大作家である。
知らない人はいないだろう。
彼の多くの作品が映画化されているし。
スティーブン・キングの小説をもとにした映画なら、私も見たことがある。
でも、小説そのものは読んだことが無かった。
キング作品と私の出会いは、私のアメリカ留学時代にさかのぼる。
アメリカ人の同級生が、スティーブン・キングのファンだったのだ。
「面白いから読んでみて!」
と彼女からほぼ無理やり?キングの小説を押し付けられた。
ファンは、推しの作家の小説本を「頼みもしないのに」貸してくれることが多い。
「ね、面白いでしょ?」と、沼に引き込むもくろみなんだろう。
日本でもアメリカでも同じですね。
で、肝心のスティーブン・キング作品だ。
何の小説を借りたか忘れてしまった。
当然だが英語なので、2ページ目くらいで挫折。
当時の私は、英文を読むのがめちゃくちゃ遅かった。
大学の授業で出された宿題や教科書を読むのすら、辞書を引きながら四苦八苦。
英語で書かれた小説なんて、読む暇があるわけない。
しかし、そんな中。
大学で知り合った、とある先輩学生A君(アメリカ人)と話していた時。
趣味を聞かれ、適当に「本好き」と答えた。
するとA君は喜んだ。
自分も読書が大好きなのだという。
「最近、何かの本を読んだ?」
と聞かれた。
「ま、まあ、うん。」
私はあいまいに答えた。
すると、「同じ趣味の仲間同士」話が出来ると勘違いしたらしく、A君は身を乗り出してきた。
「ホント?どの作家の本を読んだの?」
私は苦し紛れに答えた。
「その…えっと、友達から借りたスティーブン・キングの…。」
(2ページしか読んでいないが…)。
ところが、彼はスティーブン・キングの大ファンだったのである。
「ええっ?スティーブン・キング?」
「ホント?わあ、日本人もキングを読むんだ!!」
「僕はたいていのキングの小説は読破してるんだ!」
「何の本?」
「どんな感想を持った?」
矢継ぎ早に聞かれて私は返答に窮した。
「その…えっと…まだ読み始めたばかりで」
彼が急速にしぼんでいくのが分かった。
ごめんよ…留学生にとっては、英語の授業について行くのだって必死なんだからさ。
英語の小説を読む、精神的余裕も時間的ゆとりもないんだよ。
くそお。
A君がスティーブン・キングのファンでなければ、適当に「面白かったよ」なんてごまかそうと思ったのだが。
うまく行かないものだ。
そんな苦い?思い出があったので、キング作品から足が遠のいていたのである。
でも、映画は結構見ましたよ。
「スタンド・バイ・ミー」とか「ショーシャンクの空に」とか。
ホラー系は苦手なんですけど。
そして年月が経った。
映画化された作品のラインナップを見て分かった。
スティーブン・キング作品は2種類に分かれるわけだ。
ホラー系とヒューマンドラマ系。
前者はあいにく得意ではない。
しかし、後者のジャンルの小説なら読みたいとずっと思っていた。
一冊くらいは読みたいなあと思っていたところ、図書館で発見した「グリーンマイル」。
これがぺらっぺらの薄さの文庫本であったのである。(注:新潮文庫です)
速攻、借りる。
なんだか最近、「リベンジ読書」が多いなあ。
読み終えて分かった。
これはシリーズものだ。
つまり、次の本を借りないと、何の話やら全く分からんのである。
一話完結かと期待していたら、違っていた。(借りる前に確認しろよ…)
小説の後の解説を読むと、「グリーンマイル 1」には多くの伏線が張られているという。
これら伏線が「2」以降で次々に回収されるんだそうだ。
く~っ!
やっぱり、「2」以降を読まにゃあいかんではないか!
「薄いぞ!」と喜んではいけなかったのだ。
というわけで、「1」だけ読んでも何の感想も書けないのだが、こうやって記事を書いている。
じゃあ何が面白かったのかというと、小説の前書きだ。
キングは饒舌な小説家のイメージがある。
前書きで、「なぜこのようなシリーズ形式になったか」の顛末を説明してくれている。
「饒舌作家」の期待にたがわず、そこだけ読んでも楽しめるのだ。
こんな場面もある。
キング氏が12歳の時。
お母様がアガサ・クリスティのミステリー小説を読んでいるところを目撃した。
私も小学生の時はハマったぞ、クリスティ。
で、彼のお母様。
まだ最初の50ページくらいしか読んでいないのに、小説の結末を知るために最後の部分だけ先に読んでいたという。
読みかけのところに、しおり代わりに指を挟みこんで。
うん、私もよくやるよ、これ。
ミステリーでは、最初に事件が起きる。
怪しい登場人物が次々に現れ、第二の殺人が起き、探偵が登場。
自分も推理しながら読むが、読み進める前に結末が気になる。
…ってのは、日本人であれアメリカ人であれ同じようだ。
「たまに誘惑に抵抗できなくなるのよ」
とは、ミステリーの結末を先に読んでいたところを息子に見つかった、キング氏のお母様の弁。
私なんて、たまにどころかいつも誘惑に負けている。
そしてこの「グリーンマイル」だ。
読者は「2」以降を読まないと小説の全体像すら分からない。
つまり、「1」を読んだだけでは消化不良だ。
スティーブン・キングのお母様や私のように「先を知りたい」読者にとっては、もどかしさが残る。
この、「次を読みたくなる感じ」はさすがスティーブン・キングだ。
しかし、一冊ずつ借りるとまた「先を知りたい」と、消化不良になること間違いない。
うーん、最後まで読み通したい。
残る全巻いっぺんに借りないと気が済まないなあ。
あ~頼むから全巻まとめて分厚い一冊にしてくれ!
「百年の孤独」も「吉里吉里人」も本は分厚いが、面白かったからあっさり読めたぞ!
それとも、今後はキング氏の作品で分厚い一冊本を借りようかな。
それなら確実に「一冊一話完結」だろうし。
やっぱり最初からそうしておけばよかったのだ。
薄い本狙いはいかん。(すいません)
まあ、なんとなく予想がつく。
私もスティーブン・キングのファンになりそうなことが。
話が面白いからこれだけ映画化されるんですよね。
どうでもいいが、長年の私の夢。
『自分一人が住む自分の家を建て、朝から晩まで誰にも邪魔されずに本を読む』。
早朝に誰かがわさわさ起きて、自分の安眠を邪魔されることもない。
誰かの食事の支度をする必要もないし、24時間自分の好きなように時間を使える。
夢のまた夢だが、妄想するだけで楽しい。
そんな夢のような?環境になったら、そりゃ家にこもって本を読みまっせ。
シリーズ本も山積みにし、お菓子を食べながら、好きなだけ読むのだ。
夢はなかなか実現されないまま、何年も過ぎている。
狭い家に置き切れないので、定期的に本を処分(しかしまた買ってしまう)。
あ~好き放題本が読める身分になりたいものだ。
とは思うものの、たぶん今生にはそんなチャンスが巡ってきそうにもない。
生まれ変わったらの楽しみにとっておこう、と思っている。
あ、でも次回生まれ変わったら「お金持ちのマダムの飼い猫」になるという夢もあるんだった。
読書三昧か、猫になって終日ゴロゴロするか。
どちらの夢も捨てがたい。