オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

敗者

 

先日、ドイツ人の友人と久しぶりに話した。

本ブログによく登場するマルちゃんではなく、「ストリートに出ろ」の方である。

とりあえずテオ君としておく。

 

その友人テオは、「僕はニュースをよくチェックしている」のだという。

日本政府が近々、「ボーダーコントロールを緩和する」予定だというのも知っていた。

国境管理、つまり入国制限を緩和ということである。

 

コロナ対策として、日本政府は国際的な人の往来を今まで制限していた。

「特段の事情」がある人のみ、新規入国を許可していたのだ(外務省HPによれば)。

その一日当たりの入国可能人数を6月から増やす予定だということを知っている、というのである。

ま、G7で日本の総理が発表したので、その報道をテオは読んだのかもしれん。

 

とはいえ、よく知ってるなあ。

私なんか、ドイツ政府が何をやってるかまではチェックしていないなあ。

G7の中でそれだけ厳しい入国制限を課しているのは日本だけなので、目立っていたのかも。

 

テオは言う。

 

「日本政府もついに分かったんじゃない?ウイルスはコントロールできないってことが」

 

いやいや。

私はそう思わないよ。

ある程度はコントロールできるでしょ。

 

日本が入国制限していたからこそ、欧米のように何万人という感染者が出なかったんじゃないの?

しかし、彼の言う通り、ちょっとやり過ぎ感はある。

 

まあ、テオの言いたいことも分からんではない。

ドイツみたいに北部以外はどこも他国と陸続きだったら、そりゃ入国制限は意味ないよ。

歩いてドイツへ入国できちゃうからさ。

島国日本だからこそ、入国制限は威力を発揮するわけでさ。

 

でも、同じ島国のイギリスは入国にかかる全制限をとっくに撤廃しているなあ。

陰性証明書も不要だった気がする。

よくそこまでふっきれたものだ。

入国制限するメリットよりデメリットが上回る、という判断だったんでしょうね。

 

日本では、私も友人も、ワクチン接種の予約を取るのにえらい苦労した。

という話をテオにした。

ヤツによれば、ドイツは「ワクチン接種予約なんて超超超超簡単!誰でもすぐ」なんだそうである。

 

うーむ。

テオの得意げな顔が腹立たしい(←そっちかい)。

日本は一応「世界第3位の経済大国」なのだが、どういうわけかいちいちドイツに負けている…。

(いや、私個人がテオに負けたわけじゃない、とは分かっている。ただの対抗意識?)

 

で、最近人と会うと必ず話題に上るテーマの一つ、「ウクライナ」の話になった。

 

グローバル化のおかげで?どの国の友人たちと話しても、だいたい似たような話題になる。

うちのご近所さんとやっているただの井戸端会議と変わらない。

ま、世界のどの人とも似たような価値観を共有することになった、ってのはいいことなのかも。

 

ドイツでもウクライナ難民を大量に受け入れているらしい。

(ドイツでも、と書いたが、欧州諸国の受け入れている難民の数は日本の比ではないが…)

 

しかし、ドイツに来たウクライナ難民たちの多くがウクライナへ戻っていくのだという。

誰だって、自分の国が一番住みやすいに決まっている。

一家全員で来たのならまだしも、家族の半分がウクライナに残っていればますます戻りたいだろう。

 

日本もウクライナ難民を受け入れているが、日本語は難しいし、難民に対する偏見がある。

多くの難民がすぐに日本を引き上げるだろうなあ。

 

テオは旅好きだ。

日本へ来た時も、シベリア鉄道を使って欧州から極東まで来たのだ。(飛行機なら楽なのに)

さすがドイツは長期休暇が取れるからこその、なせるわざだ。

そんな彼なので、「日本政府が観光客を受け入れるかどうか」は気になるんだろう。

 

テオは、ロシアにもウクライナへも旅行したことがあるという。

なんだか、地球上のたいていの場所へ行ってるんじゃないかと思う。

 

「マジで、ロシア人とウクライナ人は似てるんだよ。なんでお互いに戦争するか分からないくらい。」

 

へえ、やっぱりそうなんだ。

見た目も同じだしねえ。

 

こんなことを言うと、誤解されるかもしれない。

しかし、私はウクライナの戦争を見ていると、心苦しく思うことがある。

それは、ウクライナ、ロシア、どちらも殺される人には家族がいる、ということだ。

 

もちろん、勝手に侵略したロシアに非がある。

でも、ロシアにだって戦争に反対する人はいる。

 

ウクライナ側が欧米から支援された兵器を使用してロシアの軍艦を沈めたとか戦車を爆破したとか聞くと、そこにいたロシア兵だって死ぬんだよな、と頭の片隅で思う。

でも、ロシアが余計な侵略をしなければ、徴兵されたロシアの若者が死ななくて済んだのだ。

 

説明もなく前線に送られ、殺されるロシアの若者は確かに気の毒だ。

しかし、多くのウクライナ国民がロシア軍に殺された事実はどう説明する?

 

う~どうすればいいんだ。

最近、報道を聞くと感じるジレンマだ。

 

テオ曰く。

 

「今回のウクライナ戦争で、勝者はウクライナか、ロシアか。

それは誰にも分らない。でも、敗者はいる。

この戦争での敗者は『事実』だ。」

 

そうかもしれん。

ロシア側、あるいはウクライナ側。

どちらが何をしてどういうことを行ったか、今のところ誰にも分からないし、知らされていない。

戦争犯罪が行われている可能性もある。

「相手が悪いんだ」と追い詰められれば、歯止めのきかない行動をしてしまうこともあるだろう。

 

当事者だけではない。

ネットでフェイクニュースが流れたり、国営放送ででっち上げの報道をしたりと、何が事実なのか第三者の私たちもよく状況が見えなくなっている。

一刻も早く戦争を終結させて事実をはっきりさせない限り、隠ぺいされた事実だけが拡大していくだろう。

 

インターネットが普及して、欧州での戦争がリアルタイムで分かるようになった。

情報社会になり、うその情報が拡散して事実が見えなくなった、というのは皮肉なものだ。

 

と、そんな話になった。

ワクチンの件は意見が違うが、戦争についてはテオも私と似たような意見らしい。

やはりネットで情報を読むだけではなく、生身の人間と話すのがいいのかもしれない。

 

ところで。

コロナでテオも「2年くらい、友達と対面で話してない」という。

だよね…。

 

私もオンラインでは人と会うけど、対面で会う機会は激減した。

ネット社会とか何とか言うけど、やはり人と直接会って話すのは大事だよ。

 

テオじゃないが、「早く移動制限が緩和されるといいな」と思っている。

自由に旅行出来て人と話すことが出来る、ってのは平和の証拠なんだな。

 

おととし位にテオが「ミュンヘンへおいで」と言ってくれた。

だが、こういう社会情勢なので、いまだに行っていない。

テオと直接会って話したいことは山ほどある。(井戸端会議レベルだが…)

テオと奥様(旅好きらしい)が日本に来たら、3人で日本そばを食べに行くのもいいなあ。(自分がそばを食べたいだけ 笑)

 

誰かのフィルターを通した画像や文字ではなく、自分自身の目で、耳で事実を確かめることが本当は一番いいんだろうなあ。

事実を敗者にしないためにも。

と思っている。