オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

ニューヨークのたこ焼き

 

最近はどこの国へ行っても「日本食」レストランがある。

いい時代になったものだ。

 

もちろん、この「日本食」にはいろいろレベルがある。

日本食とは似ても似つかない料理から、まるで日本にいるレベルのものまでピンキリだ。

 

単なる旅行で海外に行く場合、私は日本食レストランへはあまり行こうと思わない。

やはり現地のものを食べたいと思うからだ。

でも、海外赴任とか留学とか、長期滞在なら話は別。

おいしい日本食レストランをぜひ開拓したいと思う。

 

南アフリカで働いていたとき、フランスはパリで会社のミーティングがあった。

日本を含め、他の国で働いている人もパリに集合した。

 

一日の業務が終了し、皆が三々五々とホテルへ引き上げようとしたとき。

パリ在勤者が、東京からの出張者と共に皆の前に進み出た。

 

「みなさん、今日はお疲れ様でした!

もしよかったら、今からおいしいフランス料理を食べに行きませんか?」

 

パリ在勤者は、『おいしい店を知ってるから案内しますよ』と重ねて皆を誘った。

どうやら、東京からの出張者のリクエストらしかった。

パリ在勤者は満面の笑顔で言った。

「じゃあ、行きたい人は手を挙げて!」

 

会議室はしーんとした。

誰も手を挙げなかった。(私も挙げなかった)

こっちは、アフリカで和食に飢えている。

パリの和食店に行かないでどうするんだ。

 

私以外のアフリカ諸国、もしくは南米諸国から来た出張者たちも、同じことを考えているらしかった。

パリ在勤者は、焦って声を張り上げた。

 

「え?あれ?皆さん、おいしいフランス料理の店に案内しますよ?」

 

アフリカ、および南米在勤者たちはもくもくと後片付けを始めた。

私は、その日は事前に調べておいた和食の店で冷やし中華を食べるつもりだった。

結局、パリ在勤者と東京からの出張者だけが、フランス料理の店に行くことになったようだった。

(東京からの出張者は、わざわざパリで和食店へ行く必要もないですもんね)

 

そんな「和食の無い南アフリカ」だったが(ケープタウンになら寿司屋があった)、ついにプレトリアにも怪しい和食店が出来た。

日本では見たことのない寿司ロールが取り揃えられていた。

 

黒人シェフたちが見よう見まねで作っているという噂だったが、もうこの際、何でもおいしかった。

高級なネタはゼロだが、白いご飯が食べられるので、私はたまに利用していた。

この店がやっていないときは、自宅近くの中国料理店へ行った。

和食店が無くても、おいしい中国料理店があれば、海外で何とかなりますね。

 

ニューヨークは美食の町だ。

和食店もたくさん進出している。

なぜか韓国人の友人たちが和食好きだったので、彼らに誘われてよく和食の店へ行った。

学生寮にキッチンもあったので、自炊も出来た。

 

自炊も出来て和食レストランもある。

となると、食べたいのは焼きそばとかお好み焼きのようなストリートフードだ。

海外で和食というと、たいていお寿司とかラーメンが多いように思う。

お好み焼きは家でも作れるからなのかな。

 

日本のB級グルメがようやく見つかった!

「リトル・トーキョーにあるたこ焼き店」だ。

ん?リトル・トーキョーなんてマンハッタンにあるんだ?

知らなかったぞ。

 

場所は、マンハッタン南部のイーストビレッジにある小さなエリアのことだった。

やはり日本人街は、どこの国にもあるんですね。

 

通り過ぎてしまうような小さなお店で、たこ焼きを販売していた。

たこ焼きは3種類あった。

タコ、チーズ、プレーンだ。

お金はあまり持っていなかったが、たこ焼きなんて久しぶりに食べる。

ええい、3種類とも買ってしまえ!

 

3種類のたこ焼きを購入し、学生寮まで大事に持って帰った。

キッチンの椅子に座り、まだ温かい包みを開ける。

わー、ニューヨークで初めて食べるたこ焼きだ!

テンションがいやでも上がる。

 

まずは「タコ」を食べる。

当たり前だが、たこ焼きだ。ちゃんとタコも入っている。

う、うれしい。

 

次に「チーズ」だ。

なるほど。タコの代わりにチーズを入れたわけだね。

日本で売っていたら買わないかもしれないが(だって、やはりたこ焼きはタコでしょう)、でもアメリカで食べるたこ焼きは格別においしく感じる。

 

そして最後に「プレーン」。

何がプレーンなのかよく分からない。

 

「プレーン」のたこ焼きを一口、二口かじって分かった。

プレーンって…具がないじゃないか!

タコもチーズも入っていない。

 

うーん…何だか損をした気分。

まさか、アメリカ人はこれが「たこ焼き」とは思わないよね?

だって、タコの入ってないたこ焼きって、ねえ。

これが日本で売っていたら(売っていないと思うが)、買わないだろうなあ。

 

日本に帰ってくると、食事のレベルの高さにいちいち驚く。

こんなにおいしかったら、そりゃ海外の偽物は許しがたいよ。

たこ焼きは、タコを食べる習慣の無い国が多いせいか、なかなか海外では見つからない。

 

インドネシアではタコは食べない。

イカ好きの国民なので、たこ焼きにはイカを入れている。

 

海外にいたら、タコの入ってないたこ焼きや、イカの入ったたこ焼きを我慢して食べるしかない。

やはり日本にいる間に、本物のたこ焼きを食べておこう。