先日、本を買った。
「頑張り過ぎずに、気楽に。」(キム・スヒョン著、ワニブックス)という本だ。
書店に行くと平棚に置いてある、自己啓発本とか「頑張ってね」「頑張らないでね」類の本。
たいてい、立ち読みはするが買わない。
これも流行の「頑張らなくていいよ」系の本だと思い、気軽に手に取った。
買うつもりもなかった。
棚には、同じ著者のほかの本も並んでいた。
もちろんそっちも立ち読みした。
(同じ著者の「私は私のままで生きることにした」の方が有名かと思います。)
立ち読みの結果。
「頑張り過ぎずに、気楽に」は、「家に帰ってゆっくり読みたい」と思えた。
買うか買わないか逡巡した挙句、買った。
私は、「ほしいな」と思ってもすぐに買わないようにしている。
「ほしいな」と思ってすぐに買うのは、衝動買いってやつですよね?
もう「衝動買い」から卒業したつもり?だ。
しかしその本を立ち読みした時、書かれていることがなぜか心に響いたわけである。
う~買うのやめようかな。
でも、やっぱり家でゆっくり読みたいぞ。
(なーんだ、結局衝動買いじゃんか)。
思うにこの手の本は、その時の自分の心の琴線にふれたかどうか、で購買意欲が出てくるようだ。
こういう本を読みたいと思ったこと自体、「毎日頑張り過ぎたくない」と思っているんだろうなあ~。
で、本の感想を書きたい。
著者は韓国人。
韓国も日本と同じで、同調圧力の強い社会と聞く。
だから以心伝心が当たり前とか、上司からのパワハラとか、著者の抱く人間関係の悩みに我々日本人も共感を覚えるんだろうと思った。
本の中で、「あ~そうだね!」と思う点はたくさんあった。
でも、それは読者個人個人の悩みとか考えにもよると思うので、そこは割愛。
何が良いって、この本の構成が良かった。
と私は思いましたよ。
「他人にふりまわされないように」「気楽に自分らしく」「我慢せず」「ピリピリせず」というように、ステップを踏んでいく。
それは自分を守ること、自分を愛することを学ぶ過程だ。
そして、最後の章では「愛を学ぶということ」。
うん、わかるわかる。
人生の難しさとは、究極的には「他人を愛する」難しさだ。
人生では、自分を大事にすることがまず大事。
自分を愛することが出来るようになったら、他人を愛することも出来るだろう。
自分の友達、親、兄弟、子ども、妻、夫、社会の人々、すべてが愛の対象だ。
つまり。
この本の読み始めは、「うん、生きるって大変」と思いながら読む。
自分にも当てはまることも多いしね(そうじゃない人は、こういう本は不要です)。
そして、だんだん「そうだよね、大変だけど気を取り直して少しずつ進みたいね」と思う。
最後に「他人を愛すること」の大切さへ読者を導いていく。
というのが、この本の構成です。
自分を愛することだって難しいんだから、他人を愛することなんてもっと大変だよね~。
と読後に思いました。
でも、「無理感」はない。
それは著者が「人間関係を完璧にすることは出来ない、ということを認めている」ことが伝わるから。
無理しなくていいんです。
そうなんですよ。
人間関係というものは難しいが、それでも人生は続く。
今も対人関係に悩む「普通の人」である著者が、一生懸命考えて作った本であることが良く分かる。
私は彼女に個人的に好感を持ちました。
違う国にいても、同じようなことを考えるものなんですね。
ところで。
この「頑張り過ぎずに、気楽に」を読んで、一つ思い出したことがある。
それは最近何かで読んだ、「清く正しく美しく」を求めない、ってことである。
今までの私の人生にも、いろんな人が登場してきた。
いい年齢のおじさんなのに定職についてないとか、昇進を断った人とか、学業成績優秀なのに専業主婦になった人とか。
そういう人に会うたびに、若かりし頃の私は「なんでそうなっちゃったんだ」と心の中でネガティブにとらえていた。
しかし、人生を続けていると分かるようになる。
「清く正しく美しく」生きていて人生に黒歴史無し!汚点無し!なんて人は、そうそういないのである。
生きていれば、病気、出産、介護、借金、いろいろある。
履歴書にブランクだって発生する。
常に自分の思い通りに物事が運ぶことなんて、ありえないのだ。
その人の責任ではないのに、その人にばかり逆風が吹くこともある。
これだけ努力しているのに、環境のせいで報われないこともある。
その人の苦境は、その人が好き好んでそこに陥ったわけではない。
人間に「清く正しく美しく」を求めすぎるのは無理がある。
「正論」がもっとも適切なわけじゃない。(でも、私も正論を振りかざしがちだ。反省!)。
「頑張り過ぎずに、気楽に」にもあった。
「さまよっていた日々ほど熾烈なものは無い」のだ。
回り道してきた、ということは、その人は人生の荒波を乗り越えサバイブしてきた、ということだ。
そうやって相手の苦労が想像できるようになれば、「愛すること」に一歩近づけるのかも。
他人に対する寛大さを身につけるには、人生は多くの勉強の機会に満ちています。
人生の悩みはほとんどが人間関係の悩み。
でも、自分を愛すること、他人を愛することが出来れば、この社会はちょっと住みやすくなる(はず)。
そして人生には苦労がつきものだが、乗り越えてきた人はその分、成長しているわけだ。
そういう人を評価する社会になってほしいなと思う。
たぶん「頑張り過ぎずに、気楽に」の著者も、そういうことを言いたかったのだと思う。
(ものすごくアバウトなまとめだが…)。
私には伝わりましたよ。
「人生は大変だけど、一緒に少しずつ進みましょう」という著者のメッセージが。
いろいろ励まされたので、この本は手元に置いてちょいちょい読み返そうと思います。
私も誰かを励ますことのできる人になりたいものです。