俳句教室に入った。
深い意味は無い。
「すぐに役立つわけではない」習い事を始めよう、と思ったからである。
私は、ヒマさえあれば勉強するのが好きだ(こう書くと誤解されそうだが)。
今までは、英語とかフランス語とか何かの資格試験とか、仕事に役立ちそうなことばかり勉強してきた。
が。
「すぐに役立たないこと」を久々にやってみたくなった。
こういう気持ちになるってことは、人間は「役立つこと」だけでは精神がもたないってことだな。
以前はドラム教室へ行っていた。
なんと、6年間も。
通っている6年もの間、まったくドラムは上達しなかった(練習してなかったからだが…)。
でもね、楽しくなければ6年も続かないですよ。
ドラムを叩いている間は無心になれるし、1曲叩けると爽快でしたよ!
なので、今回も習い事は楽器がいいかな?
と思った。
我が家にはピアノがあるし、チェロなんかも楽しそうだ。
が、チェロ教室が自宅近くに無かったので断念。
ピアノは習いたいなあ~といまだに思っている。
そして、俳句。
なぜ俳句かというと、それが自分の都合の良い時間に受講でき、かつ授業料が安価だったからである。
日本画。
習いたかったが、平日しか授業が無い。
占い。
これもなぜか平日しか開講していない。
香道。
そもそも習える教室が近隣に見当たらない。
こんな感じで、ネットで自宅近隣の「習い事」「●●教室」を探していったのだ。
「時間の都合がいいレッスンがある!」
と思ったらフランス語教室だったり英会話教室だったり。
「いやいや、今回は『すぐにお金につながらないこと』をやるのだ」
と思い直し、サーチする幅を広げて俳句教室につきあたった、というわけ。
そして、先日。
俳句教室へ申し込みに行った。
そもそも、俳句教室ってちょっと敷居が高そう。
私みたいな、「ど素人」でも入ることが出来る教室が良い。
そして、まずは俳句の鑑賞法を教えてもらえるといいのだが。
そんな希望があった。
俳句教室に行き、受講希望だと伝える。
すると、受付の女性は大歓迎オーラを出しながら言った。
「午前の授業は超初心者向けですよ!俳句のイロハから教えてもらえます!
午後の授業もありますよ。」
私としては、午後の方が都合が良い。
でも午後のレッスンは中級者向けになっている。
うう…どうしよう。
私は、受付女性の名札に「T橋」と書いてあるのを見ながら尋ねた。
「俳句経験者じゃないんですが…。」
するとT橋さんは笑顔になった。
「では、お試しで初級クラスに参加してみて、それから考えたらいかがですか?」
そうしようかな。
経験者じゃないなら、初級から入るしかないよね。
さらに気になることがある。
それは、受講者のレベルだ。
ホンマに「初級」?
しかし、同級生たちは「お母さんがペルー人」とか「高校でスペイン語を履修」とか、そんな人たちばかり。
「初級者」の私は初級の授業についていけなくなった、という経験がある。
「大丈夫ですよ!受講者は皆さん初心者ばかりですから!」
盛大にT橋さんが言う。
あ、そうなんだ。
ちょっとホッとする。
しかし、T橋さんが重ねて言った言葉に、私はちょっと気おくれを覚えた。
「受講者は、ほとんどが60代、70代ですよ!」
うわっ!!!
マジかい?
そんな高齢者にまじって、私は大丈夫だろうか??
ま、そりゃ俳句なんて渋い趣味、やっている同年代はいないと思うが…。
私、浮きまくり、じゃないですか?
そう私が言うと、T橋さんは苦笑した。
「大丈夫ですよ。先生も面白いし…」
うーん。
もし60、70代からいじめられるような雰囲気だったら?速攻やめればいいか…。
私が躊躇していると、T橋さんは大丈夫大丈夫、と続けた。
拝見した限りでは、T橋さんはたぶん60代。
私の不安は分からんだろうなあ…。
それにしても、受講者の年齢が高すぎる。
最近は、若者には短歌が人気あるらしいしね。
俳句は難しすぎるんだよ。
まあ、ぐずぐずしても仕方ない。
「受講者が増えそうだ」と、期待に胸をふくらませるT橋さんを喜ばせるように、私は俳句教室に申し込むことにした。
まずはお試しだ。
すると。
T橋さんは、私の名前を受講者名簿に記入しながら言った。
「じゃあ、先生に次回のお題を聞いてご連絡差し上げますね。」
へっ?
次回のお題?
私は何となく「最初は俳句の基本や鑑賞法を勉強するのだ」と思い込んでいた。
そうなのだ。
俳句教室では、自分で俳句を作らにゃいかんのだ。
当然だが、その場で作句するのではない(そんな高度な技が出来るなら初心者じゃないよね)。
宿題よろしく自宅で作り、それを教室へ持参するわけだ。
そうだよね…。
いや、待てよ。
他人の前で自作の俳句披露なんて、こっぱずかしくてできません。
こっちは素人ですよ、素人。
そう思っている私をよそに、T橋さんはニコニコしながら俳句の先生に電話をかけ始めた。
「先生!いつもお世話になっております。
新しい生徒さんが次回からお試し参加されるんですけどね。
…」
(私の内心の声)
「うわーうわー恥ずかしい~最初から俳句を作れるわけないじゃん」
T橋さんはにこやかに話を進めている。
「あ、そうですか!では、歳時記は持っていなければ不要なわけで?
はい、わかりました!
次回のお題は「●●」ですね?」
そして、俳句講師と話し終わり、受話器を置くとにこやかに私を見た。
「次回のお題は●●ですって。
でも、見学の方は俳句を作ってこなくてもいいですよ。
もしできれば、4句作ってきてほしいんですけどね。」
4句ねえ。
出来るわけがない。
一応、「そーですか」とニコニコしながら話を聞く。
T橋さんは続ける。
「では、×日に来ていただいたら、教室へご案内しますね。
出来れば4句作って来ていただけるといいんですが、無理ならいいんですよ!
他の方は4句作ってくるんですけどね!
ですから、出来れば、でいいので、次回来る時までに4句」
…分かりました。
4句ですね。
T橋さんは、「出来なかったらやらなくてもいい」と言い続けているのだが、「4句作らねばならない」ことは、しっかり私の頭に刷り込まれた。
さすがT橋さんである。(←もう屈服した)
こういう人が職場にいたら、面倒な上司たちをニコニコしながら仕切ってくれるだろうなあ。
というわけで。
今、私の頭を悩ませているのは4句作ること、である。
どうやって作句するのか、そもそも分からない。
なので、今のところはノートを広げ、お題を書き、そこから連想されるイメージをただ書いているだけ。
あ~自己表現活動とは簡単ではない、ってのがうすうす分かってきたぞ。
誰かに助けを求めたい。
週末に図書館へ行き、作句指南本を借りてこようと思っている。
授業はまだ何週間か先なのだが、受講者は誰もが私のように生みの苦しみを味わっているんだろうな。
とにかく、自分の力で作品を作ってみるしかない。
自分自身で作句しなかったら、何のための俳句教室だ?ってことですよね。
まだ先ですが、教室へ行ったら感想をまた記事にしてみますね。
頑張るぞ。