食べる話題ばかりで恐縮です。
最近、とある片田舎へ行った。
お昼時分だったので、連れと食堂へ入った。
私たちがそのお店へ向かっていると、2,3組のお客さんが店に入るのが見えた。
まあ、お昼だから店は混みますよね。
もしかして、満席かな?と思いながら店に入った。
店内は思ったより広く、畳の座席が2卓。
椅子とテーブルの席が4卓あった。
私たちが入った時には、畳の座席が1卓埋まり、テーブルと椅子席は一つだけ空いていた。
そこへ連れと私は座った。
ほぼ同時にお客さんが3組ほど入ったので、注文が出てくるのに時間がかかるだろうなと思っていた。
しかしこれが、想像以上に時間がかかる。
20分以上経っても、私たちの前に入ったお客さんの注文すら出てこない。
厨房からは、油で揚げるじゅうじゅうといった音などが聞こえてくるのだが。
一体どうしたのだろう?
前のお客さんが手間のかかる料理を注文したんだろうか?
電車に乗る時間もあるので、ちょっと心配になってきた。
私たちの前の前に入った3人のおじさんの注文が運ばれてきた。
見ると、カレーライス。
カレーって、作り置きしているからすぐに出てきそうな気がする。
あたりを見回しているうちに、最初のお客さんたちが食事を終えて店を出る。
我々の注文はまだ出てこない。
一体どうしたわけだ?
そのうちに、ようやく我々の注文が出てきた。
店内に入ってすでに小1時間くらい経っている。
その時になってようやく私は気づいた。
このお店は厨房の調理担当と運び担当の、なんと総勢4人もいる!
4人もいるのに、なぜこんなに調理に時間がかかる?(仕込みもしているはずだし)
のんびりし過ぎじゃないかい?
さすが田舎。
以前、会社でお昼休憩に出ようとしたら、別の同僚に誘われた。
なんでも、おいしいラーメンの店が近くにあるらしい。
歩いて行ける距離なので、一緒にどう?ということだった。
もちろん、私は合流した。
同僚はいろいろな人に声をかけたらしく、総勢7名ほどになった。
大人数でぞろぞろラーメン店へ歩いて行った。
「あ、ここじゃないかな?」
誘ってくれた同僚が指さした店は、「これが店?」と思うくらい小さかった。
平日の昼間で少し昼食時間に早かったせいか、店内には誰もいなかった。
7人がカウンターに座るといっぱいになってしまった。
カウンターの中に中年のおじさんがいて、どうやら店主らしかった。
我々はそれぞれ「味噌ラーメン」「もやしラーメン」などと注文していった。
「では、味噌ラーメンが2つ、もやしラーメンが1つ、醤油ラーメンが2つ、塩ラーメン1つ、野菜ラーメン1つですね?毎度ありい!!」
おじさんはニコニコしながら、私たちの注文を繰り返した。
私たちは注文し終わったので、それぞれおしゃべりを始めた。
すると、カウンターの中のおじさんが急に消えたのである。
あれ?おじさん、どうしたんだ?
もしや、具合が悪くなったとか?(いや、たった今まで元気そうだったけど?)
カウンターの中で倒れていたらどうしよう?
私たちはちょっと不安になって、椅子から立ち上がってカウンターの中を覗き込んだ。
すると、おじさんがカウンターの下にしゃがんでいた。
おじさんは耳に携帯電話を押し当てて、必死の形相だった。
誰かに電話をかけているらしい。
相手がなかなか出ないようだ。
「あ、〇〇?(相手の名前)」
電話をかけた相手が出て、おじさんは悲痛な声を上げた。
カウンターの中にしゃがみ込んだおじさんを見る同僚と私は、一体どうしたのだろうといぶかしく思った。
おじさんの声は続いた。
「今ちょっとさ、お客さんがたくさん来ちゃってさ。
そうなんだよ!そうそう!今、俺一人なんだよ!どうしよう!(焦る声)」
電話の相手は奥様か家族か、それともお友達らしかった。
「困っちゃってさ。俺一人なんだよ!!すぐに来られる?
うん。うん。悪いね。頼むよ。」
おじさんは手短に話を終えて電話を切った。
誰かに助けを求めて安心した顔で、おじさんはカウンターの下から立ち上がった。
私と同僚も、おじさんの動きにつられて椅子に座り直す。
おじさんはラーメン制作の作業に取り掛かり始めた。
同僚たちと私は顔を見合わせた。
なるほど…ワンオペだから、一度に7人をさばき切れないのか。
ほどなくして助っ人の女性がやってきた。(店の近くに自宅があるのかもですね)
さすが2人でやると作業が早い。
あっという間におじさんは奥様の助けを借りながら7人前のラーメンを作り、手早く持ってきてくれた。
おかげで職場の昼食時間内に食事を終えて、会社へ戻ることが出来た。
そうか、ふだんは一度に7人も同時にお客さんが来ないから、基本はワンオペなんだな。
東京はやっぱり人件費が高いからねえ。
ワンオペの店は東京では多い気がする。
ラーメン店もすごいが、もっと感心するのはワンオペの居酒屋だ。
おつまみから食事からデザートから、一人で何から何までやっている小さな店もある。
あれはすごい。
それぞれのメニューの手順がすべて頭に入っているんですね。
スペインにいたとき、バルがたくさんあった。
スペインは学校が無くてもバルと教会はある、と言われているくらいだ。
バルもすごかった。
BARというからには飲み屋なのかと思っていたら、そうではない。
朝から開いていて、朝ごはんも出す。
お昼は昼食を出すし、おやつの時間は菓子パンと牛乳、チューロスとココアなんてのも注文できる。
もちろん酒の種類もたくさん取り揃えているし、カウンターにはピンチョスが並んでいる。
パスタも食べられるしサンドイッチもある。
とにかく便利な存在なのだ。
で、ワンオペのバルも結構ある。(おじさんばっかり4人もいるバルもあるが…)
たいてい、カウンターに入っているのはおじさんだ。
アメリカはそういう文化じゃないのか、店は決まったものしか出さない。
スペインはアラブに征服されたことがあるからなのか?、何でも出しまっせ!みたいな感じ。
ちょっとアジア的な文化が残っているんでしょうかね?
早く海外旅行に行けるようになって、スペインのバルをまた楽しみたいものだい。
どうでもいいが、ワンオペの店って見ているだけでも楽しめる。
ついつい手伝ってあげたくなってしまう。
東京の愛すべきワンオペの店も、もう少し開拓したいものだなあ。