オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

全方位外交

 

(長い記事ですので、お時間のある時にどうぞ)

 

先日、日本の総理とインドネシアのジョコ大統領が電話会談した、という報道を読んだ。

話題はもちろん、ロシアのウクライナ侵攻について、だ。(会談というより意見交換?)

私もちょっと気になっていた。

 

日本もインドネシアも、ウクライナから地理的距離が遠い。

文化や言語、人種も宗教も全く違う。

インドネシアウクライナ侵攻をどう思っているんだろうか?と。

 

ジョコ大統領は、ロシアの侵攻についてはもちろん否定的だ。

主権国家を勝手に侵略するなんて、国際法を踏みにじる行為。

しかし、だ。

欧米(日本もだ)がやっている対ロシア経済制裁には、インドネシアは加担しないのだそう。

 

なぜかというと。

インドネシアは、「全方位外交」というのが外交の基本政策。

「全方位」とは、東西南北、どの国とも仲良くするということだ。

東西問題(民主主義VS社会主義)、南北問題(先進国VS途上国)関係なく、誰にも門戸を開きまっせ。

みたいな意味らしい。

 

つまり、インドネシアは、国連とか国際的なエンティティには参加する。

しかし仮に二カ国が争っている際、どちらか片方の味方に付く、ということはしないのだとか。

 

なーるーほーど。

そんな考えもあるのか。

 

大国による小国侵略という時も、「どちらか一方の味方に付かない」わけか…。

ちょっと意外な気がした。

 

でもさあ。

誰かがウクライナの味方に付かなければ、A国が武力でB国を攻撃してもいいことになってしまう。

そんなことになったら秩序も国際法もあったものではない。

と私は思ってしまうぞ。

 

「武力は容認しないが、同時に紛争当事者の一方の味方もしない」ときた。

そうくるかい、インドネシア

 

まあ、言いたいことは分かる。

片方に味方したとたん、第三者ではなくなってしまうからね…。

だからこそ各国は参戦せず、しかしロシア懲罰として経済制裁ウクライナ支援として難民受け入れ、という苦肉の策を取っているわけだ。

 

しかし、ジョコ大統領の会談記事を読んで、私は考え込んでしまった。

今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻への対応。

いったい、どういう対応が正解だったんだろうか。

今までの私の考えはこうだ。↓

 

90年代にソビエト連邦が崩壊した。

それに伴い、東西冷戦の象徴的存在だったワルシャワ条約機構も解体された。

当時のソ連の指導者・ゴルバチョフエリツィンらは、「これで東西対立は終わった」と思ったはずだ。

ソ連崩壊で、「世界平和」という夢を誰もが思い描いていた。

(少なくても私はそう思ってましたよ)。

 

しかし、NATO(北大西洋条約機構)は解体されなかった。

ワルシャワ条約機構に加盟していた国々が、こぞってNATOへ加盟した。

それを見ていたロシア。

「あれ?ワルシャワ条約機構を解体したのにNATO存続?」「俺だけ仲間外れ?」と思ったかもしれない。

 

かといって、ワルシャワ条約機構からNATOへ移ったポーランドハンガリーチェコなどを責められない。

かつて彼らはソ連に侵攻されて、ひどい目に遭った国々だ。

怖いいじめっ子(ロシア)から逃れて、別の強いいじめっ子(アメリカ)と仲良くしておこう。

と思うのも当然だ。

 

そういうわけで、ソ連崩壊以降、東欧と呼ばれていた国々が次々に民主化NATOへ加盟した。

自分の友達とか子分?と思っていた周辺国が、どんどん自分と距離を置き始めた。

しかも彼らは次々に、今まで「仮想敵国」だったアメリカの子分?になった。

ロシアは孤立した。

 

だからと言って「のけ者になったロシアが、(言うことを聞いてくれそうな)ウクライナへ軍事侵攻した」とは言わない。

「ロシアは、みんなからハブられてかわいそうだ」とも言わない。

軍事侵攻が正当化される理由はどこにもない。

 

ただ、私が今回ちょっと感じるのは、どうして誰もがロシアともう少しコミュニケーションを取ってあげなかったのだろう、ということだ。

やっぱり、誰かをいじめた人間は一生罰を受け続けなければいけないのだろうか?

 

そんなことを考えていた矢先の、インドネシアの「全方位外交」。

誰とも仲良くするが、紛争時にはどちらか一方の肩を持たない。

つまり、もう一方と敵対しない。

ふーん、そういう考えもあるのかな…。

インドネシアは歴史的経験から、そういう態度を取っているのかもしれないですけど。

 

ところで。

インドネシアにいたとき、私が不思議に思っていたのが東南アジア諸国連合ASEAN)である。

何が不思議かというと、このアセアンを構成する国のメンバーのことだ。

 

読者の皆さんもご存じの通り、アジアにはさまざまな人種、宗教、言語、文化がある。

よって、アセアンには様々な国が参加しているのである。

 

社会主義であるベトナム

軍事政権であるミャンマー

イスラム教国であるマレーシア、インドネシア

キリスト教国であるフィリピン。

仏教国タイ。

 

これだけ異なるメンバーが集まっているのに、アセアン諸国は特にケンカもしていない。

どうしてなんだろう?

 

EU欧州連合)やNATOは、加盟国にキリスト教、民主主義という共通概念がある。

だからトルコがEUに加盟したいと言い出したときは、「キリスト教国ではない」と大騒ぎになったわけだ。

イスラム教国は我々と違うから、加盟させたくない」という欧州委員もいた。

 

ひるがえって、そういう大騒ぎが無いASEAN

加盟国の宗教や言語、民族や政体がてんでバラバラ。

どうやってASEANはまとまっているのだろう?

金子みすゞの有名な詩「みんな違って、みんないい」みたいな感じ?

 

特に最近は、加盟国ミャンマーが問題だ。

軍事政権が民主化勢力を駆逐し、ミャンマーは国際的非難を浴びている。

こういう場合、アセアン諸国は会議でミャンマーを糾弾する。

他国から糾弾されると、さすがにミャンマーも口答え?している。

 

しかし、ミャンマーも、気に食わないからといってアセアンの会議をボイコットするわけではない。

以前、高まる国際的非難にミャンマーが態度を硬化させたことがあった。

アセアンの会議に欠席するのでは、と言われたこともあった。

 

しかし、ミャンマー軍事政権代表はアセアンの会議にちゃんと出てきた。

(その場でまたアセアン加盟国に『国民を弾圧するな』と言われてましたが…)

 

これは、普段からアセアン諸国がミャンマー村八分にせず、仲間として受け入れているからなんだと思う。

アセアン各国はミャンマーと特別親しくしているわけではないが、仲間はずれにもしない。

だからこそ、必要な時にミャンマーと連絡をつけられる関係を維持できているんだろう。

ね、ちょっと不思議な人間関係でしょ?

 

ASEANの面白さ?がお分かりいただけただろうか。

「あいつは俺と宗教が違うから加盟させたくない」なんて言い出す国は無い。

ASEANを見ると、宗教や言語、人種、政体、文化が違っていても、ひょっとして人間は仲良く出来るんではないか?と思わされる。

 

とはいえ、武力侵攻は絶対に許されない。

片方の肩を持たないのは理想的だが、軍事侵攻みたいな暴挙には団結して立ち向かうしかない(と思う)。

 

しかし、ロシア叩きに加わらない国があるからこそ、こうやって私も考えるきっかけが得られたわけだ。

全世界が寄ってたかってロシア叩きをしたら、と思うと、怖い。

それはそれである種の暴力なのかも。

 

そう考えると、「軍事侵攻は支持しないが、ロシア叩きには加わらない」国があるのは貴重だ。

むしろロシア叩きに加わらない国の考え方を、深く聞いてみたい。

 

たぶん、戦争の最大の抑止力は核兵器じゃないのかもしれない。

ふだんから「全方位外交」「誰とでも仲良く」「仲間外れにしない」というのが、本当は最大の戦争抑止力なんじゃないだろうか?(と思い始めている自分)。

 

インドネシアの全方位外交やアセアン的ゆる~い人間関係が正解とは言わない。

でも、「自分と価値観の違う他国とどうやってうまくやっていくか」という疑問に対する、一つの示唆ではある。

 

で、今後のことだが。

今回、軍事力には軍事力で対抗するしかないことが分かった、という人もいる。(私もそう思う)

でも、第三国がウクライナに参戦したら、それは第三次世界大戦になってしまう。

そうならないために、暴力に経済で対抗しようとしているのが今の状態なわけで。

それは、「第三次世界大戦を引き起こさない」ために努力してきた、人類の試行錯誤の結実だ。

 

今回の戦争が長引くとは、私は思わない。

たぶんロシアもそのうち停戦に合意するだろう。

しかし、これから重要なのは「戦争をやっていない時」、つまり平時だ。

 

価値観の違う他国とどうやってほどほどに付き合っていくか。

これは、戦争を起こさないため、人類が考えなければいけない永遠の課題なんでしょうね。

二国間で戦争が始まった時、「参戦しない」「経済制裁で対抗する」のも重要だ。

でも、さらに一歩進めて、ふだんから「誰とも仲良く」「仲間外れを作らない」のも大切なんだろう。

 

過去の記事にも書いたが、国連本部(NY)で働いていた時、上司が「アジアは争いごとが無いからねえ」なんてのんきに言っていた。

しかし、今は思う。

自分と違う相手でもとりあえず話を聞き、交流を持っておく。

そういうスタンスがあるからこそ、お互いに全く文化の異なるアジアの国同士の戦争が起きないのだろう。

――

 

記事が長くなって申し訳ありません。

余談ですが、今回のロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、和平調停を仲介する名乗りを上げた国がある。

トルコとイスラエルだ。(これからほかにも出てくるかもしれませんが)

 

トルコは黒海をはさんでウクライナとお向かいさん。

ロシアやウクライナの経済が破綻すれば、トルコも無傷ではいられないのだろう。

トルコの強みは、ロシアともウクライナとも親しいところだ。

やはり、敵対ばかりしていては平和を達成することはできないですよね。

 

そこで改めて思うのは、ふだんからどの国とも親しくしておくべきなんだな、ってこと。

外相会談では停戦合意に至らなかったが、ロシア叩きに加わらない真の第三者にこそ、停戦仲介が可能なんだろう。

色々な国とパイプを持つ国が加盟国だ、というのは、EUNATOの強みになったんじゃないかな。

やっぱり多様性は強い。

 

私の個人的希望。

それは、日本がどの国とも親しく付き合うことだ。

 

とはいえ、私も個人的に好きじゃない国がいくつかある(笑)。

でも、特別に親しくしなくてもいい。

仲間外れにしない、くらいでちょうどいいんだろうな。

(すみません、何度もこの記事を書き直したのですが、やっぱりまとまりがない記事になってしまいました)