オレンジの花と水

ブログ初心者の日記風よみもの

別れ

 

職場の部署内で、ちょっと前に席替えがあった。

担当者を変えたり業務内容が変わったりしたので、大幅に席が入れ替わった。

私は真ん中らへんから端の机に移動になった(それはウェルカム)。

 

端っこっていいですよね。

私物(カバンとかね)がはみ出ていても、まあ許容されるし(と思っているのは自分だけ?)。

やはり端っこは自由で気楽でいい…。

 

今までは前後左右に誰かがいたのだが、端に座ると風景は違う。

前の人か、右隣の人しか話す相手がいなくなった。(斜め前は誰も座ってないのです)

 

私の前に座るFさんは、私と業務が重なっているのでよく話をする。

でも、隣のTさんは別の仕事を担当。

いきおい、Tさんと話をする頻度が少なかった。

 

席替えして日が経つと、私もだんだんTさんに慣れてきた。

 

Tさんは、職場の電話が鳴るとすぐに取る(←偉い)。

私なんか、可能な限り電話に出たくないっちゅうのに。

なので、Tさんが電話対応している声をよく聞いていた。

 

Tさんは、どんな無茶ぶりの電話でも落ち着いている。

私なぞ単純なので、内心の声が顔や態度、声にすぐ出てしまう。

 

早く電話を切り上げたい…と思うあまり、早口になってしまい、

「もっとゆっくり話してもらえますか?」

と言われたことも何度もある。

 

電話であいづちを打つのも要注意だ。

「はい!」と「ええ!」が一緒になってしまい、

「へえ!」

と寿司屋みたいな返事になることもある。

 

とにかく電話が苦手なのだ。

苦手だと思うからますます嫌になるのか…。

 

この点、私より年上(と思われる)Tさんは、常にテンポを崩さない。

つまり、相手に飲み込まれないのだ。

私が一生かかっても会得出来ない技だ。

 

彼女が電話対応、または他の同僚と業務の話をしている時、隣の私には話の内容がだいたい聞こえる。

高飛車な上司とか、お局様の毒舌とかに負けず、淡々と対応しているTさん。

Tさんの平常心っぷりに、私は常々感心していた。

業務で接点がないのだけれど、Tさんすごいなあ、と思っていたのだ。

 

そんなある日。

 

私が業務で困ったことがあり、前に座るFさんに相談していた。

Fさんも分からず困っていたら、意外なところから声がかかった。

Tさんである。

 

「それ、〇〇をすればいいんですよ。」

 

へっ?

 

思いがけなくTさんが助け舟を出してくれた。

Fさんと私の会話を聞いていたのである。

そして、その日はなぜかTさんは業務がヒマだったらしい。

 

「え、どうすればいいんですか?」

と私が尋ねると、Tさんはニコニコしながら丁寧に教えてくれた。

なんていい人なんだ、Tさん…。

 

その日は業務で困ったことが頻発し、そのたびにTさんが横から助けてくれた。

Tさんが教えてくれたおかげで、時間を無駄にせずサクサク仕事を進めることが出来たのだ。

ありがたい…。

 

「助かります!ありがとうございます。

分からないことが多くて困ってたんですよ。

すみません、お仕事邪魔して」

 

と私が言うと、Tさんは笑った。

 

「大丈夫大丈夫!

今日はヒマだから、何かやってないと眠くなっちゃうもん。」

 

私はお返しのつもりで、のどあめをTさんへあげた。

Tさんは仕事をしながら、私のあげたのどあめをほおばっている様子だった。

 

そして。

業務時間終了前くらいに、Tさんが私にクッキーをくれた。

さっきののどあめのお返しかな?

悪いですねえ…。

 

と思っていたら、Tさんがニコニコしながら言った。

 

「私、今日でこの職場を退職するの。

今までありがとうね。」

 

な、なんですって?

 

驚く私にTさんは、来月から別の職場で働くことや、次回は事業部ではなく総務部に配属されることなどを話した。

今日が最終日だったので、業務をあらかた片づけ終わっていたのだ。

 

なんてこった…。

今日はTさんと話をすることが多く(助けてもらったからね)、すっかり話しやすくなった。

これからTさんと仲良くなれると思っていたのに。

く~。

仲良くなった日に別れが来るとは。

 

名残惜しく、私はTさんに今までのことを伝えた。

Tさんの電話対応の声にいやされていたこと。

落ち着いて人と接するTさんに感心していたこと。

隣に座っている人がTさんでよかったと思っていたこと。

 

Tさんは、それを聞いて大きな口を開けて笑った。

 

「そんな、大したことないよ~。」

 

いやいや、大したことあるんですよ。

 

最初、席替え直後は私も思っていた。

Tさんは、誰に対しても丁寧過ぎる。

気が弱いのかしら?

 

隣でTさんが電話、または同僚や上司と交わす会話を聞きながら、

「押されるな押し返せ!」

と思ったり、

「言い切っちゃえ、相手は無理を承知でゴネてるんだから!」

と思ったりしたこともあった。

 

しかし、Tさんは粘り強く淡々としている。

激高している相手でも、柳に風で受け流す強さ。

案外こういう人の方が強いんではないだろうか。

 

と、最初の認識を改め、だんだんとTさんの長所が分かりかけてきた頃だったのだ。

次の職場では総務、と聞いて納得。
Tさんなら向いている、と思う。

 

それにしても、自分のスタートの遅さを呪う。

席替えしたら、すぐに仲良くなっておけばよかった。

担当業務が違うなんて、関係なかったのだ。

後悔しても遅いのだ。

 

今までの人生で、こういうことはたくさんあったはずだ。

せっかく仲良くなった、と思った瞬間に別れが来る、というパターンがね。

なので、ぐずぐず迷っていてはいけないのだ。

 

とはいえ、気が弱い私(←気が弱いのは自分じゃん)は、どうにも人と仲良くなるのが苦手らしい。

人と仲良くなるのに時間がかかってしまうのだ。

で、気づいた時にはオレ一人…ってパターン。

もう、何十回もやってきて後悔してるのに、またやっちまったよ!!

 

で、帰り際。

Tさんと帰る方向が同じ(つまり利用駅が同じ)はずだったので、途中まで一緒に帰ろうと思った。

すると、歩き始めたTさんが言った。

 

「じゃ、私はここで。」

 

そして、すっとコンビニの喫煙スペースに消えていった。

なーるーほーど…。

 

私は喫煙スペースに消えたTさんを見て、納得した。

ここで一人の時間を持って、自分を取り戻すんですね。

小柄でニコニコして気が弱そうだ、と思ったTさんだが、やはり強い女性なんだろう。

たぶん、次の職場でもマイペースで他人にのまれず、淡々と仕事をするだろう。

 

そういう人に出会った、ということだけで十分なのかな。

私もTさんのように、どこへ行っても落ち着いて淡々と仕事が出来るようになればいいのかな。

なんて思った一日でした。

 

とにかく、このたび反省し、再度自分の肝に銘じた。

「仲良くしたい」と思ったら、速攻行動に移せ!と。

こうやってグズグズしていたがゆえに、様々なチャンスを長年逃していたわけですからね。

(←でもどうせまた気おくれしちゃうんだろうけどな)