オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

ザリガニの鳴くところ/のんのんばあとオレ

 

最近、どんな本を読んだら良いのかが分からない。

 

書店に平積みになっているのは、新刊の自己啓発本が多い。

まあ、そういう本も興味があるので一応手に取る。

 

しかし、買うほどでもない。

立ち読みすれば満足する。

内容を忘れたら、また書店へ行って同じ本を立ち読みする。

そんな感じで済ませている。(すみません、著者の皆様!)

 

というわけで、今はそれほど読みたい本が無い。

読む力(夢中になる力?)が衰えてきたのか、筆者の筆力が無い本にのめり込めなくなってきた、ってのもある。

やはり重要ですよね、筆者の「熱量」とか「読ませる力」っていうか。

 

小学校、中学校、高校くらいまでは、私は夢中になって本を読みあさっていた。

若いと読む力もあるみたいだ。

大学生ごろからだんだん読むパワーが減ってきた気がする。

社会人になると、もうダメだ。

 

そんな背景もあり、最後まで読み切れる本がない。

最後まで読めそうな本を探したい。(←作家の筆力よりも自分の読書力低下…)

 

最近読んだ本がある。

以前から読みたかったが、手に取る機会が無かった本2冊を読むことが出来た。

「ザリガニの鳴くところ」(ディーリア・オーエンズ著、早川書房)はそんな本の一冊だった。

これを読んだ方、いらっしゃいますか?

 

発売当時は図書館で待ちに待ったのだが、なかなか借りられなかった。

ようやくブームが去ったのか?最近借りることが出来た。

詳しい書評についてはプロにお任せするとして。

良く考えて構成されていて、ぐいぐい読まされてしまった!

 

主人公は、アメリ東海岸の湿地帯にある貧困家庭で育った女の子。

その彼女の幼少期から亡くなるまでを書いた小説だ。

殺人事件も発生する。

鳥や植物の描写、海の流れ、舟をこぐ描写がすばらしい。

潮の香りが読んでるこっちにまで漂ってくるくらい、臨場感があるのだ。

 

この小説を書いたのが動物学者と聞いて、納得。

彼女の次回作が楽しみになった。

 

ようやく読む機会を得た本がもう一冊ある。

のんのんばあとオレ」(水木しげる著、ちくま少年図書館 心の相談室)だ。

 

ネットニュースによると。

フランスのアングレームで今年、水木しげる原画展が開催されたらしい。

その時知った。

のんのんばあとオレ」も、フランスで最優秀コミック賞を受賞していたことを。

 

日本のアニメやマンガの人気があるのは知っている。

しかし、水木しげる氏ねえ…。

 

私は、個人的には水木しげる先生のファンだ。

でも、フランス人から見て「ゲゲゲの鬼太郎」とか妖怪って、理解できないでしょ?

 

以前、『妖怪』をEerie creatureと英訳してあったのを見て、フーンと思ったことがある。

英語圏文化にないものは、翻訳のしようがない。

『妖怪』の仏訳が気になるところだが、なんとyokaiとなっていた。

 

本の話に戻る。

のんのんばあとオレ」というタイトルの、水木しげる本。

読む機会がなかなか無かった。

 

先日、何の気なしに地元の図書館で検索したら、その本は書庫にあることが分かった。

わざわざ借りる必要もないかな…と思ったが、この機会を逃したら次のチャンスがいつ来るか分からない。

図書館員の方にそれを探し出してもらって、借りることが出来た。

 

その本を手渡されたとき、書庫に入れられるのも当然だな、と思った。

だって、1977年初版ですよ。

またえらく古い本だ。

しかも、マンガではなく小説版だ。

 

この本を読んだことのない人に、内容を簡単にお伝えする。

(たぶん、「古い本なら読まないよ」と思う人も多いでしょうし 笑)。

 

「のんのんばあ」とは、水木氏が子どもの頃、近所にいたおばあさんのことだ。

 

のんのんばあの夫は拝み屋さんだった。

のんのんばあ自身も、怪しい薬を病気の人につけたり、拝んだり、そんなことをやっていた。

水木氏も、彼女の本名は知らなかったらしい。

当時は、そういった「よく分からない仕事をやっている人」「名前も知らん人」が社会に結構いたのだ。

 

のんのんばあは妖怪に詳しかった。

幼少の水木氏は、のんのんばあから妖怪のことを教わった。

氏の育った環境も、妖怪への興味を涵養するのに大きな役割を果たした。

島根県/鳥取県のさびしい漁村では、人知を超えたものは「妖怪」とされていたのだ。

たとえば海鳴りがしたら、「あれは○○という妖怪だ」とかね。

伝統と民間信仰の中で、氏は育った。

 

この本は、水木氏の成長物語でもある。

少年時代は勉強が出来なかったらしい。

 

昆虫を集めて標本にしたり、貝殻や動物の骨を拾ってきてコレクションする。

絵が得意で、いつもほめられていた。

近所の子どもたちと戦争ごっこをやって、逃げる算段をいつも工夫していた。

 

そんなことばかりに集中していて、勉強にはまるっきり興味がわかなかった子どもだったようだ。

親や先生から「勉強が出来ない子なので、将来が心配だ」と思われていた。

のんのんばあは、家族じゃないが水木氏の身近にいた大人だ。

そのおかげで、ちょっと変わった子どもだが、孤独にならずに済んだのだ。

 

こんなエピソードがある。

絵が上手だった水木氏は、教頭先生の口添えもあり、米子で個展を開催することになった。

米子までの電車代を渡されたものの、まんじゅうを買い食いしてお金がなくなる。

仕方なく、米子までの片道15キロ、往復30キロを歩くはめになる。

といった感じだ。

そんなことをしていたら、誰しも「こいつはあたおか」と思いますよね…。

 

というわけで。

兄弟が大学進学する中、自分だけ中卒の落ちこぼれ。

園芸学校へ応募してみたが、50人募集のところへ51人が応募、つまり1人だけ不合格。

不合格になった1人は自分だった。

こんな調子で、親が見つけてきた就職先も次々に首になる。

 

完全なる人生の落伍者である。

ここまで来ると、親から「成績が悪いどころか、頭がちょっと足りないのではないか」と心配されていたそうである。

 

「ダメ人間」の烙印を押された水木氏だが、生来マイペース。

「人生の緒戦で敗れた」ことは、あまり気にならなかったのだという。

なぜなら、成績が悪かったがゆえに自由な少年時代を過ごすことが出来たから、だそうだ。

 

どうなんですかね…。

自分の子どもがこんなだったら、将来が相当不安になるよ(笑)。

なんて笑っている場合ではない。

 

しかし、水木氏が幸運だったことがあった。

それは、「少年は少年時代に味わうべきこと、老人は老年時代に味わうべきことがある」(byゲーテ)。

彼は、「自分は少年時代に味わうべきことを味わえた」のだそうだ。

それは人間として幸せなことなんだろうなあ。

 

というわけで、「のんのんばあとオレ」。

私の想像していた本とはちょっと異なっていた。

読む前の私の推測としては、「妖怪に興味を覚えたのは、のんのんばあが教えてくれたおかげ」という内容に終始した本だと思っていたのだ。

 

本を読んで分かることは、のんのんばあは氏の人生の一部でしかない。

しかし、落ちこぼれの子どもでも孤独にならない社会が、昔の田舎には存在していた。

それと、子ども時代に興味を覚えたことが水木氏の人生(及び仕事)を支えたということである。

(だからこの本は「少年図書館 心の相談室」に収められているんですね~!)

 

海藻や貝殻、昆虫の収集。

地図を見て、海外に思いをはせること。

油絵等、絵を描くのが得意。

怪奇なものへの興味。

調べることが大好き。

空想も大好き。

 

このすべてが、水木氏の漫画を作ったのだ。

なんだか、うらやましい。

それに引き換え、現代は成績優秀な子どもでさえ孤独に陥る社会になっちまったなあ…。

 

ところで。(また脱線します)

今やフランスで高く評価される水木しげる氏だが、マンガで生活できるようになったのは40歳過ぎだという。

「ザリガニの鳴くところ」の著者・オーエンズ氏も、この処女作を何と70歳で執筆。

 

最近、いろいろな人の人生の話を聞くのだが、共通して言えることがある。

子どもの頃に興味を持ったこと(趣味とかね)は、一生その人を支える、ということだ。

 

就職すると、生活のためにやりたくもないこと(?)をやって生活費を稼がにゃならん。

でも、子どもの頃好きだったことは、ずっと好きであり続けることが多い。

それがその人の人生を支えてくれるのだ。

 

水木氏も、幼少期は「成績が悪いからダメ人間」と言われていた。

しかし、絵が得意で妖怪に興味があるという、子どものころからの「好き」を生かして仕事につなげた。

好きなことを仕事に出来たなんて、幸せな人生ですよね。

学校の成績が悪くても人生の最後で本人が「幸せだ」と思えるのであれば、それは幸せな人生だったと言えるんじゃないでしょうか。

この「少年図書館シリーズ」を読んだ青少年の、人生のヒントになることだろうなあ。

 

他に、図書館から借りた本に恩田陸さん、伊坂幸太郎さんの本がある。

どちらも新刊ではない。

これから読むのを楽しみにしている。

 

最後に私見ですが。

新刊じゃない本が「面白かった」と推薦されている場合、本当に良い本である場合が多いように感じる。

なので、本をお探しの本好きの読者の方には、『新刊じゃない本をお勧めしてしている』書評を参考に、本選びされることをお勧めしたい。