ついに、長年読まずに済ませていた「菜根譚」を読んだ。
中国の古典である。
いつから気になっていたかというと、高校生のころからである。
読まなきゃと思いつつ、常に忘れていたのである。
つまり、読みたいと言ってもその程度だった。
最近、図書館へ行くようになった。
所在なく本棚の間をウロウロし、面白そうな本を見つけては借りている。
そして発見したのだ、菜根譚を。
菜根譚。(さいこんたん)。
私がこの書籍のタイトルを知ったのは姉経由だ。
姉と私が高校生だった時、姉の国語の先生がおススメしていた本だった。
菜根譚ねえ。
実は、この年齢になるまで料理の本だと思い込んでいた。
日本でいえば豊臣秀吉の時代に書かれた、中華料理の指南本だと勝手に思っていた。
高校時代に、菜根譚ではない別の本を確か岩波で読んだ。
中国の料理法についての内容だった記憶がある(定かではない)。
卵をゆでると固くなる。
しかし、さらに加熱し続けると柔らかくなる…とか何とか、そんなことくらいしか記憶にない。
あ~どうでもいい内容しか覚えてねえな!!
そんなこともあり、「どうせ菜根譚も似たような本だろう」
と思い込んでいた。
だから、わざわざまた別の中華料理本を読む気がしなかったのである。
高校を卒業して早◎◎年。
また、私の前に立ち上がってきたのである、菜根譚が。
図書館でその書名を見た時、「もしやこれは例の」と記憶がよみがえり、手に取った。
パラパラとめくってみると、中華料理本ではなかった。
いわゆる「人生指南本」である。
「人間とはかくあるべき」「こんなことに気をつけましょう」ってヤツだ。
菜っぱと根っこの話じゃないわけだ。
なぜ「菜根譚」という題名か。
菜根譚の譚は「談」という意味らしい。
菜根とは、野菜や根っこのことだという。
菜根を食べ(つまり粗食に耐え)、切磋琢磨しろよん、ってなことらしい。
図書館には、なんと数種類の「菜根譚」があった。
(解説付きが多いってことは、原本は難しいんでしょうね)。
分かりやすくイラストが付いているタイプ。
原文(中国語)の読み下し文が付いているタイプ。
そんな中で、割と読みやすそうな新釈版にした。(「精選 新釈 菜根譚」PHP研究所)。
選んだ理由は、「人生はくよくよしないほうがいい」と表紙に書いてあったからである。(←単純)
解説によれば、菜根譚は20代で読んでもあまりピンとこないらしい。
30代になってから読むと、理解できるようになってくるらしい。
うん、確かにそうだ。
読了してそう思った。
「そうそう、私も人生でこういう結論に達したわよ」って思うことが多かった。
やはり人生指南本はある程度の人生経験を積んできた人には読みやすいのかもしれん。
そういう意味では、社会に出る前の10代、または社会人生活を開始して間もない20代のうちに読んでおけばよかったかな、という気がしないでもない。
タイミングを逸した。
やはり高校の先生が勧めている時期に読んだ方が良かったわけだ。
菜根譚には人生についての戒めもあるが、仕事をする上での心構え的な言及もある。
例えば、「功名を無理に求める必要はない。(平凡でも)大過なく過ごす人生は素晴らしい」。
なんてのも、今となっては結構私の身に沁みる。
何年か前のこと。
職場では「業務軽量化しろ」と上司たちがしつこく言っていた。
分からんでもない。
仕事というものは、増やそうと思えばどんどん増えてしまうものだしね。
私は一応管理職(下の方だが…)なので、自分の部署での業務軽量化に取り組んだ。
そしてある日、人事のヒアリングがあった。
そこで聞かれたのが、「業務軽量化についてどこまで取り組んだか」である。
そこで、私は答えた。
「私の部署では◎◎をやった、無駄削減のため××に取り組んでみた、そして業務の軽量化が進んだ。」
すると、面接者(私の直属の上司ではなく、人事担当の役職者ね)が私に尋ねた。
「じゃあ、業務軽量化をして浮いた時間はどうするんですか?」
んなもん、決まっとるだろう(←エラそう)。
私は自分の信念に従い、笑顔で答えた。
「業務が早く終了したら、部下を早く帰宅させたいです。無駄な残業を減らして部下を休ませたいので」
すると、私の返答を聞いた面接者の顔がこわばった。
(あれ?間違った回答しましたかね?)
と思っていると、案の定、面接者は苦々しい口調で言った。
「浮いた時間で、ほかの仕事が出来るでしょ?」
私「…。」
(そういう回答を期待していたのか)
部下を休ませて何が悪いのだ。
ちゃんと終業時間まで仕事したのだから、帰宅させて何が問題なんだ。
とその時私は思った。
(反論はしなかったけど、反抗的な態度が顔に出ていたかも)
当然?私は昇進しなかった(笑)。
ま、そんなことが今日までにたくさんあった。
以前は「仕事を頑張り、会社から評価されたい」と思っていた。
でも、どうも会社的考え方と自分の考え方は合わないことに気づいた。
「女のくせに」なんて、年がら年中言われてきた。
そんなことが長年続き、遅まきながら、出世競争とかそんなものから降りることにした。
どうでもいいおじさんたちからの評価なんてどうでもいいや、と思うようになった。
きちんと仕事をして自分の生活が回れば、それだけで十分だと考えるに至ったのだ。
そういう「競争から降りた」状態になってから読む菜根譚。
うーむ。
まだやる気満々だった時に読めば良かったのかな。
各種の諫言や金言を読むと、反省させられたり鼓舞されたりするんですけどね。
しかし、昔も今も人間は変わらないらしい。
「民衆を愛さない官吏は税金泥棒だ」なんて面白いのもあった。
(昔の中国にもそういう公務員がいたんだな)
そんな中、「誠実さが最も人間に必要」ってのは、激しく同意します。
有名大卒とかすごい会社でキャリアを積んだとか、イケメンとか美女とか。
そんなものは、働いていると案外些末なことだ。
どれだけ高学歴であっても、「誠実でない」というだけでその人のすべてが台無しだ。
「誠実である」ということは、人に信頼されるってことですよね。
人間関係において信頼されない人は、どうしようもない。
多種多様な金言があるが、特に社会人にとって必要なこと。
それは「誠実であること」、やっぱりこれに尽きる。
なので、ここは菜根譚の言う通り、「誠実であること」を肝に銘じて人生を過ごそうと思う。
と、ここまで書くと読者の方の反応は2つに分かれるかもしれない。
10代、20代の方は、「菜根譚は今から読んでも役に立つかも」と思うかも。
30代以上の人は、「もうある程度の社会経験を積んだから、読まなくてもいいかな」と。
いや、菜根譚はどんな年齢の人でも楽しめると思います。
「人の値打ちは後半生で決まる」なんて言われたら、今からでも?頑張ろうと思いませんか?
「早熟は晩成に及ばない」なんて、スロースターターの私なぞめっちゃ鼓舞されます。
「功績や学歴が無くても立派な人生を送れる」うん、そう思いたい。
「古い友人を大切にしなさい」そうか、新しい友人を増やすのもいいけど、古い友達も大事だよな。
などなど。
手元に置いておいて、たまにパッと開いてそのページを読む、なんて使い方もいいかも。
オリジナルの菜根譚は読むのが難しそうですが、これは「精選」で「新釈」なのであっという間に読めちゃいます。
というわけで、結論。
菜根譚自体は良い本だ。
何歳になっても学びのある本ではあるが、個人的おススメとしては、できれば若いうちに。
というわけで、本には読むタイミングというものがある。
と改めて思った菜根譚でした。
ところで、菜根譚を図書館から借りた際、つい「世界の朝ごはん おいしいレシピ集」も借りてしまった。
香港と台湾のおかゆがおいしそうだったからだ。
「菜根譚=中華料理」、違いますからね!違いますよ!
一番「菜っ葉と根菜」に引きずられているの、自分じゃん。
「世界の朝ごはん」本については、また別の機会に記事を書こうと思います。