オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

セヌフォ族

 

コートジボアール北部にセヌフォ族という民族がいる。

セヌフォ族は神秘的な伝統を多く持つ民族で、コートジボアールの中でも少々異色だ。

 

コートジボアールは北部へ行けば行くほど、住民の身長が高くなりイケメンが増える。

私にはセヌフォ族出身の友人がいたが、彼も背が高いイケメンだった。

身長がそれほど高くないコートジボアール人(特に南部人)の中では目立っていた。

 

彼、ルシアンは年長者からは「プチ・セヌフォ」と呼ばれていた。

プチは小さいという意味だが、彼の場合は若いということ、また彼の背の高さをからかって「プチ」と呼ばれていた。

 

ルシアンはセヌフォの伝統についてよく話してくれた。

彼から聞いた話のあれこれに魅了され、友人たちと私は彼の出身地であるコロゴという町へ旅行してみた。

 

コロゴは最大都市アビジャンからバスで8時間。

簡単に行けるようなところじゃないですよね。

コートジボアール南部は熱帯雨林気候で高温多湿。

しかし、コロゴまで行くと赤土の大地が目立ち、急にブルキナファソやマリのようにサバンナっぽくなってくる。

 

コロゴのバスターミナルへ到着したころには、日はとっぷり暮れ、あたりは暗闇に包まれていた。

そこからタクシーを拾い、ホテルへ移動。

ホテルは森をバックにした丘の上にあった。

 

到着した晩、ガイドさんと一緒に何かを見に行くことになった(蛍だったかな?何を見に行ったのか忘れてしまいました)。

友人たちと私はホテルから外に出た。

あまり街灯がついていない道だったが、ちょうどいい具合に明るい月夜だった。

 

数人でがやがやしゃべりながら、ホテルの前の道を下っていくと、同じ道を下っていく人影が見えた。

あれっ?

何だか妙な格好をしている人だなあ?

目の前の道を歩いていく人は上下白っぽい服を着て、暗闇ではとても目立った。

 

少し速足になって、その人と距離を詰めてみる。

近くに寄ってよく見ると、その人は全身真っ白のかぶりもの?を着ていた。

この夜更けにかぶりもの?と不思議に思いますよね。

 

かぶりものと言っても、日本のゆるキャラのような完成された着ぐるみではない。

手作りっぽい単純なかぶり物をその人は着用していた。

上下とも白い布で、頭にはフードがついている。

下のズボンも真っ白だ。

何だか暗闇に降臨した宇宙人のようだ。

 

こんな夜更けに怪しい格好をしてどこへ行くんだ。

歩き方も独特で、ヒタヒタという感じで奇怪さ満点。

この人は何者なんだ?

と思っていたら、現地人ガイドさんが教えてくれた。

 

「彼はchasseur(猟師)だよ」

猟師か…。

 

しかし、迷彩服を着て森に潜むならまだしも、あんな着ぐるみだと相当目立つ。

動物が逃げてしまうんではないだろうか(私たちも驚いたくらいだし)。

あるいは、あれは猟師の制服なのだろうか?

 

あの格好を見れば、現地人なら彼が猟師と分かるわけだ。

しかし、出勤時間といい格好といい、謎だ。

 

月光の道を歩く着ぐるみ猟師さんを見て、不思議な国に迷い込んだような気がした。

むしろ、あの猟師さんのハンティングに同行したほうが面白かったかも。

 

話は変わるが、セヌフォ族には成人になる儀式というものがある。

12~14、15歳くらいの男子を対象にしたものなのだが、儀式の内容は一切秘密だ。

 

ある晩、その年齢に達した男子は、家を出て森に集められる。

村の成人男性の誰かが呼びに来るのだが、誰なのかも明らかにされない。

成人の儀式は神聖なもので、体験した者は内容を口外してはならないことになっている。

 

森に集められた男の子たちは、数日間の間、森の中で神聖な儀式に参加する。

それはセヌフォ族が大人になる通過儀礼であり、それに参加している間、指導者(村の誰かだが、名前は明かされない)からセヌフォ族男性としての心構えや知っておくべきことを学ぶ。

 

ルシアンの口ぶりから推量して、儀式は神秘体験のようなもので、あっちの世界を垣間見たような気持になるようである。

(さすがに彼も詳しい内容は教えてくれなかった)

大人になるための合宿みたいなものですかね。

 

森で過ごす数日間の間、家族はもちろん息子が成人の儀式に参加しているのを知っている。

指導役も村の中で持ち回り担当しているようだ。

 

そして、成人の儀式が終わると、参加した男の子たちは村へ帰ってくる。

その時にはもう「成人」となっているので、その日以降、彼らは大人として扱われる。

参加者たちが村へ帰ってくると、村へ大きな鳥がやってくる。

参加者が無事、成人したことを祝いにやってくるのだ。

 

この大きな鳥は、読者の皆さんはすでに想像されていると思うが、鳥のかぶり物をかぶった村民だ。

セヌフォ族の文化では、ヒョウや鳥、サルなど動物のかぶり物がよく見られる。

動物が彼らの文化に深く根付いていることの現われなんだろう。

 

彼らのかぶり物はかなりプリミティブで、よく言えば素朴でかわいい。

かぶり物を作ってまで儀式に動物を登場させるのは、何か意味があるんでしょうね。

 

私はこの、鳥のかぶり物を着用した人を写真でしか見たことがない。

しかし、意外にもよくできたかぶり物だと思う。

鳥の足の部分も、よく観察して作っている。

 

セヌフォ族の文化では、サイチョウという鳥が死者をあの世へ導くとされている。

だからなのか、儀式によく鳥が登場する。

 

コロゴで私は何枚もセヌフォ族の壁飾りを買った。

手織りの布に、セヌフォ族の伝統的なモチーフを描いたものだ。

この壁飾りにも、ヒョウのかぶり物の人やサイチョウが描かれている。

時折、取り出して家に飾っているが、見るたびに異世界というか、不思議な気持ちになる。

 

ところで、女性としては気になる点が一つある。

「どうして、成人の儀式には男子しか参加できないのか?」

という点だ。

 

ルシアンにその点を聞いてみた。

すると、彼の答えはこうだった。

 

「だってさ、女性は自然に大人になるじゃない。

男子はボケッとしているから、ちゃんと成人の儀式をして気を引き締めないと。

男子はいつまで経っても子どもだからね。」

 

男子はボケッとしていて、いつまでも子どもなのか…。

聞いた時は笑ってしまったが、ほかのセヌフォ族も同じようなことを言っていた。

多分、「女性は初潮を迎え、自然に大人の女性になっていく」という彼らの共通認識があるのだろう。

                                                                                                                   

大洋州の国、バヌアツには、高いやぐらから飛び降りるという成人の儀式がある(バンジージャンプの起源とされる、あれです)。

あれは、成人男性としての勇気を試されるものですが、世界各地にこういった大人としての心得を教える儀式があるんですね。

 

高所恐怖症の私は、バヌアツに生まれなくて良かったと思っている。

私がバヌアツに男子として生まれたら、一生成人になれないかもしれない。