ワクチン接種2回終了した人が増えてきて、おまけに緊急事態宣言が解除になりました。
旅行予約が10倍になったとか、ホテルの予約が増加してきたとか聞きますね。
早く旅行に行けるようになりたいものですね!
ところで、〇〇航空はいいとか悪いとか、旅行好きな方はそういう航空会社の評判を一度や二度は聞いたことがあると思います。
アジアならシンガポール航空がいいとか。
我らが日系航空会社とかも評判がいい。
もちろん、会社がその航空会社を手配したのだ。
遊びではなく仕事なので、私に選択の余地はない。
そもそも、南アで仕事をすることが決まった時、周囲からいろいろ言われた。
「え?南アで仕事するの?かわいそう~」
とか、
「俺だったら絶対断るね。」
とか、
「よくもまあ、よりによってあんな治安の悪い国で、ねえ…」
とか。
100%ネガティブな反応だったな、周囲の同僚たちは。
「よくあんな治安の悪い国へ行くねえ」と言われても、私が希望したわけではない。
観光じゃないんだから、行きたい国へ行けるわけではない。
と思っていた。
赴任前の研修を受けていたら、隣の席の人と仲良くなった。
「どこへ行くんですか?」
と聞いたら、タンザニアだという。
「いいですねえ~タンザニア」
と言ったら、2つの選択肢から選んだ結果だという。
へっ?
私は思わず耳を疑った。
南アかタンザニアを選べ、と言われ、妻に相談したのだという。
どっちかを選べと言われても、どちらもアフリカだ。
どちらもサファリ大国。
私なんか選ぶのに困るくらい?うれしい二択だが…。
「どっちも嫌だが、絶対に南アは嫌だ」
と奥様に頑強に抵抗されたので、南アフリカよりマシな?タンザニアを選んだそうだ。
「悪いか、より悪いか、っていう選択ですよ、ハハハ」
その人が笑う隣で、私は自分が南アフリカ派遣だと言い出しにくい雰囲気になった。
あなたがタンザニアを選んで、最後に残ったのが南アフリカか~。
しかもそこへ私があてがわれたわけかい。くそお。
でも、普通の人はやっぱりアフリカに住むなんて嫌なのか…。
ってことが分かり、アフリカ好きの自分はがっかりした。
こんなことがあったが、準備は着々と進んでいった。
何だか、いろいろ大変そうな国だ。
と思っていたら、出発2週間前に南アフリカの上司から連絡があった。
事務所が泥棒に入られたとかで、「こっちへ来たら気を付けるように」と言い渡された。
気を付けろと言われてもねえ。
どうやって気を付ければいいんだ。
本当に治安が悪そうだなあ。
周囲の同僚たちも「それでもまだ行くの?」「やっぱりやめた方がいいのでは」なんて言うし、ちょっと不安になってきた。
コートジボアールも、本当は行きたくなかった(南米希望だったので)。
行ったら楽しかったが。
(結局、行く前は嫌なのだが、行くと楽しめるタイプなのだ、自分は。)
で、南ア赴任を断ろうかとウダウダ考えている間に、出発日となった。
南アフリカ航空は、南ア赴任者から悪い噂をたくさん聞いていた。
いわく。
「機内で手を拭くおしぼりを配るでしょ?あれ、CAが投げてよこすんだよ!」
だの、
「すいません、って呼んでもCAは知らんぷりでおしゃべりに興じている」
だの。
つまりは「サービスが悪い」ということらしい。
いいのか悪いのか、「サービスが悪い」のには、そこそこ慣れている私(悲しいなあ)。
CAが後ろの客へおしぼりをぼんぼん投げてきた時は、キャッチするのが大変だったらしい。
まあ、アフリカなんだからサービスは期待しない方がいいかも(アフリカの方、すみません)。
おしぼりを投げられるかもしれない、と気を引き締めて搭乗する。
アジアを出発し、一路アフリカへ。
アフリカ方面へ行くとわくわくするのは、やはり自分がアフリカ好きだからなのかな。
すると、「ヨハネスブルク国際空港に着陸します」と機内アナウンスがあった。
緊張していると、ゴゴゴと音を立てながら飛行機は無事、滑走路に着陸した。
やれやれ、アフリカ大陸に戻ってきたよ!!
シンガポールから搭乗した黒人乗客たちも、「アフリカに戻ってきた!」と喜んでいる。
アジアからアフリカに戻ったら、そりゃ嬉しいだろうなあ。
私も日本にいたときは「南ア行くのどうしようかな」と悩んでいたが、アフリカに到着しちゃうとなんだかんだ言って嬉しい。
「税関申告書を記入し、準備しておくようにお願いします…」
アナウンスはまだ続いている。
どうやら、黒人の男性CAさんが話しているようだ。
乗客は皆、アナウンスを聞いているようで聞いていない。
誰しも降りる支度をするのに忙しいのだ。
「イヤホンは後ほど回収するので、座席に置いておいてください。
飛行機が完全に止まったらシートベルトを外してください。
頭上の物入れを開けると、荷物が落ちてくることがあります。
開けるときは十分注意してください。」
私は靴を履き、手持ちカバンを前の座席の下から引っ張り出し、膝の上に置いた。
あとは、シートベルトを外し、座席から立ち上がって降りるだけだ。
アナウンスの口調が変わった。
「皆さん、早く降りたいかもしれませんが、押さないで押さないで。
誰かを押しのけなくても降りられますよ!
自分の席を確認して、忘れ物をしないでね。」
アナウンスがカジュアルな口調になったので、乗客から笑いが起きた。
笑いが起こったので、CAさんはますます調子に乗った。
「乗客の皆さんは、アルファベット順に降りるようにお願いします!
名前がAの人から順番に、飛行機を降りてね。
最後の人は、客室内を全部掃除してからみんなの忘れ物が無いか確認し、それから飛行機を降りるように!」
乗客から大きな笑いが起きた。
私も思わず笑ってしまった。
良かった、名字がZから始まらなくて!
(もちろん、アルファベット順に降りるのはジョークです)
ユーモアのあるCAさんのアナウンスだったので、乗客の雰囲気が和やかになった。
先ほどまでは、早く降りたい乗客が少し殺気だって?いたが、このバカバカしくも面白いアナウンスのおかげで、乗客の気持ちにゆとりができたようだった。
初めて生活する国の前評判が悪すぎて、私は出国前はちょっとへこんでいた。
でも、こういうジョークで和ませてくれる国なら、楽しめるかもと思った。
サービスは悪いかもしれないが、ユーモアがあるならいいかな。
日本は逆で、サービスは良すぎるほど良いですが、くそ真面目でユーモアはあまりないですね。
サービス良くてしかも面白い、なんて両立は無理なのかなあ。