オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

無敵

 

コートジボアールアビジャンは、首都ではないが国の最大都市だ。

初代大統領が自分の出身の村を首都にするまでは、アビジャンが首都だった。

 

アビジャンギニア湾沿いの大都会で、大使館や国際空港もある。

初代大統領の出身地はヤムスクロという小さな村だ。

初代大統領がイタリアから呼んだ職人が建造した巨大な大聖堂以外は、何もない。

 

そういうわけで、アビジャンが経済的な首都だ。

アビジャンは、下町トレッシュビルとか、オフィス街プラトーといったいくつもの街区に分かれている。

ここで問題がある。

 

工業製品が高いアフリカでは(インドネシアもそうなんだが…)、服は買うより作る方が安い。

どうするかというと、布地を買ってきてクチュリエ(仕立屋)に頼むのだ。

クチュリエは、裁縫は出来るがデザインは出来ない。

なので、服を作りたいときは、自分で絵を描いて仕立て屋の兄ちゃん(またはおっちゃん)に見せるしかない。

(あるいは自宅で絵を描いて持っていくとかね)

 

トレッシュビルも布地屋さんがたくさんあるのだが、さらに安いエリアがある。

アビジャンの台所・アジャメである。

ここには布だけでなく、瀬戸物やら靴やらカバンやら、何でも売っている巨大市場があるのだ。

じゃあ、よく利用しただろうと思われるかもしれないが、ここはめちゃくちゃ治安の悪いエリアでもあった。

 

とにかく、何でも安い。

どの大都会にも、こういう庶民の味方の激安エリアがあると思う。

アビジャンの場合はアジャメだった。

おまけにこの地域には、地方へ行く長距離バスの発着所があった。

常に田舎から地方出身者が上京してくるターミナルというわけだ。

 

つまり、ここは都会人と田舎者でいつもごった返している地域なのだ。

日本でいうと、上野みたいな感じ?

まあ、アメ横はアジャメほど治安が悪くないですけどね。

 

日本人が市内からアジャメ地区まで、タクシーで行く。

アジャメにつくやいなや、タクシーにまだ乗っているのに強盗に遭ったりする。

泥棒たちはタクシーの窓を勝手に開けて、乗客のカバンやネックレスを強奪するのだ。

被害に遭った日本人は数知れず。

 

友人Bからこんな話を聞いた。

彼女はとても用心深かった。

アジャメの市場で野菜を見ている間も、財布をいれたカバンをわきの下にはさみ、固く死守していたのだという。

 

相当用心しているのが、はたから見ても分かったんだろう。

Bは人込みを避け、怪しい人が自分に近づかないかきょろきょろ見回すようにしていた。

その甲斐あって、財布はずっとカバンの中に入っていた。

しかし、ついに財布を盗まれた。

 

欲しい物があったのではBは値切り、価格交渉が成立した。

奥深くしまっていた財布をカバンの底から取り出し、お金を払った。

 

その10分後くらいに、財布の入ったカバンを握りしめたところ。

「あれ?無い?」

気づいてカバンを開けてみたら、財布だけがなくなっていたのだという。

 

「泥棒はさすがによく見ているよね。

財布が入っているのがズボンのポケットかカバンか分からないから、私がお金を使うまでじっと観察していたんでしょうね。」

 

Bが支払いを終え、財布をカバンにしまったのを確認し、後ろから近づいてすり取ったらしい。

あれだけ用心していたのに、さすがだわ、と彼女はむしろ感心していた。

 

こんな感じで、いくら用心していてもスリや泥棒に遭うわけだ。

気の小さい?私は、「泥棒に遭うくらいなら、多少高くても安全な地域で買い物するわ」

と、他のエリアでいつも買い物をしていた。

君子危うきに近寄らず。って感じ?

 

しかし、別の友人Tは、どうしても欲しい物があってアジャメへ行かざるを得なくなった。

彼女は職場のマダムたちと一緒に、刺しゅうや裁縫をやっていた。

自分たちの手芸に使用する可愛いボタンや刺しゅう糸、針は、そこの市場でしか買えなかったのだ。

 

「え?ヤバいよ、あそこ。私もこの前、腕時計を強奪されたよ。」

「危ないから行くのやめなよ。××さん、スリに財布をすられたんだよ。」

「ほかの場所で買えないの?〇〇さんも強盗に遭ったらしいよ。」

 

Tがアジャメへ買い物に行く、と聞いて、私たち日本人は何度も彼女を引き留めた。

だって、行った日本人が軒並み強盗や泥棒、スリに遭っているんですよ。

危ないに決まってるじゃないの。

 

しかし、数日後にTに会った私はびっくりした。

彼女の自宅へ行ったら、可愛い刺しゅうやコースターが完成していた。

どうやら、刺しゅう糸やレース、ミシン糸等、手芸用品を大量に購入できたようだった。

 

「すごいね!こんなに買ったの?」

私がほめると、Tは満足げにいろいろな作品を出して見せた。

「ほら、すごいでしょ?いい柄の布も買ったんだよ。ボタンも大豊作でさ。」

 

ん?どこで買ったの?

私が聞きとがめると、Tは笑いながら言った。

「結局、アジャメへボタンを買いに行ったんだよ。」

 

え?あんな危険なエリアに?

行くな、って言ったじゃないの。

 

そういうと、Tは再び笑った。

「ホント、行く前はそう思った。行ったら殺されるんじゃないか、と思ったよ。」

 

彼女がアジャメへボタンを買いに行きたい、と言ったところ、職場のマダムたちから「じゃあ私たちも一緒に」と言われたのだという。

手芸用品を買いに行きたい人を募ったら、7人のマダムたちが手を挙げた。

そして、7人のアフリカマダムたちとTは、ボタンや手芸用品の買い付けに行ったのだという。

 

「さすがアフリカマダムだよ!

7人のおばさんがずらりと並んで道を歩いていたら、サーっとモーゼの十戒みたいに道が開けるんだよ!」

 

7人の巨体のおばさまたちが、ずらりと並んで道を行く。

若い男性たちは恐れをなしたのか?誰も寄ってこなかったという。

おまけに、おばさまたちはやはり現地人。

値切りに値切りまくった結果、激安で可愛いボタンや刺しゅう糸が買えたのだという。

 

なるほど…。

やはり、おばさまたちはすごいな。

派手派手なパーニュを身につけた、巨体マダムたち7人がのしのし歩いている光景。

そこに混じる日本人の財布を狙う勇気は、誰しも持てなかったんだろう。

 

私はTの経験から学んだ。

泥棒やスリが跋扈するような途上国の市場では、現地のおばさま数人と一緒に買い物をするのが正解かもしれない。

 

日本だって、多分そうだろう。

関西の(偏見ですみません)おばさま7人が軍団になっていたら、彼女たちから財布をかすめ取ろう、なんて勇気のあるスリはいないんじゃないだろうか。

おばさまは、世界中どこでも無敵だ。

 

アビジャンで得た教訓から、私はインドネシアの怪しい市場には中年女性数人と一緒に行くようにしていた。

そのおかげか?値切りは大成功、おまけに泥棒に遭うこともゼロ。

インドネシア語で値切れるほど私のインドネシア語は堪能ではないので、やはり一人で行かずに大正解。

 

皆さんも、怪しい途上国の市場でどうしても買い物をしなければならない状況に陥ったら、おばさま数人と行くことをお勧めする。

安全だし、現地語で値切ってもらえるし、言うことないですよ!