がいれば自宅近くまで送ってくれるだろうが、残ったのは女子だけ。

しかもそれぞれが違う方向に住んでいた。

 

一人が言った。

「じゃあ、仕方ないから、別々に帰ろうよ。誰かを送って行ったら、その人を送る人がいなくなっちゃうでしょ。」

そりゃそうだ。

そうするしかない。

我々は店を出て、店の前で別れを告げた。

彼女たちは別々の方向に歩いて行った。

 

それを見て、私もあたりを見渡した。

ここは確か〇〇通り。

多分、あそこの道を抜けていけば、私の下宿先方面へ抜けられるはずだ。

私は通りを渡った。

 

通りを渡ると、そこにはあまり街灯がついていない下りの坂道があった。

隣には、同様に街灯の無い、真っ暗な公園がある。

ん?もしや、ここは?

 

ピラールの言った話がようやく思い出された。

もしかすると、ここが彼女の話していた、「強盗の出る公園」ではなかろうか?

 

〇〇通りに面した、その暗い公園の脇道を南下していくと、我が家の方へ行けるはず。

しかし、私はその下りの坂道を覗き込んで、少し怖くなった。

全然街灯がついてないじゃないか…。

 

私は、派手なネオンや華やかな街灯のついた店が立ち並ぶ、〇〇通りをもう一度振り返った。

うーん。この道を遠回りして結構歩けば、かなり時間はかかるが我が家にたどり着ける。

しかしなあ…結構遅い時間だからなあ。

早く家に帰りたい。

迷うなあ…。

 

再度、その暗い坂道を私は見た。

うーん。

下りの坂道だから、走って過ぎ去れば大丈夫かも。

こっちの方が近道なんだよね。

 

「走って過ぎれば大丈夫だろう。下りの坂道だし、勢いつけて走れば、多分」

私は最終的にそう判断した。

そして、その「強盗が出る」と言われている公園の脇道の下り坂を、走って降り始めた。

でも、道に全く街灯がなく、暗くて何も見えない!!

 

息を切らせながら、その長い坂道を私は走って降りて行った。

空は真っ黒な雲が垂れ込めていて、星一つ見えやしない。

街灯の一つくらいないのか…。

 

とにかく、急いで帰るしかない。

今更後悔しても仕方ないけど、時計を見ながらご飯を食べて、もっと早く帰宅しておけばよかった!!

もう二度と、こんな遅くまで飲み食いしないぞ!!

 

坂道を半分くらい、駆け下りてきた。

すると、坂道の途中にあった脇道の左から1人、右から1人。

合計2名の若い男性が、すっと同時に道に出てきた。

こんな時間に歩行者か。

私は2人に道を開けてあげようと思い、右に寄った。

 

すると、その2人も右に寄った。

私は反射的に左へ寄った。

彼らも私に合わせ、左へ寄った。

 

なるほど。

ようやく私は気づいた。

こいつら、強盗か…。

彼らは私を通さないよう、道を通せんぼしているのだ。

あーあ、やっぱり出たよ。

 

私は坂道の途中で足を止め、後ろを振り返った。

もう、半分くらい坂道を降りてしまっている。

この若い男性2人を振り切って、坂道を駆け上がる俊足は私には無い。(もう疲れちゃってます)

それに、相手が1人なら体当たり?とか、うまく振り切ることは出来るかもしれないけど、なんせ2人ですからね。

取っ組み合いには自信があるが(?)、男性2人相手に勝てるかどうか。

酔っ払いですからね、こっちも。

 

私は、ここから逃げる方法を頭の中で目まぐるしく考え始めた。

立ち止まった私が動かないので、強盗2人組は前に進み、私に近寄ってきた。

私は左へ逃げようとする。

すると、奴らも左へ移動する。私をつかまえようと二人とも両手を伸ばしてきた。

ああ、万事休すだ。

私は観念した。

 

すると、その瞬間、空に立ち込めた黒い雲が切れた。

煌々たる月光が、道を照らした。

強盗2人は、月光を背にする形となった。(彼らは南側の坂の下に立っていたのです)

私は北側に立っていたので(しかも坂の上)、月光を正面から浴びる形になった。

 

「うわあっ!!」

強盗が悲鳴を上げて後ずさった。

ん?

 

見ていると、強盗2人はわなわなと震え、私を指さして叫んだ。

「お、おまええ!!空手の達人だな?」

へっ?

ぽかんとあっけにとられる私。

「俺たちをコテンパンにのす気なんだろう!」

はあ?

 

「きゃー!!」

強盗たちは悲鳴を上げ、くるりと踵を返した。

何が起きたか、突然の状況変化について行けない私をしり目に、彼らは猛ダッシュで坂道を降り始めた。

なんだなんだ?何が起きたんだ?

どうして私の顔を見て逃げ出すの?

 

良く分からないが、これ以上強盗に出没されても困るし、とにかく私は家に帰らねばならん。

私も強盗たちの後を追い、坂道を走って降り始めた。

最悪の場合、3番目の強盗が出たら、こいつらを蹴り飛ばしてそのすきに逃げるとか何とか、私の犠牲になってもらうのだ。

こんな寂しい道で置いてけぼりにされるより、アホ強盗たちと行動したほうがマシだ!!

 

私が猛スピードで強盗の後を追ってきたので、彼らは悲鳴を上げながら、走るスピードを上げた。

「追ってくるなあ!!」

「あっち行けええ!!」

逃げながら強盗たちは何やらわめく。

それを後ろで聞きながら、ようやく私も理解した。

彼らは、月光に照らされた私の顔を見て、「東洋人」だと気づいたのだ。

そして、「東洋人」=「空手の達人」と誤解し、逆に自分たちが襲われると勘違いしたのだ。

 

彼らの誤解はありがたい。

私は強盗の後ろを追うはめになったが、そっち方面に行かねば帰宅できない。

長い坂道を3人で走って降りて行くと、途中で強盗2人は示し合わせたのか、左右に分かれてわき道に飛び込んだ。

私は2人の間をびゅーんと風のように坂道を下って行った。

彼らは追いかけてこなかった。

 

そして、坂道を下り降りても、私は自宅近くまで走って走って走りまくった。

強盗が後を付けてきていないことも、もうわかっていた。

自宅に入る前、もう一度後ろを確認したが、夜明けの石畳の道はしんとしていて、人っ子一人いなかった。

私は静かに鍵を開け、自宅に入った。

やれやれ。

 

この件での教訓。

やはり、現地人が「危ない」と言っている場所は、近づいてはいけません。

走れば大丈夫とか、自分なら大丈夫、なんてことは絶対ありません。

 

私はたまたま、強盗がアホだったので良かったですが、もっと悪い状況になる可能性もありました。

なので、現地人から治安情報を聞いたら、必ず守ってほしいと思います。

もっと言えば、食事が楽しくても適度な時間に切り上げて帰宅していれば、さらに安全を確実にできます。

時間と行動に余裕をもって安全確保に努めてください。

小さいことでも注意していれば、楽しい海外旅行または海外生活が出来ると思います。

私の失敗談が、何かのお役に立てることを祈ります。