オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

カツアゲ

 

我が家に出没する猫に関する記事を、今までにいくつか執筆した。

猫好きの方がいらっしゃるかもしれないので、その後の顛末を少し書きたい。

 

今までの記事に登場した野良猫の「チビ」。

我が家近隣へ捨てられてから2年近く経ち、だいぶ大人の猫になった。

(もう成長して「チビ」じゃなくなった)。

 

チビをなんとか手なずけて家猫にすべく、努力を続けている。

しかしヤツは自由人過ぎて、たまにしか我が家に寄り付かない。

 

ある日。

久々にチビが我が家に来たらしい。

「らしい」とは、私自身が見ていないからだ。

私が帰宅した時、家人が報告してくれた。

 

あ、そうなんだ、今日はチビが来たんだ。

私はちょっとがっかりした。

 

「あーあ、チビに会いたかったな。」

私の不在中にチビが我が家に立ち寄るなんて、タイミング悪し。

ああ残念。

 

「チビ、どんな感じだった?」

と尋ねると、家人は言った。

 

「何だかよく分からないけど、長々しゃべっていたよ。」

 

しゃべっていた?

チビが?

というか、猫が?

 

どういうことなのだろう?

 

よく聞くと、こんなことだったらしい。

その日、縁側でにゃあにゃあ鳴く声がするので、家人が見るとチビがいた。

(たぶん、エサを要求していたんでしょうね)

 

「お腹空いてるんだね~」

 

家人はいそいそと立ち上がり、チビを手なずけるため買っておいたキャットフードを取り出した。

そして、100均で購入しておいたエサ皿に、それをざざざと空けた。

 

「ほ~ら、ご飯ですよ~」

 

ウキウキとお皿を縁側へ持っていくと、人間の顔をじっと見てチビは言った。

 

「にゃあにゃあにゃごにゃご?にゃっ!」

「にゃんにゃあにゃああ~にゃ。にゃご?にゃごにゃご。」

 

家人はエサを持ったまま、ぽかんと立ち尽くした。(らしい)。

 

(はっ?なんだって?)

そう思うくらい、チビのセリフが長かったそうである。

 

「いや~何を話しているか全然分からなかったけどね。」(そりゃそうだろ)

 

チビは縁側でキャットフードを食べた。

食べ終わったチビに、家人はまた声をかけた。

 

「チビ、また来なよ。うちの子になるんでしょ?」

 

すると、またチビは返事をしたという。

 

「にゃっ。にゃあにゃあ。にゃあにゃごにゃご?

にゃんにゃんにゃあにゃ。にゃごにゃごにゃあにゃ~にゃん。」

 

(呆然とする家人)。

(立ち去るチビ)。

完。

 

という感じだったらしい。

 

我が家の周辺は飼い猫、野良猫入り混じり、多くの猫が闊歩している。

彼らももちろん、人間に話しかけられれば「にゃ」くらい返答する。

しかし、チビのセリフは通常の猫語を上回る長いセリフだったらしい。

 

ううむ。

私は面食らった。

人間と生活したことのないチビが、それほどまでに長く話せる?ってのに驚いた。

それ以上に、チビのセリフを再現しようとする家人にも戸惑いを隠せなかった。

 

「こんな風にしゃべってたよ。にゃあにゃあにゃんにゃご…」(←迫真の演技)

 

あのなあ。

私が猫語を理解できると思っとんのか。

 

「かなり再現度、高いんだけどな」

ああ、そうですかい。

 

私の観察によれば、猫が人間に対して声を発する時というのはたいてい決まっている。

甘えるときとか飼い主の気を引きたいときとか、そんな時だ。

 

なので、チビが縁側に来た時のセリフは「何か食べる物をくれ」に違いない。

しかし、そのあとのセリフは意味不明だ。

だってもうおなか一杯になっていて、人間は用済みなはずだ。

 

なぜエサをもらった後で、チビはにゃごにゃご言っていたんだろう?

タツでさえ、エサをもらった時は「にゃごっ」(ごちそうさん)くらいだったのだが。

分からん…。

 

その日からしばらく経って。

また、チビが我が家にやってきた。(らしい)。

 

その日も、私が不在の時に来たのだ。

そして縁側でにゃあにゃあ鳴き、慌てて室内から出てきた家人からエサをせしめた。

 

「そのあと、チビはNさんちへ行ったんだよ。」

(Nさんは我が家の隣人)

 

家人の報告は続いた。

食事を終えたチビは、ゆうゆうとNさん宅庭へ移動したという。

家人はつっかけを履いて、縁側からドタバタとチビの後を追いかけていった。(捕まえようとしたらしい)

 

「Nさんちの縁側でさ、チビは何をやったと思う?」

 

うーん、大体想像つくけどね。

 

「その通り!Nさん宅で『にゃあにゃあ…』と大声でエサを要求し始めたんだよ!」

 

縁側で「エサをくれえ」と訴えられたNさん。

たまたま在宅だったらしい。

慌てて室内から出てきて、縁側に座るチビを発見した。

まあ、自分ちの縁側でにゃーにゃー大声を出されたら、近所の目もあるし、そりゃ恥ずかしいわな。

 

「ああそうか、そうか、お腹が空いたんだね」

 

猫好きのNさんは急いでキャットフードを持って縁側へ。

こうして、チビは夕食に二度ありつくことに成功した。

 

「エサ、くれえ~!!」

「エサ~!」

「エサ~!」

 

と大声でわめけば、アホな人間ども(猫好き限定だが)が慌てて食事を献上してくれることに味を占めたらしい。

やるのう。

 

Nさんはすでに3匹の猫を飼っていて、チビにエサを与える義務はない。

第4の猫にキャットフードを巻き上げられたNさん、気の毒というほかない。

 

タツは明らかに、人間にかつて飼われていた捨て猫だった。

それでも、誰かの家に来て「エサよこせ~!!」とばかりに、にゃあにゃあ要求することはなかった。

そこは品のある猫だったのだ。

 

チビは、どうやらそういう芸当が出来るらしい。

一度も人間に飼われたことが無いくせに学習能力が高いというか、大したもんだよ…。

 

図々しいと言えば図々しい。

でも、私は弱々しい生き物より、多少図太い方が好きだ。

そうでなければ野良猫は生きてはいけない。

 

野良猫のチビ。

もし我が家の飼い猫になると自由を奪われることになる。

自由は死守しておいて、エサだけ人間から奪う。

なかなか賢いと言わざるを得ない。

 

いや、チビだって「飼い猫になりたいアピール」をしていたこともあった。

我が家(特に私)は、今でもチビを引き取る気満々である。

ホント、チビを飼えたらいいなあ…。

 

我が家の家人とNさんを振り回すチビ。

チビの賢さを見ていると、猫にしておくのはもったいない気もする。(じゃあ何にするんだ)。

 

まあ、アホな猫より頭のいい猫の方が飼い甲斐があるというものだ。

でもこの分では、人間がチビにエサだけカツアゲされる日々が続くこと必至である。

 

このままでは手なずけるどころではなく、チビに翻弄されているだけだ。

なんとかしてチビの裏をかかないと、エサを取られるだけ。

家猫にする機会は永遠に来ないような気がする。

エサだけ取られる人間も不甲斐ないと言えば不甲斐ないんだが…。

 

よく、地方に住んでいる人が嘆く話を聞く。

野生動物や野鳥に野菜を食べられないよう、網とか柵とかあれこれ対策を打っても次々に裏をかいてくる。

そんな内容だ。

 

やはり野生動物は生存のために頭を使っているわけだ。

野良猫もおなじだ。

人間みたいに、スーパーやコンビニへ行けばとりあえずエサにありつけるのとはわけが違う。

 

というわけで。

弱冠生後2年そこそこで、チビは生存のために人間をアゴでこき使うことを覚えた。

我々猫好き人間たちはいいカモ、というわけだ。

悔しい気もする。

しかし、子猫だったチビを知っているこちらとしては、『よくぞ成長したなあ』という感慨が無くもない。

 

早く我が家の飼い猫にして、チビ語を理解できるようになりたいものだ。

まあ、人間に飼われても『猫が上、人間が下』という上下関係は変わらないのだろうけど。