オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

在インドネシア・ウクライナ大使

 

インドネシアウクライナ大使の講演をYouTube(オンライン)でやっていた。

読者の皆さんの中に、それを視聴した方はいただろうか。

 

インドネシア在勤中のウクライナ大使が、現在のウクライナ情勢及びウクライナについて語る。

というテーマのせいか、視聴者は国際関係学専攻のインドネシア人学生が大半を占めていたようだ。

大使の講演及び質疑応答で、約1時間を予定していた。

 

私は諸事情により、全部を視聴することが出来なかった。

それでも十分興味深かった。

色々思うこともあった。

 

まず。

画面に現れたウクライナ大使が、バティック(インドネシアの普段着)を着ていた。(←そこ?)

私も持っているぞ(←対抗意識)。

 

しかし、大使がお召しになっていたシャツ。

すぐにバティックと分からなかった。

外国人が着てもおかしくない、ブルーの渋めの模様のバティックだった。

 

インドネシアのバティックは、たいてい柄が派手。

配色は赤と黄色とかで目がチカチカするし、デザインも龍が背中にとぐろを巻いていたり。

日本人が着るとチンピラの一丁上がりだ。

 

やっぱり大使が着るバティックは、高級品だ。

私が持っているバティックみたいに、その辺の路上で大量に販売されている安物じゃない。

もぐもぐ揚げ物を食っているおっちゃんから、「500円にしておくよ」と言われてもさらに値切らなきゃいけないような、ペラッペラの代物ではない。

 

まあ、バティックのことはおいておくとして。

ありがたいことに、講演も司会進行も英語だった。

インドネシア語での講演だったら、私の語学力では無理)

 

大使はウクライナの現状について語った。

 

南部の都市マリウポリの90%が破壊されたこと。

ウクライナ第二の都市ハルキウの惨状。

近隣国ジョージアモルドバも領土を減らされた歴史的経緯があること。

北部の町ブチャにいる大使のご友人から聞かされた、ブチャの悲劇的な状況。

 

大使の口から、知っている町の名前が出てくるたびに変な気持ちになった。

まるで自分(私)がウクライナのことを良く知っているような錯覚に陥る。

行ったこともない国のことを、どうして詳しく知っているのか。

 

それは、新聞とかネットで報道されているからなんだが。

こんな悲しいことでもない限り、ウクライナのことを知らなかった。

 

大使はこんなことも言っていた。

 

「ロシアは、ドンバス地方が欲しいのではない。オデッサが欲しいのではない。ロシアはウクライナが欲しいのだ。ウクライナ人は要らない。ただ、ウクライナ(の領土)が欲しいのだ。」

 

大使の言いたいこと、分かる気がする。

最初は私も、「一体何が目的で戦争を始めたんだろう?」と思っていた。

日が経つにつれ、戦況が拡大そして悪化していくと、こんな疑いが頭を持ち上げてきた。

(もしや、ロシアはウクライナ全体を取っちまえ!って思ってるんでは?)

 

そうなると、良い予感は何一つしない。

その目的達成のため、何でもやるんじゃないか?とさえ思えてくる。

なので、最近私は毎日気分が悪い(しかしついつい報道を見てしまう)。

ブログ執筆もサボり気味だ(それだけが理由ではないが)。

 

ところで。

私は大使の講演をパソコンで視聴していたのだが、YouTubeの画面がパソコン画面左側に出る。

画面右側では、視聴者からの質問が次々に寄せられるのを読むことが出来る。

インドネシア人のウクライナ戦争についての考え方を知る良い機会だと思って、私はひたすら彼らのコメントを読んでみた。

(中にはインドネシア語でコメントしている人もいたが、ほとんどが英語でした)

 

インドネシア人学生の中には、私と違う考えの人もいるように思えた。

やっぱり、というか。

日本は欧米と似た論調の報道だが、インドネシアの戦争報道は少し違うからなのかな?

 

例えば、質問の一つに、「戦争を引き起こす原因になった誤解は何だったのか?」というものがあった。

つまり、「むろんロシアが悪いが、戦争に至った原因があるのかもしれない」というスタンスだ。

そういった、100%ウクライナ寄りともいえない、ややトーンダウンした感じの意見も見られた。

 

欧米と足並みをそろえる日本。

ひるがえって、ロシアとも経済的つながりのあるアジアやアフリカ諸国。

国民感情がやや異なるのも仕方ないのかもしれない。

日本と微妙に異なる状況認識を持っている国がある、と理解できたのは良いことだった。

 

インドネシア人学生の中には、

 

インドネシアはロシアから石油を購入しているが(インドネシアの外貨がロシアへ支払われることになるので)、悪いことだろうか?」とか、

G20サミット(バリで開催される)にウクライナのゼレンスキー大統領を招待したらどうか?」とか、

インドネシアウクライナを助けるために、何をすべきだろうか?」

 

といった意見を出す人も多く見られた。(こういう意見の方が日本に近い感じかな?)

 

多分、どの国も今回の戦争については、それぞれ歴史的経緯とか、経済的事情とか、政治的配慮とかで、色々な対応や考えがあるんだろう。

それは仕方がないことだ。

欧州一つ見ても、各国の対応は微妙に異なる。

今は対ロシアで結束しているが、戦争が長引けばすぐに欧州各国の反応が分かれることになるんだろうなあ。

 

ところで、まったく関係ない余談を一つ。

 

インドネシアウクライナ大使は英語で講演した。

話の最後に、「Terima kasih, taman taman…」(ありがとう、みなさん)

とわずかだがインドネシア語を話して、講演を締めくくった。

 

すると、それを聞いたインドネシア人たちから寄せられた反応。

「大使のインドネシア語はお上手です!」

 

MCの女性も大使のインドネシア語をほめていた。

「大使、素晴らしいインドネシア語をありがとうございます!」

 

私は思わずニヤリとしてしまった。

 

私もジャカルタ在勤時は、「インドネシアに住むなら、簡単な単語くらいは覚えなきゃ」と思った。

そして、「オハヨー」とか「アリガト」とか、たどたどしく単語を使ってみた。

すると、インドネシア人たちは私のへたくそなインドネシア語をほめちぎるのだ。

 

「わー、インドネシア語、お上手ですねえ!」(拍手)

 

それを聞いて、何度恥ずかしい気持ちになったことか!(笑)。

 

もちろん大使なら、私よりもはるかにインドネシア語に熟達されていらっしゃるだろう。

しかし、外国人が少しでもインドネシア語を話そうものなら、大喜びで盛り上げるのだ、インドネシア人って。

 

この点、日本人も罪深い。

日本人だって、外国人がカタコトの日本語で「アリガト」なんて言おうものなら。

「わーすごいですねえ!お上手お上手!」の嵐だ。

 

でも、誰だってわかってる。

『全然お上手でも何でもない』ってことを(笑)。

 

外国人がインドネシア語の単語を話し、それをインドネシア人がほめちぎる。

そんな場面をまた目撃することになろうとはねえ。

しかも、ウクライナ人がインドネシア語を話す、なんて場面で。

 

ま、でも、いいのだ。

バティックを着用し、カタコトでもインドネシア語を話す。

そうすると、たいていのインドネシア人は喜んでくれる。

 

こんなことを見るたびに、国際関係ってすなわち人間関係なんだ、と思いを新たにする(ちょっと違う?)。

相手国の誤解を解くため、友好を示すため、自分ができることはいろいろあるんだろうな。

(相手国の服の着用とか、相手国の言語を学ぶとかね)

 

私の個人的願望。

シャツの前面でトラが吠えている柄とか、チンピラっぽい柄のバティックを大使にもぜひ着用していただきたいものだ。

バリで開催されるG20 で、参加国は全員チンピラ仕様のバティックを着たら楽しそうだ。

そんな妄想ばかりしている(仕事しろよ)。