日本に何年か住んでいたインドネシア人の友人、ルルがいる。
彼女の夫、ユディが都内の大学へ留学することになり、ルルも夫と共に東京に住んだのだ。
勉強家の彼女は日本語も独学で学び、かなり上手だ。
反対にユディは物静かで、日本語はほとんど話せない。
なので、私はルルの方が夫より日本理解が深いのかと思っていた。
彼ら夫婦と、日本人数人で食事をしていた時のこと。
「今一番食べたい和食は、ウナギかなあ?和食の中で一番おいしいしね」
とルルが言い始めた。
すると、普段は物静かな夫ユディが猛反論。
「いや、ウナギよりも穴子の方がおいしいよ!僕はやっぱり穴子だね!」
その会話を聞いていた私たち日本人はびっくり。
日本人の友人の一人が、ユディに尋ねた。
「ねえ、穴子のおいしさって、あなたに分かるの?」
(ちょっと失礼な質問だな)
その友人が、ユディにそういう質問をしたことは責められないと思う。
たいていの外国人は、脂っこいウナギを好む。
穴子はウナギよりは脂が少なく、あのおいしさを理解できるのはハードル高いんじゃない?
しかし、ユディは穴子のおいしさを力説し始めた。
「ウナギは脂っぽすぎるでしょ?穴子はウナギほど脂ぎってないし、食べやすい。
ふっくらと煮あがった穴子のおいしさと白いご飯の取り合わせといったら、そりゃあねえ!」
その後、5分ほど彼の穴子礼賛が始まった。
食卓は静まり返り?、顔を見合わせる私たち。
彼、普段すごく無口なのに…こんなにしゃべる人だったっけ?
無口だから日本文化を理解していない、ということではないらしい。
しかも、彼の説明は日本人が穴子をおいしいと思う、まさにそのツボを押さえていた。
それにも驚いた。
良くしゃべるルルだが、夫の「穴子最強説」?を論破できず、悔しそうだった。
ユディの話を聞いていた日本人たちは、
と妙な感心の仕方をしていました。
しかし、穴子ごとき?でこんなに力説できるとはねえ…。
人は見かけによらないものです。
実は、ユディの話を聞くまでは、私も穴子よりウナギの方がおいしいと思ってました(ウナギの方が高いですし)。
インドネシア人に穴子のおいしさを指摘されるとは思わなかったなあ。
今後はうな丼弁当ではなく、穴子弁当を買ってみますわ。