クッキーを自宅で焼いた。
私が子どもの頃は、我が家ではケーキやクッキーをよく焼き、和菓子を作っていた。
子どもが多かった(つまり私の兄弟が多かった)ので、親がそうしていたのだろう。
しかし、我々が大人になると、当然ながらお菓子を作ることはなくなった。
しかし、コロナである。
家にいる時間が増え、畢竟、料理など家事をする時間が増えた。
そうなるとお菓子ももちろん作りたいのだが、我が家にはオーブンはない。
オーブンが無くても作れるもの…ということで、「炊飯器で作れるお菓子」ばかりが食卓に並ぶことになった。
でも炊飯器で作れるお菓子ばかり作っていると、だんだん飽きてくるのだ。
料理に限らず、手を使って何かを作るのが大好きな自分。
最近は蒸して作るお菓子なんかも作るようになった。
(ところで、我が家には蒸し器というものが存在しない!(買えよ)
なので鍋にお湯を沸かし、その上に鉄製のざるを置いて蒸すのだ)
最近、クッキーとか焼き菓子を食べていないことに気づいた。
パン店などで販売しているクッキーはおいしそうだが、いかんせん量が少ない。(どんだけ食べるんだ)
で、子供時代を思い出し、とうとう自分で作ることにしたのだ。
先ほど、「手作りが好きな自分」なんて偉そうに書いてしまったが、そうはいっても取りかかるのに時間がかかる性分だ。
スロースターターなのでしょうがない。
クッキーのレシピをネットで調べ、書店でお菓子の本を立ち読みし、「オートミールの使い残しがあったなあ」なんて思いながら、100均でチョコチップを買ったりして、ようやくクッキー作成に取りかかったのだ。
「クッキーを作ろう」と思い立ってから、いったい何週間経ったんだ。
ま、いい。
一番シンプルなレシピ構成は卵、薄力粉、バター、砂糖だ。
バターが無ければサラダオイルとかオリーブオイルなんかでも良いらしい。
余談だが、上述の4アイテムを同量ずつ、1パウンドずつ使用するとPound cakeも作れる。
で、レシピ通りにバターと砂糖をまぜ、そこに卵を入れ、ふるった薄力粉を混ぜる。
これでクッキーの種作りは終了。
なぜこれっぽっちを作るのに何週間もかかるのか、謎である。
そこへ残り物のオートミールと100均チョコチップを入れた。
クルミそばの付けだれ用に買っておいたアメリカ産クルミが残っていたので、手で砕いて入れる。
棚をあさったが、あるはずのパラフィン紙が無いのでアルミホイルで代用。
オイルに薄くバターを塗り、その上にスプーンで落とすタイプ(ドロップクッキー)にする。
と思いきや、バターをケチりすぎて生地に油分が少ない。
仕方なく追加のオリーブオイルを入れてみる。
それでもドロップできるほどのもったり感ではないので、仕方なく手でこねて成型する。
バターを塗ったアルミホイルにクッキーを並べる。
オーブンが無いので、オーブントースターに入れて焼く。
15分とレシピに書いてあるが、そんなに焼かなくてもいいはず。
適当に焼くことにする。
焼き始めて中を確認。
うん、いい感じに焼けてるぞ。
クッキーを焼いている間、使ったボウルや泡だて器を洗い、コーヒーを淹れることにする。
すると、しばらくして台所中にグレーの煙が立ち込め始めた。
何だこりゃ?
「キュルキュルキュル…」
む?
同時に妙な音がしたので頭上を見上げる。
すると、天井近くに取り付けた火災報知器が点滅し始めた。
「ビーッビーッビーッ!」
「火災発生、火災発生!確認してください。火災発生、火災発生!」
火災なんて発生していないっつうの。
確認しろ、と言われたのでトースターを確認する。
なんと、奥のクッキーの縁が焦げて、トースターから灰色の煙が薄く漏れ出ている。
トースターのドアを開け、クッキーの前後を逆にする。
奥の方が強火なので、奥に置いたクッキーの裏が焦げ付き始めていたのだ。
トースターを元通りに閉め、換気扇を「強」にする。
火災報知器は止まった。
やれやれ。
しばらくして、クッキーが焼きあがった。
熱を冷ますためにざるに取り、第2弾のクッキーネタをトースターに入れる。
また火災報知器が鳴らないよう気を付けて見ていたが、特に何もなし。
ほらね。
ただのクッキーなんだからさ。
コーヒーのお湯を沸かし、フィルターをセットして挽いたコーヒーを入れる。
第2弾も焼き上がり、再びざるに取る。
第3弾をトースターにセットする。
すると。
「キュルキュルキュル…」
また異様な音がした。
もしや?と思って見上げると、またもや火災報知器が点滅している。
「ビーッビーッビーッ!」
またかよ…。
火災のわけがない。
「火災発生、火災発生!」
うるさいな。
ただの焦げだよ。
またクッキーが焦げ付いたんだよ。
「火災発生、火災発生!確認してください。火災が発生しました!!!」
ただのクッキーの焦げだっつうの。
と思ってトースターを見ると、なんとトースター内で炎が上がっていた。
わわわ…どうしたんだ?
慌ててトースターのドアを開けると、奥のクッキーから小さな火の手が上がっていた。
なんじゃこりゃ?
燃えているクッキーを叩くとすぐに火は消えた。
しかし、炭化したわけでもない(むしろおいしそうな焼き上がりぶり)。
報知器はなおも続ける。
「火災が発生しました!火災が発生しました!」
黙れ報知器。
と思っていたら、1階の別の部屋と2階から、ドタドタと家人たちが集まってきた。
「どうした?」
「火災発生したの?」
口々に聞かれて私は閉口した。
火事ではない。(火の手は上がったが)
火災報知器の音が大きすぎるんだよ。
いや、火災報知器は自分の与えられた仕事を遂行しただけだ。
確かにこれくらいの大きな音でないと、火災報知器の意味をなさないけどさ。
結局、作ったクッキーは全ていい感じに焼くことが出来た。
火災報知器が何度も鳴ったので消防署に連絡が行くかと思ったが、そんなわけはないですよね、さすがに。
報知器がちゃんと作動するかテストできた?ので、まあ結果としては良かったのかも。
しかし、山盛りに作ったクッキーをコーヒーと共にほおばりながら思った。
報知器が無かったら、トースター内で上がっていた炎に気づかなかったかもしれない。
私も何度か経験がある。
アパートを借りて一人暮らしをする際、火災報知器をつけるとか何とかという話になる。
「どうせ付けても、使うことはないだろうなあ」
といつも内心思っていた。
しかし、こんな場合はこうやって注意を喚起してくれるわけだ。
自宅で料理をしない人は不要かもしれないが、私は料理やお菓子を作るので、やっぱり取り付けて正解なのかも。
そのあと、疑心暗鬼になって冷えたトースター内を何度も確認したことは言うまでもない。
ガスの方が怖い、というイメージだったが、電気のトースターでも火の手が上がるものなんだなあ。
もう少しバターをケチれば燃えなかったのだろうか?
いや、そういう問題じゃないんだろう。
油分の多いクルミも使っていたし、いずれにせよ気を付けるに越したことはない。
しかし、やっぱり手作りはいいですね。
好きな具材を入れられるし、食べたいだけ作れるし(←結局そこだ)。
次回も火災に気を付けて?クッキーを作ってみようと思います。