先般、某官公庁へ行った。
この時期、行く人も多いアノ場所だ。
受付を済ませて中に入る。
中にはパソコンがずらりと並んでいる。
指定された席に行ってパソコンの前に座り、作業を始める。
私がパソコンに向かってしばらくすると、隣の隣の席に新しい客がやってきた。
職員さんも一緒だ。
職員に連れてこられた男性は椅子に座った。
そして、職員がパソコンの画面を立ち上げたようだ。
聞くともなしに、二人の会話が聞こえた。
職員「入力の仕方で分からないところがあったら、お知らせくださいね。」
客「はい、分かりました。」
職員「手を挙げて呼んで下されば、駆け付けますからね。」
そうか。
パソコン操作が分からない場合は、手を挙げて職員を呼ぶわけだ。
しかし、そんな難しいパソコン操作が必要なわけではないですけどね。
私はしばらくして自分の作業を終えた。
パソコンの画面を閉じて、片づけに取り掛かった。
書類をまとめてカバンに入れ、コートを羽織り始めた。
すると、隣から男性の声がした。
「すいません!すいません!」
最初、私は自分が呼ばれているとは思わず、カバンのファスナーを閉めていた。
隣の隣の席の男性は、なおも声を張り上げた。
「すいません!ちょっといいですか?」
ん?
私はようやく自分が呼ばれていることに気づいた。
隣の隣の客が私に声をかける、ってことは、私は落とし物でもしたのかな?
私は「書類が落ちてますよ」とか、「忘れ物じゃないでしょうか?」なんて親切な言葉を予想した。
そして、椅子の下や自分が使ったデスクのあたりをきょろきょろと見渡した。
何もない。
私物はちゃんとカバンにしまったようだ。
男性客はなおも私に呼びかけた。
「すいません、ちょっと聞いてもいいですか?」
私はコートを羽織るのを中断し、そのおじさんの席に近寄った。
おじさんが何を私に伝えたいのか、よく分からない。
それに、あたりがざわざわしていておじさんの声が聞こえなかった。
おじさんは椅子に座ったまま、自分のパソコンの画面を指さした。
「これ、どうやったら半角で入力できますかね?」
ん?
私は彼の使っている画面を見た。
ん?
今度はその人の顔を見る。
おじさんは途方に暮れたような表情をしている。
入力の仕方が分からんのかい…。
『入力の仕方が分からなかったら、職員を呼んでくださいね』って言われなかったっけ?
私は職員じゃないんだが…。(心の声)
男性の使っているパソコンの画面を再度見る。
「半角入力」をしなければならない箇所に、全角で入力している。
そのせいで、エラーになってしまっていた。
ふだんパソコンを使いなれていないのだろう。
しかし、半角入力くらいならすぐに教えられる。
こんな小さなことでいちいち職員を呼ぶ方が面倒くさい。
私は半角入力に直し、彼が入力したい数字を半角で入力してあげた。
中年のおじさんは、「おお~」などと言いながら、それを見ている。
また私を頼られるのも面倒なので、予防線を張ることにする。
私もトイレに行きたいし、そもそも帰るところなんだからさあ。
「ここに『半角』ボタンがありますよね?ここで『半角』に出来るんですよ。」
自分でさっさとやってしまうと、おじさんが覚えられない可能性がある。
なので、キーボードを指し示しながら、その男性が分かるように教える。
大したことではないので、一度覚えれば職員を頼らなくても出来るはずだ。
と思いきや。
おじさんの用事はそれだけでは済まなかった。
まだ分からないことがあったらしかった。
「ここはどうやって入力すればいいんですかね?」
おじさんの指さした画面を再度見る。
ってさあ。
まだ1ページ目でもたついているんかい。
もう、やってしまえ!(←自分でやった方が早いから)
おじさんの希望を聞いて、その通りに入力してあげた。
希望通りに入力された画面を見て、おじさんは何やらぶつぶつ言っている。
「そっか、ここは××をすればいいのか。で、ここはこうするんだな。」
おじさんの希望通りに入力した時点で、私はさっとおじさんの席を離れた。
ここまでやってあげれば、後は自分で何とかするだろう。
次々にやってあげる必要はない(だっておじさんの問題なんだからさ)。
それに、私が全部やってあげてしまうと、次回から彼は自分一人で出来なくなってしまう。
って、おじさん。
「ありがとうございます」の一言もないのかよ…。
慣れないパソコンで手一杯で、お礼を言うことも思いつかないんだろう。
別にすごい作業ではないので、ま、いいんだけどさ。
私はカバンを持ってその場を立ち去った。
おじさんの次の質問が来る前に去ろうと思った、というのもある。
やってるときりないからね。
そもそも、分からないときは職員を呼べばいいのである。
しかし、家に帰って気づいた。
よく考えると、こういうことばっかり良くあるんだよな。
職員がいるのに、なぜか私に聞いてくるお客さん。(私も客だぞ)
どこへ行っても、どういうわけか私は困っている人を磁石のように引き寄せてしまうのだ。
あのおじさんも、職員に聞いたら『こんなことも分からないのか』と思われるかもしれず、恥ずかしいのだろう(推察)。
だから、その辺にいた適当な客に聞いたんだろうなあ。
助けを求められても、私だっていつでも助けられるわけではない。
そういう時は、助けてくれそうな人につなぐことにしている。
とはいえ、「困ったケース」は私でも解決出来る場合が多い。
なので、結局私がやってあげてしまっている。(今回のおじさんもそうだ)
以前の記事にも書いたが、もうこれは神様が私に与えた役割なんだと思って、あきらめている。
たぶん、「小さなことでもいいから、他人の役に立ちなさいよ」ということなんだろう。
こういう「困った人が助けを求めやすい」オーラを持っているらしい?自分。
10代、20代の時は声をかけられると「ナンパか?」と思ったが、そうではないことがだんだん分かってきた(悲しい 笑)。
でも、よく考えれば老若男女問わず人が私に助けを求めやすい?ってのは、天賦の才(言い過ぎ?)かもしれん。
「困った人が声をかけやすい」という特技?が仕事に役立つといいのだが、そういう場面は今のところゼロだ。
まあ、これを「仕事」にしてしまうと窒息してしまうだろうし、適宜必要な時だけ困った人を助ける、というスタンスがほどほどで一番いいのかもしれない。