オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

すばる

(この記事を書く前に、何度かパソコンがフリーズし、画面が乱れた。まだ3年くらいしか使っていないパソコンなのだが、壊れるかもしれない…記事アップが停止したら、パソコン壊れたな、と思っていただきたいです)

 

何年か前、ブータンから来た研修員の研修プログラムを作ったことがある。

 

ブータン人たちは、国が英語教育に力を入れているだけあり、全員英語が話せた。

顔立ちも昭和な感じで、日本人から見るととても親しみがわく。

日本にブータンファンがいるのも、なんとなく納得のいく感じだ。

 

都内での研修が休みの日。

休みだから研修が入っていないのだが、彼らだってやることが無い。

日本語も分からないので、研修施設で一日暇をつぶすだけだ。

せっかく日本へ来ているのに、どこへ行って良いか分からず困っているようだった。

 

ちょっとかわいそうだな…と思ったので、私は知り合いに声をかけた。

誰かがブータン人たちに東京案内をしてくれるといいんだが。

 

すると、「ブータン人?行く行く!どこか案内してあげるよ!」という人が現れた。

ありがたい。

 

知り合いのAさんが友人に声をかけたことで、3,4人の日本人が研修施設に来てくれた。

「日本でどこへ行ってみたいか?」

ブータン人たちに尋ねたところ、水族館へ行きたいということだった。

 

ブータンには海が無いので、水族館というものを見てみたい」

という。

我々日本人はブータン人たちを水族館へ連れて行った。

 

さて水族館。

イルカのショーとか、日本人なら「ちょっと子供向けかなあ?」と思うようなものまで、ブータン人たちは喜んでくれた。

内陸国だとイルカなんて見たことないよね。

ブータンだとさぞかし偉いんだろう校長先生たちまで喜んでいたので、こちらまでうれしくなった。

 

そして、小腹が空いた。

軽く食べようという話になった。

 

「何を食べようか?アイスクリームとか…」

なんて話をしながら、我々日本人はブータン人たちをフードコートみたいな場所へ連れて行った。

すると、一人のブータン人研修員(女性)が私のそでをひっぱって言う。

 

「あ!モモ!モモがありますよ!見て見て!」

モモ?ってなんじゃい?

桃、じゃないよね?

 

(桃は「もも」の2字目の「も」にアクセントが来るが、彼女が言っているのは「モモ」、つまり最初の「モ」にアクセントがついていた)

 

彼女が何に興奮しているのか分からん。

私がきょろきょろしているので、彼女はそっちの方を指さしながらまた言った。

「そこにあるじゃないですか!ビッグモモがある!日本のモモはビッグ!」

 

なんですかね、モモって?

果物売り場なんてなさそうだし?

私はAさんと一緒に、「モモってなんだ?」と彼女の欲しい物(らしきもの)をショーウインドー内に探した。

しかも「日本のモモはビッグ」らしい。

 

Aさんと私が役に立たない(だってモモなんて知らないですから)ので、彼女たちは店の前までやってきた。

食べ物屋の前にたたずむ我々に分かるように、ウインドーを指さしてくれた。

「ほら、すごいなあ!こんな大きなモモがある!」

 

彼女たちが指さす先には、肉まんがあった。

あれが「ビッグモモ」なの?

じゃあ「モモ」って通常は小さいものなのか?

しかも、肉まんってそんなに大興奮するほどのものなのか?

 

よく分からないが、「ビッグモモ」、いや肉まんを買うことにした。

おやつとして買ってあげたら、彼女たちはうれしかったらしい。

肉まんくらいで喜んでくれるなら、安いものだ。

 

それを見ていたブータン人男性たちも「わお、ビッグモモだ!」と喜んでいる。

どうやらブータンにある食べ物に似ているんだろう。

よく分からないが、喜んでくれるなら良い。

私もブータンへ行くことがあったら、「モモ」を食べてみたいものだ。

肉まんの小さいの、なんだろうか…。

 

東京での研修を終わり、地方の県で残る研修をすることになった。

地方へ移動すると、ブータン人たちは東京の疲れが出たのか緊張が解けたのか、くつろいだ様子になった。

 

くつろいだ、というと勘違いされるかもしれないが、どうも東京は落ち着かなかったらしい。

山々や緑の多い町を見て、「ほっとした」「ブータンみたいだ」という安堵の声が聞かれた。

 

ブータンの山々(ヒマラヤ山脈)に比べると、日本の山はそんなに高くないけどね。

それでも山を見てホッとする、のはブータン人らしいのかも。

 

その県で、ある教育施設を見学した。

理科の実験教室や図書室など充実した設備が素晴らしい施設で、しかも周りが山に囲まれている。

ブータン人たちは施設の窓から外を眺め、よほど気に入ったのか「いいですねえ~素晴らしいですねえ~」を連発。

ほめ過ぎじゃない?

いったい山が好きじゃないブータン人がいるのだろうか。

 

そこに、小さなプラネタリウム施設があった。

訪問時間が短かったので、プラネタリウム視聴までは出来なかった。

しかし、この地域で見られる星座、なんてコーナーがあって、なぜかブータン人たちに大人気。

(もしかして彼らは日ごろ、星座をよく見ている人たちなのかもしれないですね)

 

「ほら、これ!この星座はブータンでも見られるんですよ」

「へえ、これも日本で見られるんだ!」

 

最初は私も「そうなんだ!」なんて一つ一つ聞いていたが、彼らが星座にとても詳しいので、だんだん飽きてしまった。

もう、ブータン人たちに任せるよ。

 

盛り上がっているブータン人たちを放置し、私も施設の窓から緑濃い山々を眺めていた。

すると、また、誰かが私のそでを引っ張る。

 

「ほら、この星座!知ってますかこれ?」

言われて、私もそれを見た。

日本の施設なので日本語で説明が書いてある。

彼らは星座の写真は分かるが、日本語は読めない。

 

「すばる」

と書いてある。

ああ、すばるね。

えっと、英語でなんて言うんだっけ?

 

こんなメジャーな星座なら英語名だって知っている。

だって高校時代、私は地学が得意だったんだから(それと英語は関係ないが…)。

 

う、なんて言ったっけ?

思い出そうとすると思い出せない。

ブータン人たちは、「ほらほらあの星座!」と私を急き立てるが、ほらほらと言われて思い出せる頭でもないんだよ。

 

「プレイアデス」

やっとひねくりだした(やれやれ)。

 

しかし、頑張って英単語を思い出した私には誰も眼もくれず。

ブータン人たちは矢継ぎ早にまくし立てた。

 

「ほら、この星座って、クエスチョンマークがひっくり返った形をしてるでしょ?

だから、クエスチョンマークスター、って言うんですよ

 

言われて、私も写真をもう一度見る。

確かに、はてなマークをひっくり返したような形だ。

「ホントだ!(私の声)」

(ホンマかいな)

 

周囲にいたブータン人たちも、一人が「クエスチョンマークスター」と言い出したので、そうだそうだと言い始めた。

本当にそんな英語名だったっけ?

…なわけ、ないよね。

 

でも、確かに彼らの言う通り、クエスチョンマークがひっくり返ったような形をしているのだ。

近眼の私は、夜空でこんなにきれいなクエスチョンマークを見たことは無いけどね。

 

気づくとその狭いコーナーに10人くらいのブータン人(と私)が押し合いへし合いしながら、その「すばる」の美しい写真を見ていた。

自分たちが知っている星座が日本の施設で写真となって掲げられているのを見て、うれしかったんでしょうね。

 

もしかすると「プレイアデス」なんて美しい正式名称を知らなくても、「クエスチョンマークスター」で通じるならそれでいいのかも。

英語なんて(というか外国語なんて)、正しいかどうかよりも、相手に通じることがまず先決。

 

ブータンは英語が公用語だと聞く。

公用語ということは、(生活以外の場で、例えば職場とか学校とかで)日々使っているわけで。

そうなると、「クエスチョンマークスター」が正式名称かどうかはさておき(100%正式名称じゃないと思うが 笑)、英語を使う外国人(私ですね)に理解できるように英語が運用できる、ってのが重要なんだろう。

 

この日以来、私の頭にすりこまれた「すばる」=「クエスチョンマークを逆さにした形」。

プレイアデスなんて単語を四苦八苦して覚えるより、頭に残ったぞ。

 

夜空を見上げるブータン人が、「はてなマークをひっくり返したような星座だなあ」と思ってすばるを眺めている、と想像すると、ちょっとかわいいなあと思う。

かわいい、って言っても、研修員には中年のおっちゃんも複数いましたけどね。

(←おじさんはかわいくない、という偏見)