誰でもそうだと思うが、私も国内線、国際線問わず、いつもエコノミークラスで移動している。
仕事でもプライベートでも常にエコノミーだ。
しかし、人生でたった一度だけ、ビジネスクラスに搭乗したことがある。
欧州のどの町からでもいいので、日本へ帰国しようと航空券を探していた時のこと。
KLMのプロモーションでビジネスクラスが安くなっていた。
最初はエールフランスでチケットを買おうとしていたのだが、KLMビジネスクラスのプロモーション価格を聞いてびっくり。
エコノミーと同額でビジネスクラスに乗れるなら、搭乗しない手はない。
こんなに激安でビジネスに乗れる機会は一生ないだろう、と思い、KLMに勧められるままにビジネスクラスの航空券を購入した。
(後になって気づいたが、エールフランス利用ならパリ出発だった。
KLMを利用するということは、オランダ出発である必要がある。
つまりわざわざオランダへ行かなければならないのだ。)
そのプロモーションは、当然ながらオランダに観光客を呼ぶ一環だったわけです。
まあ、今はこんな太っ腹プロモ価格はないかもしれません。
私もしばらくオランダに滞在したので、わずかながらオランダにお金を落とさせていただきました。
で、日本へ帰る日、つまりビジネスクラス搭乗日当日。
私は少しドキドキしながら、スキポール空港へ向かった。
なんたって、一度もビジネスクラスに搭乗したことがないもんで。
もし空港で、
「残念ですが、ビジネスクラスの正規料金を支払ってください」
なんて言われたらどうしよう。
「プロモーション価格はウソでーす!」
なんて言われたらどうしよう。
あ~本当にあんな激安価格でビジネスに乗れるのかなあ?
貧乏人なのにビジネスなんぞに搭乗しようとするから、こういう不安に襲われるわけだ。
心配で一杯になりながら、空港のKLMカウンターへ向かった。
すると、KLMの空港スタッフが私を見て、行き先を手で示してくれた。
「あなたの受付はあちらです。」
そうか、あっちか。
親切なグランドスタッフがいて助かったぞ。
ほっとして二、三歩進み、彼女に示されたカウンターの表示を見て気づいた。
ん?エコノミー?
おそるおそる引き返して、グランドクルーのお姉さんに予約した書類を見せた。
「あの、ビジネスクラスのカウンターもあっちでいいんでしょうか?」
すると、そこに立っていた2,3人のKLMのお姉さんたちがざわついた。
『ええっ?こいつがビジネス?マジかい』
みたいな感じだった。
その時、初めて気づいた。
そうか、私の服装が貧乏そう(ちゃんと洗濯はしたが、Tシャツ&スニーカーでした)なので、彼女たちはエコノミー客と勘違いしたようだった。
なるほど…確かに、金持ちそうには見えないよね(事実、お金持ちじゃないし)。
今思い出しても気まずい気分が盛り上がってくる。
ビジネスクラスに乗れない身分?の自分が、(たまたまプロモ価格チケットをゲットしたがゆえに)ビジネスクラスに紛れ込む…。
かなり恥ずかしい状況だった。
服装で判断される。
当然ですよね。
ちなみに、ビジネスクラスカウンターでは、(Tシャツ着用でも)丁寧な対応を受けました。
しかし、空港へ行くときはきちんとした服装をしようと深く反省した。
やっぱり、それなりの服装の人は、中身も相応だと判断されてしまうようですから。
以来、エコノミークラス搭乗予定であっても、ビーサンに短パンみたいな服装はしないように心がけている。
堅苦しい服装である必要はないけれど、だらしなく見えないようには気を遣っている。
服装や靴は、場所によっては効力を発揮するようだ。
特に途上国では、服装がそれなりの人は中身もそれなりの人が多いように思う。
つまり、服装がだらしない人は教養や知的レベルも低い、とみなされることが多い。
日本だと、カジュアルな格好のお客さんでも丁重な扱いを受ける。
これは日本のすごいところだが、こんなことをしてくれるのは多分日本だけだ。
――
ところで話は変わる。
CAさんやグランドスタッフが、搭乗客をチェックしているのに気づかされることがよくある。
インドネシアの国内線の機内で。
機内食を持ってきたCAさんが、私にだけ英語で話しかけることがよくある。
「チキンORフィッシュ?」
それくらいならインドネシア語で言われても分かるんだが…と思うが、せっかくだし英語で応えるようにしている。
搭乗時に氏名や顔、パスポートで、外国人とバレているのだろうなあ。
しかし、CAさんの英語使用は毎回ではない。
こっちが外国人と知ってか知らずか、インドネシア語でガンガン話されることもある。
機内の通路に現れたカートに、オレンジジュースやリンゴジュース、水、お茶等いろいろ飲み物が載っている。
何にしようかな…と物色している間、突然インドネシア語で話しかけられると、こちらもあわあわしてしまうのだ。
氷を入れるとか、水を追加でちょうだいとか、まあ大した会話ではないんだけども。
どういう基準で乗客に話しかける言葉を英語にしたりインドネシア語にしたりしてるのか、今なお謎だ。
謎はもう一つ。
インドネシアの国内線利用時に、私は非常口座席に座ることが多々あった。
この席は前に座席がなく、脚が伸ばせるので、私は出来ればここに座りたいのだ。
しかし、英語が理解できない客だとここには座れないことになっている。
緊急時に乗客を避難させるとき、この席の乗客は英語の指示を受けながら乗務員を補佐することになっているからだ。
(インドネシア国内線の非常口座席には、座れる条件がある。
15歳以上であること、介助なしに自分で体を動かせること、英語理解、の3点だった記憶がある
(航空会社によって多少異なるが)。
これは、国際線だともう少し条件が追加されるはずだ)
私は出張時には旅行社を通じて、適当に座席を予約している。
予約時には出張年月日、目的地、希望便名、自分の氏名を伝えるだけだ。
「非常口座席を頼む」と依頼しているわけではない。
しかし、どうしてこの席をよくあてがわれるか?と言う理由を推察してみる。
たぶん、私が外国人なので英語が分かると思われているんだろう。
(というか、インドネシア語が出来ないだけですが…)
英語が理解できることが、非常口座席に座れる条件の一つになっているものの。
私の乗ったインドネシア国内線が、仮に墜落しそうになったと想像してみる。
インドネシア人CAさんがインドネシア人乗客を避難誘導させる時は、おそらくインドネシア語で指示するでしょう。
いや、100%そうだ。
だとしたら、インドネシア語がさほど得意でない私は緊急時にあまり役に立ちそうにない。
なんのためにいつも非常口席に座らされるのか、よく分からない気もしている。
非常口席に座ると、通常の離陸前の安全ビデオ視聴のみならず、非常口周辺の乗客だけにまた別の安全指示が与えられる。
眠ろうとする乗客はCAさんに起こされて、ちゃんと安全指示を聞かなければならないことになっている。
これも非常口座席に座る乗客の責務だ。
「国内線においては、非常口席に座る乗客はインドネシア語理解を必須」
にしたらいいんじゃないかといつも思うが、航空業界は国際基準順守なのかな?
非常口に座らされても、インドネシア語は分からんのですけど。
でも、墜落したときに備えて?気持ちだけは一応、補佐する気満々でいる。