銀行の記事を書いた時に、思い出したことがある。
海外で生活するときは、まず銀行口座を開くのが一般的だ。
ハンコというものが存在しない海外では、何をするにもサインが必要だ。
銀行窓口で引き出しとか両替をする場合は、確認や承諾の書類にサインしなければならない。
銀行で使用するサインは、パスポートと同じサインをすることが求められる。
なので、パスポートを漢字でサインしている人は、銀行でのサインも漢字で書いている。
私も最初はパスポートのサインを英語で書いていた。
しかし漢字の方がカッコいいかな?(カッコいいか分かりませんが)と思い、最近は漢字にしている。
漢字でサインをする理由は、「外国人に真似されにくいから」という人もいるようだ。
私はカッコいい、という理由でパスポートの署名を漢字にしてしまったが、漢字だってマネできる犯罪者はいますよね。
コートジボアールにいたとき、日本人の知り合いと銀行へお金をおろしに行った。
彼女の名字と名前は画数の多い漢字が多く、サインが大変そうだった。
彼女は窓口でお金をおろした後、フランスフランに両替した。
なので、お金をおろすときの書類、両替のレート確認、換金金額の確認など、サインをする書類が何枚もあった。
それらの書類を前に、彼女はすごいスピードでサインを始めた。
すさまじい勢いで書いていたので、隣の窓口にいたコートジボアール人客がその様子を目を丸くして見ていた。
複雑な漢字が書けるだけでもすごいのに、それを猛スピードで書いているのに度肝を抜かれたようだ。
ぽかんと口を開けて見守っている。
じっと見ていると、お兄さんは私の視線に気づいた。
そして、照れ隠しなのか、彼女を指さして言った。
「すげえんだよ、この彼女!!そんな複雑な文字を、よくそんなスピードで書けるもんだ!」
そのお兄さんはよっぽど感心したのか、自分の後ろに立っていた別の客にも声をかけた。
「見ろよ、この日本人!すごいぞ、漢字をどえらいスピードで書いてるよ!」
それを聞きつけ、彼女の周りに4,5人のコートジボアール人の人だかりができた。
彼女が一枚サインを終えるたびに、
「おお~!!」
「わお!」
「めっちゃ早い!すごすぎる!!」
見守る全員がどよめく。
現地人に取り囲まれながら、彼女は全部の書類に漢字のサインを終えた。
息をのんで見守っていた観客たち?は、サインが終わるのを見届けるや、
「おお~!!終わった!」
「日本人は漢字を書くのが早い!」
と、なぜか拍手になった。
見るだけで複雑な漢字を、猛スピードで書ける日本人が、彼らには魔法使いのように見えるのだろう。
中には、彼女がサインした書類を見比べて、
「全部同じ文字だ(そうでないと困るが…)、すごい!」と感動している客もいた。
あいにく、私の名前はそんなに複雑ではない。
一度でいいから、名前の漢字を書いて、
「おお~そんな複雑な字が書けるなんて、すごい!」
と場を沸かせたいと思うが、名前も短いし画数も少ない。
英語で書いても漢字で書いても、同じくらいの時間で終わってしまうのが悲しい。
でも、カンタンな名前なので、どの国へ行っても覚えてもらえます。
どっちがいいのやら。